鹿の王 水底の橋 / 上橋菜穂子 | カーツの歴史散策&御朱印作庭  庭は眺めるものではなく、       出てみるものなのだ、、

カーツの歴史散策&御朱印作庭  庭は眺めるものではなく、       出てみるものなのだ、、

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電光影裏斬春風

知っているようで知らない歴史の裏側をそっと、

御朱印帳をたずさえぶらり、ふらり、、つれづれに、、、

日々徒然に

 「私たちは、人というのはとても不平等なものだと思っている。
 その不平等の大方は、その人自身の心根とは何の関わりもない、
 ただ、そのように生まれた、というだけのものよ。
 

 

水底 とは? とは? 題名からしてまた、何とも意味深な謎かけだ、、

 

 

文庫版解説の一行目に目がいく

 

 

 今は2020年4月8日。ちょうど日付が変わったところだ。

 先ほど安倍晋三内閣総理大臣から緊急事態宣言が発出された。

 周りはシーンと静まり返っている。

 解説 / 東えりか

 

 

歴史を見ていると、なぜどうしてこの日を選んだ? と感じることがままある

 

最近富に興味のある幕末の歴史では、桜田門外の変は安政七年三月三日、井伊大老の姫たちも雛祭りを愛でる支度をしていたに違いない

 

近世でいえば、真珠湾攻撃は昭和16年12月8日の未明、佛教では成道会にあたる、その日の暁にお釈迦様は悟りをお開きになった、どうすれば皆が幸せになれるかをひらめかれた日だ、国家神道を標榜していたことと合わせても、何とも皮肉に思う

 

 

そして、4月8日、、

 

 

この日は佛教では降誕会(他に灌仏会,花祭り)と云いお釈迦様がお生まれになったことを祝う日

 

さらに、面白い符合だなとその時あたまをよぎったのは、そのお釈迦様の前世のこと

 

 

「リムエッルらしいやり方だね。あの人は、謎かけが好きだから」

 鹿の王 水底の橋/ 上橋菜穂子

 

 

 

お釈迦様の前世は、鹿の王であった

 

そういう話もある

 

 

東北平泉に中尊寺があり、京都嵯峨に渡月橋がある

平泉とは月を写す水面が穏やかなことの意味があろうかと思うが、その水面はときに波立つもの、が、それが底となれば吉川英治氏の宮本武蔵にあるあの有名な末文も思い出される

また、渡月とは慈悲の象徴であるいついかなるときも消えることのない月に掛かる(度する)橋の意味が込められているようにも思う

 

何とも意味深な謎かけだなぁ... 

 

 

と、

 

いつもの妄想が、、(゚O゚)\(- -; 

 

 

で、、

 

 

うーむ、なんという濃密な物語だろう、、、

また、なんと巧みな伏線か、、

そんじょそこらのミステリー小説がふっとどこかに飛んでいってもおかしくないくらいの構成力、読み終えて、その伏線の張り方にも脱帽

 

上橋菜穂子さんの講演を以前拝聴したことがある、その中で上橋さんは、井上靖さんの「天平の甍」に出てくる業行という僧のたどる運命にいたくこころを動かされたという

「水底の橋」にみる医術の進歩の歴史もまた、業行のようにいち医術者の思いが結果的にはいつの日にか実を結ぶだろうことを予感させる

 

前作「鹿の王」はパンデミック小説という見方も出来た、一方今作「水底の橋」は、そもそも医療とは?というその原点に立ち返った視点をひしと感じもし、

「水底の橋」とは、ある種の象徴として、四弘誓願 にある 衆生無辺誓願度 の意味するところのようにも思える、、

 

 

 生まれてすぐ、泣き声すらたてられずに死ぬ者もいれば、

 人に恨まれながら百年生きる者もいる。

 何ともわからぬ身体の中の不具合があって、長く苦しんで、

 それでも生きている者もいれば、風邪もひかずに元気に生きて、

 ある朝目覚めず床に死んでいる者もいる。

 人の命の在り様は千差万別。なんとも、なんとも、不平等なものよ」

 

 

そうそう、

 

だから奈良東大寺の鹿をみると、とても佛教らしいと思うのだ

 

 

 

鹿の王 / 上橋菜穂子

 

 

 

■関連ブログ■

読書遍歴:ひとはなぜ 物語 を読むのか? 2018-11-28
・特に好きな日本の作家さん
・無人島に持っていく五冊
・そして死ぬまでに、XXX を読み終えたい、、
・2018年は、こんな本を読んできた ( ひとはなぜ 物語 を読むのか? (2018年のまとめ) ) 2019-01-08
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・2020年は、こんな本を読んできた ( ひとはなぜ 物語 を読むのか? (2020年のまとめ) ) 2021-01-06
** あなたにとって読書とはなんですか? **



 死ねば大好きだったこの大切な本のページはめくれず、
 読み終えたかったという願いは叶わない。

 二都物語 / C.ディケンズ

 

 

※2021年に読んだ文庫本など

本陣殺人事件 / 横溝正史 再読

黄色い部屋の謎[新訳] / ガストン・ルルー 再読

黒猫の三角 / 森博嗣 再読

フォックス家の殺人[新訳]/ E.クイーン 再読

モロー博士の島 / H.G.ウェルズ

斜陽 / 太宰治
砂漠の惑星 / スタニスワフ・レム
鳥居の密室 / 島田荘司

屋上 / 島田荘司

イルカの島 / A.C.クラーク

・鹿の王 水底の橋 / 上橋菜穂子 

人斬り彦斎 / 五味康祐

さよならの手口 / 若竹七海 再読

静かな炎天 / 若竹七海

錆びた滑車 / 若竹七海

不穏な眠り / 若竹七海

・書楼弔堂炎昼 / 京極夏彦 

・ウィチャリー家の女 / R.マクドナルド 

・髑髏検校 / 横溝正史 再読

・宇宙の戦士 [新訳]  / R.A.ハインライン

・斜め屋敷の犯罪 改訂完全版 / 島田荘司 再読

・ガリレオの苦悩 / 東野圭吾

・獣眼 / 大沢在昌

・予告殺人 / A.クリスティ

・エクソシスト / W.P.ブラッティ 再読

・象は忘れない / A.クリスティ

・アンチノイズ / 辻仁成

合唱 (コーラス) 岬洋介の帰還 / 中山七里

・コンビニ人間 / 村田沙耶香

・白骨街道 (ハヤカワミステリマガジン連載) / 月村了衛

・バスカヴィル家の犬 / A.C.ドイル 再読

・トム・ソーヤーの冒険 / M.トウェン 再読

・とるとだす / 畠中恵

 

 

 

 

「アラユルモノノウチニ安ラギヲ求メタガ、

 ドコニモ見出セナカッタ。

 タダ片隅デ書物ト共ニイルトキヲ除イテハ」

 薔薇の名前 上 / U.エーコ