本論文は、モザイク型の染色体を持つ夫婦のPGT-Aを検討したものです。
Fertil Steril 2019; 112: 291(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.03.035
要約:2015〜2018年に採卵+PGT-Aを実施した方で、夫婦どちらかにモザイク型の染色体を持つ68組(女性47名、男性21名)209個の胚盤胞を対象に、PGT-A結果を後方視的に検討しました。性染色体のモザイクを有する55組153胚のうち、染色体異常は11個(7.2%)に認められ、常染色体のモザイクを有する13組56胚のうち染色体異常は19個(33.9%)に認められました。特に脆弱な16q22にモザイクがある場合には異常頻度が高率に認められました。
解説:一般集団では胎盤のモザイク率は2%であるのに対し、羊水検査のモザイク率はわずき0.2%と減少します。この現象はモザイク胚(細胞)が次第に淘汰される可能性を示唆します。それでは、もともとモザイク型の染色体を持つカップルから得られた胚の染色体異常の頻度はどうなのでしょうか?本論文は、モザイク型の染色体を持つ夫婦のPGT-Aを検討したものであり、性染色体モザイクを有する場合には胚の異常頻度は低率で、常染色体モザイクを有する場合には胚の異常頻度は高率であることを示しています。したがって、性染色体モザイク(ターナーやクラインフェルター)の方ではPGT-Aの必要性は低く、出生前診断(NIPT、絨毛検査、羊水検査など)で十分であるとしています。一方、常染色体モザイクの方(特に16q22)ではPGT-Aを実施すべきと結論付けています。
下記の記事を参照してください。
2019.7.5「PGT-Aの正確性は?」
2019.5.13「胚盤胞のPGT-Aの正確性は?」
2019.3.12「モザイク胚100周期の移植経験」
2019.2.19「PGT-Aでメリットがある方は?」
2019.1.29「染色体一部モザイク(segmental mosaic)の取り扱い」
2018.8.19「☆PGT-A:賛成派 vs. 反対派」
2018.7.17「PGS(PGT-A)の精度は?」
2018.6.22「☆モザイク胚や異常胚の移植について」
2018.6.10「☆モザイク胚の淘汰:マウスモデル」
2018.6.3「モザイク胚の特徴は?」
2018.5.31「Q&A1845 PGS異常胚の出産」
2018.4.6「☆PGSの真価は?」
2018.4.5「☆PGSについて:ASRM公式見解」
2018.3.22「Q&A1772 モザイク胚について2」
2018.1.29「☆モザイク胚を移植したらどうなるか?」
2017.10.31「Q&A1627 ☆モザイク胚について」
2017.1.24「☆ASRM:PGS特集 その1 モザイクの取り扱い」