黒猫の三角 / 森博嗣 再読 | カーツの歴史散策&御朱印作庭  庭は眺めるものではなく、       出てみるものなのだ、、

カーツの歴史散策&御朱印作庭  庭は眺めるものではなく、       出てみるものなのだ、、

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電光影裏斬春風

知っているようで知らない歴史の裏側をそっと、

御朱印帳をたずさえぶらり、ふらり、、つれづれに、、、

日々徒然に

 不自由?

 よくわからない言葉だな、と練無は思った。

 「ね、どうして、不自由っていうのかな?」歩きながら寝無はきいた。

「何ゆうてんの、君」紫子がこちらを向いて目を細める。

 「どうして、非自由じゃないんだろう」練無は考えながら、言った。「名詞なら、不、じゃなくて、非、がつくずでしょう? 自由って、最初は動詞だったのかな」

 

 

本陣殺人事件」「黄色い部屋の謎」と密室物を再読したので (ルルーは新訳にて、もう一冊、密室物をと思い、これまた再読で、Vシリーズでは一番好きなこの作品を

 

 

 この事件は、六月六日の午後八時から九時にかけて発生した。それは、保呂草潤平、小鳥遊練無、香具山紫子、瀬在丸紅子の四人が、アパート阿漕荘の保呂草の部屋で麻雀をした夜の翌日だった。

 

黒猫の三角 / 森博嗣

 
 
猫シリーズ全3ブログその1
 
 

黄色い部屋の謎」を再読したからか、それを元ネタ? (ABCに九尾か僧正かな??) にしたであろう本作を読み返したくなって再読その裏表紙には、

 

 ここ数年、那古野市には「数字にこだわる」殺人犯が跋扈している。

 

とある

 

が、驚くなかれ、"数字" へのこだわりはこれだけではない、ノベルス版の331 (ページを見よ、ここまでやるかーと自ずと笑みがこぼれたよ

 

 

加えて、、

 

そっかそっか、本作は一般的には密室物だけど、ワイダニットだったなと、読み始めてほどなく、そんなことも思い出した

 

 

 「うーん」保呂草は上を向く。「そもそも、人殺しって何なんでしょうね」

 

 

また、物語と直接関係ないどうでもいいこと (*1) についてのキャラクタ間のやり取りが森さん的視点で面白い、この部分なども らしくて 

以下冒頭からの続き

 

 

 「どうでもいいことを」紫子が鼻を鳴らす。「よくそういう、どうでもええことを思いつくなぁ」

 「不思議だと思わない?」

 「うーん。ま、私の解釈としては・・・・・・」紫子が微笑む。「きっと、昔の日本にはなかった言葉なんよ、自由って。だから、使い方がようわからんうちに、広まってしもうたん」

 

 

いやいや、確かに日本のオリジナルではないが (漢字だからね) 、漢文とともに 自由 は日本には入ってきている

また、そもそもを言えば 自ずからに由る で、その否定が 自ずからに由らず だから、不自由 なのであって、だから何ら不思議ではないのだ、ということを分かっていての (この会話は紅子さんあるいは保呂草さんじゃないからね) 森さんらしさが垣間見られるシーンなんだなぁ

 

*1昨今の言葉で意訳するなら「不要不急の文章」とでもいえばよい?

 

 

で、

 

ミステリィ小説における再読の楽しみのひとつは伏線探しにあるから、何気に読み飛ばしていた文章になるほどなとうなずかされた

 

 

 「良かった」溜息混じりに保呂草が呟く。

 そんな感情の籠もった保呂草の表情を、練無はこれまでに見たことがなかった。

 

 

ぞわぞわっ とする

 

以下、ワイダニットに絡めて

 

 

 「わからない」練無は首をふった。

 「わかりません」紫子も首をふる。

 「答は簡単よ」紅子はにっこりと微笑んだ。「私は、自分が殺されたくないからです。それ以外に理由はないわ。

 

 

論語だね、「己所不欲、勿施於人。」自分の好きなことを人にしてあげようとする行いよりも、より普遍的な真理だと思うなぁ、どうだろうか (-)

 

 

回想

 

本作ではその一般には理解し難い動機がひとつの焦点となって冷静に分析されているが (さらに本作の数年前に出た「魍魎の匣」や「数奇にして模型 」なども想起されるが) 、これは何も唐突なミステリィ小説への味付けといったものなどではない ("本格らしくないもの"とは書かれているけれど (*2) (*3)) 、かつまた、ひらに社会派ミステリィと言われる分野の枠内で語られる予定調和的な語り口とも決定的に異なる

そもそもが万人に理解されることを前提としているとは思えないし()、かつまたそれは、極めて人間的だとも断言されるに至っては、読者はどう受け止めたであろうか? 少しばかり聞いてみたい気もする

 

*2100人の森博嗣 / 森博嗣

*3:またそれは、神戸連続児童殺傷事件が1997年のことだったことを考慮に入れるなら、決して意識していないということではないんだろう、、

 

 

さて、

 

 

本作刊行の1999年は平成にして11年、かつまた、5月5日のことであった

 

ゾロ目だね ((((゜д゜;))))

 

極めて人間らしい、こんなことをするのは人間くらい? AIですらしないのでは??

 

 

そして、

 

題名の「黒猫の三角

 

なるほど、美しさの象徴か、、

 

 

 私は、もう少しやりたいことがあって、もう少し生きていたい、という極めて個人的な希望を持っているの。勝手で我儘だけど、そうなんだからしかたがないわ。つまり、それだけ。それだけなのよ。だから、その、美しいかもしれない殺人を、私は認めるわけにはいかないの。それは、私のエゴです。私が殺されたくないから、みんなも殺さないで、という自分に都合の良いことを主張しているわけ。そのエゴが集まって、社会のルールを作っているだけのことなんだ」

 

 

さてさて、

 

ここまで読んだなら そう もうあの小説を再読するしかないよなぁ、、積読様方々には申し訳ないけれど、僕にはもう あれ しかないのだ◎

 

 

とは言うものの、、

 

 

 I guess that what fathers are for.  

 父親とは、そのためにあるのだと思います

 

 

まずは、こちらの 新訳 再読 しなければ (=ω゚)ノ

 

そして、その時、その読後感に、次に何を読むかをあらためてゆだねてみよう◎

 

 

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積読更新

多少入れ替え

 
 

 

■関連ブログ■

読書遍歴:ひとはなぜ 物語 を読むのか? 2018-11-28
・特に好きな日本の作家さん
・無人島に持っていく五冊
・そして死ぬまでに、XXX を読み終えたい、、
・2018年は、こんな本を読んできた ( ひとはなぜ 物語 を読むのか? (2018年のまとめ) ) 2019-01-08
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・2020年は、こんな本を読んできた ( ひとはなぜ 物語 を読むのか? (2020年のまとめ) ) 2021-01-06
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 死ねば大好きだったこの大切な本のページはめくれず、
 読み終えたかったという願いは叶わない。

 二都物語 / C.ディケンズ
 

 

※2021年に読んだ文庫本など

本陣殺人事件 / 横溝正史 再読

黄色い部屋の謎[新訳] / ガストン・ルルー 再読

黒猫の三角 / 森博嗣 再読

・フォックス家の殺人[新訳] / エラリイ・クイーン 再読

・モロー博士の島 / H.G.ウェルズ

・斜陽 / 太宰治

 

 

 

 

「アラユルモノノウチニ安ラギヲ求メタガ、ドコニモ見出セナカッタ。

 タダ片隅デ書物ト共ニイルトキヲ除イテハ」

 薔薇の名前 上 / U.エーコ