”七草囃子と七草粥”

明日は1月7日、七草ですね。 2017年にはこんな記事をアップしました。

セルフ・リブログって気恥ずかしいですが、ご興味のある方はどうぞ御覧ください。

ここの記事で使った挿絵、七草囃子に用いられた浮世絵です。

今夜はこの話題を(^o^)

先程書いたとおり七草を迎えるときにはその前夜に「七草囃子」（七草叩き）を唱えながら、翌日の粥の具材七種をそれぞれ7回づつ、都合49回叩いて準備をするという風習です。

この七草囃子の文言には地域差があって、私が子供の頃に聞いたのはこんな歌でした。

〽七草ナズナ　唐土（とうど）の鳥が　日本の土地に届かぬ先に　トトトンパタリ　トンパタリ

私は東京の西の方、八王子の出身で父方の祖先は分かっている範囲では少なくとも幕末にはこの地に居を構えていたらしいです。

この七草囃子は父から聞いたものですから、多摩地域ではこんな歌い方だったのでしょうか。

2017年の記事でもこの歌の内容は取り上げたのですが、この挿絵の出典を見つけられましたので今日はそれで補記といたしましょう。

これは『五節供稚童講釈』という文献で、書かれた時代は天保三年（1832年）だそうです。

挿絵に書き込まれた文章は次のように書かれているとのこと。

［唐土の鳥のこと］

正月六日の夜、すりこぎ、包丁、切匙（せっかい）の類、食用の品七ツ集めて打ち囃す事。

上つ方より下々までする事なり。

打ち囃す言葉に「とうどの鳥と日ほんの鳥と、わたらぬさきに、といふ。とうどの鳥とは、唐土の鳥といふこと、日本の鳥とは、日本の土地といふ誤りなり。これをいかなる謂れと尋ぬるに、歳時記といふ書に、正月七日、鬼車鳥渡る。この鳥、人の魂を消し、血を滴らす。血の滴りたる家は禍ありとて、正月六日の夜、七日の暁にも、門口を叩きてこの鳥を驚かして、他所へやる、といふ。

この説をもて、昔より、唐土の鬼車鳥、日本の土地へ、渡るを避けん、と唱へしと、渡らぬ先にと、誤り唱え来たりなり。

「隣の七艸（ななくさ）で目が覚めたゆゑ、よんどころなく叩くのだ。叩いてよければ、おらが宿六の面を叩きてへ。

きのふから出て、まだ帰らねへ。いけ馬鹿々々しい。

「父（とと）うの鳥は日本の鼻毛、わからぬ奴だ。とゝ、／＼／＼とんよ。

青い文字は人物の上の位置に書かれた文章、紫の文字が手前に書かれた文章です。

それに凄いなぁって思うのはこの紫の文字の部分は登場人物である女性のボヤキが書かれていることです。

＞唐土の鳥が・・・

の一節を「父うの鳥は日本の鼻毛・・・・と替え歌にして、朝になっても怪しいところから帰らぬ亭主を腐しているところ。

なんと滑稽で洒落っ気があって、下品にならぬギリギリのところを攻める文章の上手さ。

かてて加えて、当時の民衆がこの文字を読めたのですから恐れ入ります。

江戸の大衆は、今とは違ったベクトルで教養知識が豊かだったのですね。

ちなみにこの文章を書いたのはあの山東京伝の弟、山東京山。で、絵を描いたのは歌川国芳ですから、これはもう当時の人気滑稽本であったことは容易に想像できます。