松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

私は、1988年大学卒業以来、生殖医療ひとすじで、大学病院勤務、米国留学、ARTクリニック勤務をして参りました。生殖医療専門医として、少しでも生殖医療に貢献できればと考えてこのブログを始めました。
近年のネット社会では、極めて沢山の情報が氾濫していますが、間違った情報も多く見受けられます。一般の方には正しい情報と間違った情報を区別することは不可能ですので、正しい情報をお伝えすることで、多くの方に赤ちゃんを授かって欲しいと思いブログを始めました。ブログは生殖医療に関係する知識や情報を、主に英語の論文などのデータに基づいてお届けしています。最新の英語の論文は日本語ではどこにも掲載されていない情報が満載です。「いち早く」「正確な情報」をお届けしたいと思います。
妊娠を目指すには良い精子と良い卵子の両方が必要です。どちらかが欠けてもいけません。目標に向けて夫婦で一緒に協力することが大切だと思います。ぜひ、ご夫婦で読んで欲しいと思います。

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男性と女性の最先端の治療が同時にできる生殖医療専門クリニックとして、
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本論文は、大気汚染と体外受精の成績について韓国ソウルで検討したものです。

 

Hum Reprod 2018; 33: 1071(韓国)

要約:2006〜2014年にソウル市街在住の方4581名6621周期新鮮胚移植において、居住地のPM10、二酸化窒素、一酸化炭素、二酸化硫黄、オゾンの暴露量・暴露時期と妊娠成績を後方視的に検討しました。暴露時期は、卵巣刺激開始から採卵まで(第1期)、採卵から胚移植まで(第2期)、胚移植から判定日まで(第3期)、および全期間(第4期=第123期)としました。平均年齢35歳、平均BMI 20.9、平均周期数1.4回でした。第1期と第3期で大気汚染による妊娠成績の有意な低下が認められました。子宮内妊娠率は、第1期の二酸化窒素(0.93倍)、一酸化炭素(0.94倍)への暴露により有意に低下し、第3期のPM10(0.92倍)、二酸化窒素(0.93倍)、一酸化炭素(0.93倍)への暴露により有意に低下しました。また、第3期のPM10(1.17倍)、二酸化窒素(1.18倍)への暴露により化学流産が有意に増加しました。

 

解説:大気汚染により妊娠率低下や流産率増加の可能性が示唆されています。代表的な論文として、以下の3編があり過去の記事で紹介しました。

①2016.4.6「大気汚染と不妊症Nurses' Health Study II:幹線道路近くに居住している場合に、不妊症の頻度(1.11倍)が有意に増加しましたが、大気汚染の種類(PM2.5、PM2.5〜10、PM10)にはよりませんでした。また、大気汚染の期間が長いほど不妊症のリスクが増大しました。

②2018.1.11「大気汚染による妊孕性への影響は?LIFEスタディー:全体的には妊孕性に影響を与えませんでしたが、排卵前日のオゾン暴露により妊孕性は0.83倍に有意に低下し、排卵後8日目の二酸化窒素暴露により妊孕性は0.84倍に有意に低下しました。一方、排卵後6日目の10μm未満のPM10の暴露により妊孕性は1.25倍に有意に増加しました。

③2018.2.11「☆大気汚染と流産の関係LIFEスタディー:妊娠全期間におけるオゾン(1.12倍)、PM2.5(1.13倍)、硫酸塩化合物(1.58倍)への曝露により流産リスクが有意に増加しました。なお、排卵の2週間以上前および流産直前2週間の大気汚染物質曝露との関連は認めませんでした。

本論文は、新鮮胚移植周期では、卵巣刺激開始から採卵までと、胚移植から判定日までのPM10、二酸化窒素、一酸化炭素への暴露により子宮内妊娠率有意に低下することを示しています。

 

大気汚染は、心血管疾患、呼吸器疾患、神経精神状態、全体の死亡率に悪影響をもたらすことが知られています。受動喫煙もPM2.5の暴露になりますので、一種の大気汚染とも言えます。妊孕性への悪影響は決して侮れませんので、ご注意ください。なお、PM2.5、PM2.5-10、PM10は、大気汚染物質の大きさを示したものです。たとえば、PM2.5は2.5μm未満の粒子のことを言います。

 

下記の記事を参照してください。

2014.3.5「☆PM2.5よりタバコが怖い

2013.6.10「☆PM2.5で卵子が少なくなる?

 

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