妄想のショート・ショートストーリー | 社会不適合オヤジⅡ

社会不適合オヤジⅡ

好奇心、いよいよ旺盛なもので・・・

東京では8月に入って雨がふらなかった日がありません。
つまり今日で20日連続雨という、驚異的な記録を更新しているんだそうです。

そこで雨男の私は思うんです。
もし強力な雨男って言うことが本当に確かな人物であれば、中東などの砂漠の多い国では政治的に有用な人物になれるのではないかって。
・・・・あ、SFというか妄想ですよ、念のため。

では書き下ろしで行きますね(^_^)/
で、一応SFですので文章は高校の頃からのファンだった星新一さん風でトライ!


題:雨男

N氏は窓の外に視線を落として再び大きく頷いた。

「やはりオレは強烈な雨男に違いない。昨日までは雨が全く降らず異常乾燥で作物の育成に困っていたこの地域でも、おれが来てから突然曇りだして僅か2時間後にはこんなに雨が降っているのだもの」

N氏は友人のR男から請われこの地へとやってきた。R男はN氏の大学時代からの友人で、この少雨で困窮していた山間地出身であった。

「ようN!やっぱりお前はすごいやつだ!!これで野菜も果物もちゃんと収穫できると思う。農協の理事長から電話があってぜひお礼をしたいと申し出があったよ」

R男はそういうとNに右手を差し出した。Nは握手をしながら自分の不幸な身の上を思い返していた。

『オレは大学時代から強烈な雨男のあだ名が付いて、みんなから嫌われていた。何しろ山へ行けば登山が中止になるほどの豪雨と雷、花火大会へ出かければ軒並み中止になるほどの雨男だったからな。次第に友人たちはオレを誘わなくなって、3年になってからは誰一人一緒に遊ぶこともなくなったよな』
『それでもこうやってオレが行くところ出かけるところ雨が降るということがSNSなどで拡散していく内に、こんなオレでも人さまの役に立つこともあるってこともわかってきた。これがオレの身に与えられた運命なのだろう。きっと神様がオレに与えてくれた能力なのだろう』

N氏は複雑な笑顔でR男の手を握り返した。


************1ヶ月後************

N氏はQ王国の日本大使館職員から指示されたホテルのロビーで一本の電話を待っていた。
彼の強烈な雨男の噂がひょんな事で中東のQ王国に伝わり、常に雨が少なく困っているその国の王からぜひ彼を招聘して雨を降らせて欲しいとの依頼が舞い込んだのだった。
N氏はロビーにあるソファに身を委ね、ガラス越しに見える車寄せを見るともなく眺めながら、これから自分の身に起こることを考えていた。
実は彼が居るホテルを中心に、周囲3kmには強い雨が降り続いていた事をN氏は知らなかった。

 

『なんということだ。Q王国の日本大使館から電話があった時は、いったい何が起こったのかと、それはもう驚いたなどという言葉じゃ表せないほどだったな。腰が抜けるというのはああいうことなのだろうな』

大使館職員から聞いた話ではN氏は国賓の扱いで、もし期待通り雨を降らせることに成功した暁にはQ王国の名誉市民として広大な敷地に御殿のような家をプレゼントされると同時に、Q王国の皇族並みの給与も与えられると言われているのである。
こんな夢の様な話が、ただ単に雨を降らせるという能力だけで獲得できるなんて本当に夢のような話だった。
と、その時彼の携帯電話が着信を知らせる。N氏は高鳴る胸の鼓動を抑えながら電話に出た。

「はい、Nです。えぇ、はい。わかりました。1301号室ですね。すぐに参ります」
どうやらQ王国の若き皇太子は、いまこのホテルの周りだけ雨が降っていることを確認し、これこそが彼の秘めた力のおかげであると確信できたようだった。
その後N氏は指定された部屋に到着し、そこがスペシャルスイート・ルームであることを知った。
最上階の13階ワンフロアーすべてを使った、信じられない程広い部屋であった。
ズラッと立ち並ぶ、頭にターバンを巻いたQ王国の皇族と大使館の職員たち。
そしてそこにはQ王国の皇太子も列席するという最上級の出迎えを受け、皆N氏を拍手で出迎えてくれた。
順番に握手をし、挨拶しそして通訳はN氏を正式なQ王国の国賓として迎えに来ていることの説明を公式文書で示した。
そこにはさきほど彼が聞いていた待遇がすべて記載されていた。
皇太子はN氏に万年筆を手渡し、確認のサインを求めた。当然のことながらこのような契約を断る理由はひとつもなく、N氏は手渡された純金の万年筆でサインをしたのだった。

***********1週間後***********

そしてそのサインをしてから1週間でN氏は急いでパスポートを取り、渡航する荷物をまとめ成田空港へやってきた。
何故か今日は全国的に天気が悪く、朝から日本全体が雨雲に覆われていた。
支度のための資金はQ王国側で用意され、彼が住む安アパートには不釣り合いな黒塗りのリムジンが迎えに来たのだった。
Q王国からは皇族専用機でN氏を迎えに来ており、N氏はボディガードに警護されながらそのジェット機に乗り込んだ。
窓の外はもちろん雨。出国する日が全国的に雨だなんてそれもまた一興かと、N氏は自分を受け入れてくれなかった日本を離れる事を多少喜んでいた。



N氏はQ王国の皇族専用ジェット機に乗り込み、シートベルトを締めて母国への別れを口にした。
キャビンにはバーカウンターが用意され、キャビンアテンダントはQ王国選りすぐりの美女たちが民族衣装でサーブしてくれていた。
やがて飛行機は日本から次第に離れ、これからのスケジュール等について代わる代わるに会話をしていたQ王国の担当者も皆席につき飲み物などを愉しむ時間へとなっていった。

そのときだった。次第に空は明るくなったというのに皇族専用機の中はエアコンディショナーが効いていないかのように湿気を感じるのだった。
やがてキャビンの天井から一雫の水滴が落ちてきたことに気がついた。
そう、それはN氏がこの航空機の中で雨を降らし始めてしまったのだった。

間髪を開けず、彼が聞き分けられないほどの大きな声がキャビンに響く。
もうキャビン内は豪雨の状態で、くるぶしまでその水位は上がり航空機の最大積載重量を超えるほどの水量にまで達していた。
上昇することなどすでに不可能であり、機体後部に設けられた3機のジェットエンジンのパワーを最大に上げても、飛行機はゆっくりと機首を下に向け太平洋へと真っ逆さまに墜落し始めていた。


***************了**************


どうでしたか?星新一風で、なんておこがましいですがね。
全く下書き無しで書いたので未消化なところがいっぱいあるでしょう~
こんな妄想も、20日連続の雨だということで引き出されました(笑)

雨男って滑稽だけどどこか悲哀を感じる響きでしょ?     また明日ね('-^*)/


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