☆モザイク胚のカットオフ値は、20~80%より30~70%が良い | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、モザイク胚を20~80%あるいは30~70%と定義した場合の比較を行ったものです。

 

Hum Reprod 2023; 38: 982(スペイン)doi: 10.1093/humrep/dead049

要約:2019〜2020年に本研究のために提供された117個の胚を用いて、ICM細胞全体とTE細胞4箇所の合計585細胞の染色体分析をNGS法で行いました。内訳は、モザイク胚53個、染色体異常胚25個、正常胚39個です。モザイク胚を20~80%と定義した場合と30~70%と定義した場合の比較を行いました。TE細胞1箇所(検査)とICM細胞全体+TE細胞4箇所(確定診断)の結果は下記の通り。

 

モザイク胚を30~70%と定義した場合  

TE細胞1箇所         確定診断正常胚 モザイク胚 異常胚

正常胚(<30%)         12,542    35    0

低頻度モザイク(30〜50%)     96    15     0

高頻度モザイク(50〜70%)     6     14    27

異常胚(>70%)           1     11    248

 

モザイク胚を20~80%と定義した場合  

TE細胞1箇所         確定診断正常胚 モザイク胚 異常胚

正常胚(<20%)         12,331    29    0

低頻度モザイク(20〜50%)    308     20    0

高頻度モザイク(50〜80%)     6     16    55

異常胚(>80%)           1     9    220

 

解説:NGS法によるPGT-Aではモザイク胚の検出が可能です。これまでの研究では、擬似的に作成したモザイク胚を用いた研究が主でした。本論文は、患者さんから提供していただいた本物の胚を用いた検討であり、1回のPGTでモザイク胚を20~80%と定義した場合は、30~70%と定義した場合と比べ偽陽性が増加するだけで、真の検出率は向上しないこと、モザイク胚を30~70%と定義した場合に、正常/異常の判定では、最も高い診断精度になることを示しています。

 

下記の記事を参照してください。

2023.3.27「☆低頻度モザイク胚移植で胎児異常

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2020.7.3「☆PGT-A:バイオプシー方法による違い

2020.5.19「☆PGT-Aはメリットが誇張され、デメリットが過小評価されている

2020.3.27「PGT-Aの際に顕微授精は必須ではない

2020.1.29「☆PGT-Aで出産率は改善するか

2020.1.10「正常胚の出産率予測には桑実胚になるまでの時間が重要

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2019.9.5「モザイク型の染色体を持つ夫婦のPGT-Aの是非

2019.7.5「PGT-Aの正確性は?

2019.5.13「胚盤胞のPGT-Aの正確性は?

2019.3.12「モザイク胚100周期の移植経験

2019.2.19「PGT-Aでメリットがある方は?

2019.1.29「染色体一部モザイク(segmental mosaic)の取り扱い

2018.8.19「☆PGT-A:賛成派 vs. 反対派

2018.7.17「PGS(PGT-A)の精度は?

2018.6.22「☆モザイク胚や異常胚の移植について

2018.6.10「☆モザイク胚の淘汰:マウスモデル

2018.6.3「モザイク胚の特徴は?

2018.5.31「Q&A1845 PGS異常胚の出産

2018.4.6「☆PGSの真価は?

2018.4.5「☆PGSについて:ASRM公式見解

2018.3.22「Q&A1772 モザイク胚について2

2018.1.29「☆モザイク胚を移植したらどうなるか?

2017.10.31「Q&A1627 ☆モザイク胚について

2017.1.24「☆ASRM:PGS特集 その1 モザイクの取り扱い

2016.8.9「☆女性の年齢別染色体異常頻度 その2