雨男、後日譚 | 社会不適合オヤジⅡ

社会不適合オヤジⅡ

好奇心、いよいよ旺盛なもので・・・

残念ながら星新一賞へ応募した「雨男」は第三次予選にも残れませんでした。
まぁ元々狙っていたわけではないので(強がり!)それほどのがっかり感はありません(^o^;
でもショート・ショートにこだわりすぎて、途中で終わってしまったような感じもするとメッセージをいただきました。

それならば、後日譚行っちゃいましょうか~(^_^)/
書き下ろしでいきますので、そのあたりは大目に見てくださいね。
あ、「雨男」をお読みでない方はこちらを先にお読み下さいね。そうしないと話がつながりませんからね。
では!!

「続・雨男」

「おい航海長、今朝のブリーフィングじゃぁここ数日は波は穏やかだと言うことだったな」
船長のM氏は双眼鏡から目を外さず航海士のトップ、S氏にそう訪ねた。

「はい!天気図は安定していて、暫くは安泰な航行が予想されます」
S航海長はM氏の後方から声を掛け、敬礼をしてそう答えた

「それならばあの雨雲は何だ。左舷前方はるか先に無人島があるが、おそらくその島には豪雨が降っていると思われるが」
M船長は双眼鏡をS氏に手渡すべく振り返った。

『・・・・何だあの黒雲は!!朝の天気図ではあんなところに気圧の変化は起きないはずだが』
S氏は雨雲に覆われた無人島を見てその不可思議な光景に絶句していた。

「航海長。あの程度の天候の変化は、この船の運行に何の影響もあろうはずはない。ただし、今朝のブリーフィング時に局地的な天候の変化を予測できなかったことは重大な問題である。気象予報を行った者を明らかにして報告書を書かせなさい。小さなミスが大きなミスを呼び寄せてしまうことはお前も過去の経験から十分理解しているであろう。ヒトマル・マル・マルまでに私の許へ提出をさせなさい。いいな」
船長のM氏はそう言うと、再び双眼鏡を手に面前の大海原へと目を戻した。


***********************************

「Nサン、アメ、ヤマナイネ」
Q王国の通訳、P氏は椰子の葉で作った雨よけの傘を手に、片言の日本語でN氏にそう声を掛けた。

「Pさん。今日の捜索は島の北側にしましょうか。運良くこの島に流れつけたQ王国の方々が、私達の他にもきっといるはずですよ」
雨男のN氏はずぶ濡れになりながらP通訳にそう告げた。

「モウ ズイブン サガシタケレド、ココニイル 7ニン イガイ ミツケラレナイネ」
P通訳はそう言うと地面に目を落とした。

そう。Q王国へと向かっていたビジネスジェットが墜落してから2週間が過ぎた。
パイロットの奮闘により水面への着水は可能な限りその衝撃を少なくしていた。
それでも大きな胴体は2つに折れて、主翼は半分もげてしまい、着水から30分も経たないうちに海中へ沈んでしまったのだった。
乗員は全員救命胴衣を付けていたので溺れてしまいことはなかったが。
そしてN氏は海鳥を偶然見つけ、近くに島があることを確信した。



しかし潮の流れは思いの外強く、島に近づくうちには16人の乗員のうちN氏とともに上陸できたのは5人のみであった。
幸いにも飲み水はN氏がいたおかげで雨水から得られることが出来、野生の木の実や飛んでくる海鳥などで食料を調達しながら彼ら5人は何とか命を繋げられていた。
その後少し離れた海岸に流れ着いた2名を発見し、少なくとも7名の生存者が居ることは確認できたのだった。
それでもまだ残りは9人もいる。
今日は上陸して15日目であり、南岸に上陸したと思われる自分たちは北側区域への捜索を始めようとN氏は提案したのだった。

***********************************

「キャプテン!」
航海長が敬礼し、報告書を手渡す。
「今朝のブリーフィングにおける天候予測について報告書をまとめて参りました」
「言い訳になりますが、部下の天気予報は私が何度見直しても誤りであるとは思えません。どうかここ数日のこの海域の天気図の変化をご確認下さい」
航海長はそう言うと報告書をめくり、毎日6時間おきに作成した、ここ数日の天気図を示した。

「・・・・・たしかにそうだな。この天気図が正しいとするならば、あの小島付近に低気圧が発生することは予測できんな。それにしても不思議だ。あれからずっと雨雲はあの島から離れること無くおそらくあの島に雨を降らせ続けているに違いない」
船長のM氏は報告書に目を通しながらそう呟いた。

「よし。あの無人島の岩礁へ座礁しないギリギリに進路を取れ。私もこんな経験は初めてだ。一体何が起こっているのか、この目で見てみなくてはならないだろう」
M船長はそう言うと進路の変更をS航海長へ告げた。

しばらくするとその雨に煙る無人島から、僅かに煙がたなびいていることに気がついた。

「おい!あれは無人島だろう!?今まで数度この島を横切ったことはあったが、人が上陸したような気配は一度もなかった。第一、絶海の孤島であるこの島にどうやって辿り着こうと言うんだ」
M船長はそう言うと、煙が立ち上っている場所を凝視した。
「おぁ!やはり人がいる。それも漂着者のようだ。身につけているものはひどく傷んでいるし、木の葉で葺いたみすぼらしい雨よけが見える。よし、救命用のボートを出して彼らを救出せよ。急ぐのだぞ!!」
理由は分からないが、ともかく数名の人間がこの絶海の孤島に居ることは事実だった。
M船長はそう指示を出すとアンカーを下ろさせて救出のための受け入れ体制を整えさせた。

***********************************

やがてN氏を含む7名は無事に救出され、島の北側にも残りの9名が生存していることも確認され。Q王国の皇太子を含む全員がM船長の大型タンカーに救出された。
Q王国皇太子は最上の礼を述べ、自国へ帰り次第M船長へ多大な礼をすることを約束した。
そしてN氏は命の恩人のM船長へ、事の顛末を説明した。

「・・・不思議な事もあるものだ。それが本当であればじきに我が船も雨に囲まれるということか。どうだ航海長、雨雲は我らのあとをついてきているのか」

「はいキャプテン。先程の無人島から雨雲は離れています。そしていつの間にかこの周囲の空全体が雨雲に覆われております」

「なるほどお前は本当に不思議な力をもっているな。国土全体が砂漠化しているQ王国が、そちの身を欲しがるのも当然のことだな」
M船長はそう言うと天を仰いだ。

その後M船長は急遽進路をQ王国へと向け、彼ら16名を送り届けるのだった。
もちろん、Q王国の大きな港に入るまでずっと雨が降り続いていたのは言うまでもなかった。



****************前段の了*****************


は~い
後編は2部構成でお送りしますね。今夜はまずその前段。
明日はいよいよN氏がQ王国へ上陸します。
砂漠化が進行しているQ王国は緑豊かな国土へと変貌するのでしょうか、それとも。。。。

この続きは・・・・また明日ね('-^*)/


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その2
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