本論文は、PGT-A未実施胚移植の妊娠成績について新鮮胚移植と凍結胚移植で比較したものです。
F&S Rep 2024; 5: 369(米国)doi: 10.1016/j.xfre.2024.09.003
F&S Rep 2024; 5: 354(米国)コメント doi: 10.1016/j.xfre.2024.10.003
要約:2015〜2020年に、米国Shady Grove不妊センターグループにおける自己卵によるPGT-A未実施の8,319周期の初回胚盤胞移植を対象に、新鮮胚移植6,755周期と凍結胚移植1,564周期の妊娠成績を後方視的に検討しました。各種交絡因子を排除したところ、2群間の臨床妊娠率、出産率、流産率に有意差を認めませんでした。また、年齢階層別の検討においても有意差を認めませんでした。
解説:米国では、2006年と比べ2012年の凍結胚移植は82.5%増加していることから明らかなように、近年凍結胚移植が増加しています。もちろん、PGT-Aを行うのであれば胚凍結が基本になります。本論文は、PGT-A未実施胚移植の妊娠成績について新鮮胚移植と凍結胚移植で比較したものであり、米国(白人、黒人)では、両者の妊娠成績が同等であったことを示しています。しかし、人種による違いがありますので、この現象が日本人をはじめとした東洋人には当てはまりません(日本人の統計では、新鮮胚移植よりも凍結胚移植の方がどの年齢でも10%妊娠率が高いことが証明されています)。
コメントでは、1983年に初めての凍結胚移植による出産が報告されてから、胚凍結は広く行われるようになっています。最近は、PGT-Aの導入による胚凍結も増えています。しかし、PGT-Aを行わない場合にどのような作戦を立てれば良いのかについて明確な回答はありません。新鮮胚移植のメリットは、凍結融解操作が入らないことによる時間短縮と費用削減です。一方、凍結胚移植のメリットは、子宮内環境の最適化、日程調整の自由度、早産や低出生体重児のリスク低下、良好な周産期予後です。最近の欧州データ(ESHRE)によると移植あたりの妊娠率は、新鮮周期は体外受精で34.6%、顕微授精で33.5%、凍結胚移植で35.8%と同等であるとしています。