呉 善花『「漢字廃止」で韓国に何が起きたか』をKindleで読みました。
著者の呉善花さんは、1956年韓国に生まれ、1983年に来日。日本で働く韓国人ホステスを題材とした『スカートの風』を出版しベストセラーとなりました。1988年に日本に帰化しています。『「日帝」だけで歴史は語れない』、『攘夷の韓国 開国の日本』、『韓国併合への道』など日韓問題に関する多数の著書があります。
解決の糸口すら見えない韓国と日本の問題の根本にある物は何かと考えた時韓国の教育や韓国人の考え方を熟知し日本の本当の姿や日本人の考え方も知っている彼女の著作はとても示唆に富んでいます。
本当の歴史を追究しても決して埋まることは無く、日本が謝罪しようが譲歩しようが少しも縮まらない日韓の溝。そこにあるなんとももどかしく複雑な澱のような物。
韓国は戦後漢字を廃止しました。著者はそのことにより語彙の恐ろしいまでの貧困化がもたらされ、その結果として韓国人から抽象的な思考をする能力が失われつつあると言います。今の韓国人は古い本はもちろん、雑誌や新聞も含め活字を読むこと自体が苦手になってしまっているようなのです。日本語で言えばすべてがかなで書かれているような物ですから複雑な意味はとりづらい。漢語由来の言葉は使いづらくなります。しかしそれを分かりやすく書こうとすると回りくどい表現にならざるを得なく返って分かりづらくなることになりそうです。
このことがますます日韓の複雑な関係を解決しづらい物にしていくような気がします。
以前この著者の『韓国併合への道』を読みました。これもとても良い本です。
今回読んだ『「漢字廃止」で韓国に何が起きたか』もなかなかの好著。
しかし日韓の関係のことをこれだけ真面目に考えている著者の入国を拒否する韓国政府の対応を考えると、日韓の関係が良くなることなど当分は期待しない方が良いような気さえしてしまいます。
何か、大きなきっかけはできない物なのでしょうか。
韓国の学校教育で漢字廃止・ハングル専用政策がとられるようになったのは、1968年春からである。漢字廃止政策以後の韓国では、教科書をはじめ、新聞・雑誌・書籍からレストランのメニューなどに至るまで、漢字はほとんどその姿を消してしまっている。韓国語は漢字を廃止したために、日常的にはあまり使われない、しかし概念や理念を表す言葉、各種の専門用語など、伝統的に漢語で表されてきた重要な言葉の多くが、一般には次第に使われなくなっていった。各種の評論・研究論文や新聞・雑誌の記事に、総じて書き言葉の世界に、語彙の恐ろしいまでの貧困化がもたらされたのである。とくに文学の面では、散文でも詩文でも、伝統的にあった豊かな漢字表現の大部分を失ってしまった。またぞろ「竹島問題」で気勢を上げる国の足もとに忍び寄る「文化崩壊」の危機に警鐘を鳴らすと同時に、本書の後半では、比較文化論として、韓国語の言い回し、ことわざを紹介。(Amazon 商品の説明 より)