先日の記事の続きです。
慶應附属中学の女子偏差値下落の要因は?
今日は慶應の附属校の女子偏差値が下がったことの要因について考えてみたいと思います。まあ今年下がったといっても1つだけなのですが、この傾向がある程度続くかもしれない、という話です。
女子の慶應ブランドの強さ
慶應中等部は私の中学受験時代の昔から女子の最難関に君臨していました。当時から桜蔭等の女子御三家より偏差値は高かったです。また、息子の中学受験を見るようになって、女子の偏差値表をみても、やはり慶應中等部の女子は偏差値64で最難関でした。それからずっと64をキープしていたと思います。
このように首都圏の慶應ブランドは昔から非常に強く、私の中学受験時代から現在に至るまで、女子については現在も桜蔭を凌ぐ最難関です。
それがわずかといはいえ63に下がるというのは、なかなかのビッグニュースだと思うのです。
慶應の附属を選択することの意味
まずは慶應中等部の女子が最難関に君臨し続けていた要因を考えてみましょう。
慶應の附属校はどこもそうですが、中学入試を突破すれば、慶應大学にほぼ100%入学できる、というのは非常に魅力的です。当然のように人気を集めるのも納得です。
しかし、それは他の選択肢を半ば捨てることになります。機会費用というやつです。つまり、慶應の附属中学に進学するということは、東大や国公立医学部への進学という選択肢をほぼ捨てることになります。もちろん、慶應の附属にいっても、これらの大学へ進学することは不可能ではありません(実際に私の友人にもいます)。ただ、やはり環境の影響は大きいですし、慶應の附属に入学した時点で、98%くらいは他の大学への進学という選択肢を捨て、慶應大学入学を選択したことになると思います。
ちなみに慶應の附属から慶應大学医学部への進学枠はありますので、慶應の附属に行くこと=医者になれないではありません。しかし、ただでさえ優秀な子揃いの附属校の生徒の中で、トップクラスに入らなければ医学部への推薦はもらえないといいますし、やはり困難な道であることは間違いないでしょう。
男子の慶應中等部や慶應普通部の偏差値が男子御三家ほど高くないのは、一つにはこの機会費用が要因だと思います。慶應中等部や慶應普通部に合格できる実力があるのであれば、大学受験で東大や国公立医学部を目指すポテンシャルは十分にあります。例えば、サピックス偏差値で同等の海城や浅野などから毎年多くの東大合格者、国公立医学部合格者が出ていることからも明らかです。男子の場合、女子とは異なり東大・医学部を目指すことに後述するような社会的・文化的な制約はありませんから、純粋に6年後東大・医学部を目指したいか、あるいは各家庭が目指すことを促したいかで判断することができます。
女子の大学選択における社会的・文化的制約
しかし、女子の場合はそうではありません。少なくとも近年まではそうではなかったと思います。
私の中高生時代にはやや薄れつつありましたが、「女が東大行ってどうする」「医者になってどうする」みたいな考え方が昔から根強くありました。私が高校生時代ですら時代遅れな考え方だと個人的には思っていましたが、それでも塾などで知り合いになった超優秀な女子の中にも、十分東大合格圏にもかかわらず、東大は親に反対されているから受験しないとか、東大は「エリート『男子』がいくもの」というイメージだから受験しない、という子が複数いました。「東大行ったり医者になったら結婚できなくなるから止めなさい」と親に言われたなどという子もいましたし、本人が「わたしは専業主婦になって優しいママになれればいいから、東大いっても意味ない」なんていう子もいました。
1980年代、90年代においても、このようなセリフがトップクラスの進学校の多くの女子から出てくる世の中だったのです。これはいってみれば「社会的・文化的制約」ということができると思います。
私が高校生時代の東大の女子比率は不明ですが、2009年時点でもわずか18.2%という統計があるようで、それ以前はもっとずっと低かったものと思います。
優秀層女子の慶應人気
ではそのような東大や国公立医学部を敢えて目指さなかった、目指せなかった優秀な女子たちはどこに進学したか?首都圏であれば早慶ということになります。特に女子の場合、華やかなイメージのある慶應に進学した子が多かったです。
女が東大や医学部なんか行くな、という親であっても、慶應なら優秀かつ華やかな印象で、むしろ入学して欲しいと考える人が多かったでしょう。今でもそのような考え方の保護者は多くいるように思います。
そうすると、特に親の考え方として、娘がどんなに優秀でも東大や医学部なんかはハナから視野に入れていないとすれば、最も入学してほしい大学は慶應ということになります。そのような考え方からすれば、中学受験段階で慶應大学進学が確定できる慶應中等部は非常に魅力的ですし、桜蔭や他の難関中学などに入学させる理由も特にないわけです。これが慶應中等部が女子において中学受験最難関となる重要な理由だと思います。
女性の社会進出と東大の女子比率増加
しかし、このような考え方は変化しつつあるのではないでしょうか。共働きがスタンダードになり、女性がキャリアを構築していくのは当たり前の社会になりつつあります。まだ他の先進国に比べると遅れていますが、将来的により女性の社会進出が進むのは確実でしょう。
それとともに、女子が自らの将来のキャリアのために、東大や医学部への進学を志望する割合は増えているようですし、それに対する本人や保護者の抵抗感も薄れつつあるのではないでしょうか。
これを示唆するデータとしては、昨今の東大における女子比率の上昇があります。2009年から4%程度上昇し、2023年は22.3%になっているようです。
また、昨年の東大理科三類合格者数のトップを初めて桜蔭が奪取したことも象徴的です。女性が東大・医学部を目指すことへのハードルが下がっていることを指し示す一つの現れであるように思います。
昭和の遺物のような上記の考え方から脱却し、女子の東大・医学部志向は徐々に上昇しているのだと思います。
そうすると、中学受験段階で慶應大学進学がほぼ確定する慶應中等部よりも、桜蔭や渋幕・渋渋など進学校から東大や医学部を目指そうと考える女子やその家庭が増加してもおかしくありません。私は、これが慶應の附属校の偏差値下落の要因の一つだと考えています。
この傾向が今後も継続するかはわかりません。ただ、上記の昭和的考え方がなくなるのはとてもよいことです。
さいごに
なお、誤解のないように付言しますと、慶應大学が女子のキャリア構築のために不足しているといっているわけではありません。東大や医学部への進学という選択肢を、社会的・文化的要因で考えるまでもなく捨ててしまうことが問題なのです。
優秀な女子が無意味な制約を受けて東大・医学部志望にリミッターをかけないようにしてあげる雰囲気を、各家庭でもより醸成していくべきだと考えています。
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