イデアル90の再生 | 社会不適合オヤジⅡ

社会不適合オヤジⅡ

好奇心、いよいよ旺盛なもので・・・

以前「サドル愛」という題で記事を書きました。

その中にはもちろんこのサドルもありました。

高校1年の夏に購入した山王ランドナーに着いていたIDEALE90(イデアル90)です。

私が16歳の頃から大学3年の頃まで苦楽をともにしてきたサドルです。

新しいランドナーを組むには、ぜひこのサドルを復活させたいと心に決めています。

 

上の画像ではそこそこ綺麗に見えますが、実家の地下倉庫から引き上げてきたときはひどい汚れようでした。

今回は画像が多めです。一見きれいに見えるサドルを再生してみようということです。

革製品は水に弱いと思われがちですが、決してそんな事はありません。

乗馬に使う鞍も革製ですが、これを洗う専用の石鹸があるのです。

自転車も腰を下ろすパーツをサドルといいますが、もともとは馬の鞍をサドルというわけで、その石鹸で洗おうということです。

これがそのサドルソープ。サフィールという会社の馬の鞍を洗浄するために作られた石鹸です。

さてやってみましょう。

キッチンのシンクでやっていることをお許しください(笑)

45年以上の汚れがこびりついていることがよくわかります。

一度だけでは汚れた泡は収まりません。

一通り汚れが浮いてきたら流し水で汚れを洗い流し、再度サドルソープを付け直し泡立てて洗うことを数回繰り返してなんとか泡が薄黄色くらいになりました。

革は濡らすことは構わないんですが、しっかりと形を整えて乾燥させなければなりません。

で、こうしました。

サドルソープの中には革に潤いを与える成分も含まれているので、すぐにひび割れたりしません。

でも加熱したり日向で乾燥させてはいけません。

乾燥させている間にイデアル90の特徴的なアルミフレームを磨きましょう。

ほら、そこはそれ、磨き職人ですからね(^o^)

細かなパーツを磨いて・・・・

フレームも磨いて・・・・・

アルミフレームには"alliage léger traité fortal"と、文字が打たれています。

fortalとはおそらく造語で、これはfort‐al、つまり強固なアルミニウムという意味でしょう。

で、多分ここには「強度のある処理をされた軽合金」のような意味が書かれているのではないかと思います。

さて組み上げましょう。

アルミの表面には腐食が起きていましたが、ココまで綺麗になりました。

では組み上げます。

いくらサドルソープにトリートメント効果のある成分があるとはいえ、このままでは乾燥するにつれてヒビが入ってしまいますし、変形も起こす可能性があります。

で、これを。

自転車用のサドルオイルはもちろんあるのですが、今回用意したのは蜜蝋です。

自然成分の蝋がいいのではないかと、かつてアルファの革製シートに効果があった経験から決めました。

塗り上げるとこんな感じです。裏側にも軽く塗り込みました。

写真の具合で真っ黒に見えちゃいますが、濃いブラウンと言った感じの色です。

特にサドルには若干の水分が必要だそうで、カラカラに乾いてしまうと柔軟性が損なわれたり素材そのものにヒビが入って実用に耐えなくなるそうです。

 

ひとまずこれで終了です。

結果はどうだったかといいますと、大きく変化したのは次の2点です。

1.革そのものの「張り」が戻った。

洗浄する前は、やや柔らかくて片手でかんたんに革を変形させることができたのですが、今はもう型を嵌めたかのようにしっかりとした形を保っています。体重がかかるパーツですから、これはとてもありがたいこと。もちろんカチカチになったわけではなく、硬いけれどもしなやかです。

2.変形が直った。

骨盤の坐骨部分で長く圧迫されたため、サドルの着座位置には左右に凹みができていました。

乾燥させるときにタイラップで締め上げて、その部分も引っ張られて膨らむようになりました。

その形状で固定されたので、タイラップを外してもサドルの座面に目立つような凹みはなくなっています。

 

これらは実用に際してとても有用なことです。

何しろ45年以上も放っておいた革サドルを再使用するという大胆なことです。健康体になってくれれば私より長命になってくれるかもしれません。

一生モノというのはこういうことを指すのでしょう。

 

それともう一つ。私はもう一つイデアル90を使っています。

こちらは綺麗に社名などの刻印が残っています。もともとはベージュ色(無染色)のサドルでしたが保革油で手入れをしているうちにこんな飴色になりました。

黒いほうのイデアルと異なる点はこれ。

先日お話したフランスの自転車雑誌「ル・シクル」の編集長、ダニエル・ルボア氏のサインが入っています。

こちらもフレームはアルミ合金の板状の物が使われています。

製品の名称でもある90が刻印されています。←どうやらこれは私の誤解のようでした。

両方を比べてみましょう。

フレームの形状が違うことにお気づきになりましたでしょうか。

ブラウンの方はサドル本体との結合部分が外向きになっています。比べて黒い方は内側に折れています。

結果として板状のフレームの開く角度が異なっています。

この違いはずっと昔から知っていましたが、なぜこのような形状の違うフレームが作られていたのかはわかりません。多分製作年代が違うのではないかと思います。

 

黒い方(今回再生したほう)にはこう書かれています。

中のレタリングは同じですが、数字は90ではなく99とスタンプされています。

不勉強ながらイデアル99という製品にはこのような形のサドルは無いはずです。

とてもレアな商品ですが、イデアル99とはスワロータイプだったはず。

スワロータイプとは主にピスト用に作られたサドルで、短距離レーサーの鍛えた太ももが当たることを防ぐためこのようにサドルの左右が切り取られていているサドルのことです。

それでもこれは「外曲がり」形状で、黒い方のフレームとは違います。

とても見づらいのですが、よく見ると確かに刻印は90ではなく99とされているのではないかと思えます。

さて困りました。私が16歳のときに買った山王のツーリングにはイデアル90と刻印されたサドルであったことは紛れもない事実です。憧れのサドルでしたから間違えるはずがありません。

まぁフランスとかイタリアはいい意味で「いい加減」なところがあるので(笑)、この辺も適当に組んだのかもしれません。

 

ともあれ休眠していた古い古いサドルを再生できたことが確認できて安心しました。

黒い方にもうっすらと”IDEALE90”と刻印されていた痕跡が見受けられます。

こうして並べてもサドルの「峰」が垂れていないことがわかります。再生できたと言っていいのでしょう。

最初にあげた画像をもう一度貼り付けます。サドルの峰が立ち上がったことがおわかりいただけると思います。

そして貫禄が違うのは目で見てわかります。

適度にヤレて、それでもしっかりとした張りがある姿に戻ったことはこの上ない喜びです。

90でも99でもどちらでもいいんです。丹沢山麓、秩父山系、奥多摩や五日市の山々を走ってきたサドルです。再生させて再び跨がれることができるのであれば、それは自転車道楽の冥利に尽きると言っても過言ではありません。

また明日ね('-^*)/


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