1953年度国際幻想文学賞受賞のSFの古典 (1952年発表) 、全8篇からなる連作もので、人類を含めた地上、否、地球に生きるものの行く末とは?
たしか何かで、押井守さんがこの小説のことを語ってたかな、だから前々から読んでみたかったんだなぁ
でも、
押井さんはひょっとして犬つながりってのがひとつのきっかけ? エピグラムにはこうあった
わがスコッチテリア
故ナサニエルのために
第1話は、本書の題名にもなっている「都市」
「都市」というと「イノセンス」にも次のようなバトーのセリフがあったね
生命の本質が遺伝子を介して伝搬する情報だとすると、
社会や文化もまた膨大な記憶システムに他ならない。
都市は巨大な外部記憶装置ってわけだ。
バトー「イノセンス」 / 押井守
その都市から人口が流出し機能しなくなった世界は、何かこのコロナ禍でのテレワークの有様を見ているようなそんな錯覚すら覚える
全篇、様々なアイテムが盛り込まれ、とくに第6話が印象に深く、国際幻想文学賞というのもうなずける
「ミス・サラのことは、お気の毒に存じます」
ウエブスターはかぶりを振った。
「いや、オスカー、あれは彼女が望んだことなんだ。
一つの人生を脇へそれて、
別の一つの人生を新たにはじめる、
それだけのことだ。
彼女は〈寺院〉にひきこもって、
くる年もくる年も眠りつづける、
そしてもう一つ別の人生を生きるんだ。
しかもこの方はな、オスカー、
幸福な人生になるはずなんだ。
何故といって、
そうなるように自分でお膳立てさせてあるのだから」
都市 / C.D.シマック
そう言うジョン・ウエブスターに悲哀を感じるのは、大拙博士のいわれる通りだと思うから
永遠の生命などというが、
そんなものはあり得ない。
生命は移り変わるのが生命、
移りかわるそのことが生命だから、
そのほかに移り変わらぬものがあるとはいわれない。
移り変わらぬ永遠の生命があるとすれば、
その生命は生命ではなくて、
死そのものである。
時間と永遠 / 鈴木大拙
先人の言葉をかりるということがある、「イノセンス」のセリフは全てその引用にしたかった とは押井守監督の言葉
「わたくしにはお姿が見えませんが」
とオスカーが言った。
「うん。いない。にもかかわらず、
おそらく、わたしはいるんだな。
あるいはわたしの一部が。
わたしを生んだもの、
わたしが生れ出たものの一部が。
絵にあるあの家ね、あれはオスカー、
北アメリカのウエブスター邸なのだ。
そして、わたしはウエブスター家の一員だ。
それにしても、あの家からずいぶん遠く──
あの家を建てたものたちからはずいぶん遠くへだたったものさ」
悲哀だなぁ... 悲哀、そう囁くんだなぁ、、僕のゴーストが、、、
「北アメリカはそれほど遠くないでしょう」
「そうだな」ウエブスターは言った。
「距離はそれほど遠くない。
だか、別な意味で遠いのだ」
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二都物語 / C.ディケンズ
※2021年に読んだ文庫本など
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・とるとだす / 畠中恵
・新編 東洋的な見方 / 鈴木大拙著、上田閑照編 [番外]
・さよならジュピター / 小松左京
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・都市 / C.D.シマック
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・依頼人は死んだ / 若竹七海
「アラユルモノノウチニ安ラギヲ求メタガ、
ドコニモ見出セナカッタ。
タダ片隅デ書物ト共ニイルトキヲ除イテハ」
薔薇の名前 上 / U.エーコ