染色体一部モザイク(segmental mosaic)の取り扱い | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、染色体の一部のモザイク(segmental mosaic)の出産率を調査したものです。

 

Fertil Steril 2019; 111: 69(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.08.057

Fertil Steril 2019; 111: 45(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.11.006

要約:2015年に、aCGH法によるPGT-Aを実施し、正常胚を移植した327名377個の単一胚移植において、妊娠予後判明後にNGS法にて再度PGT-Aを実施し、segmental mosaic胚の有無を確認し、妊娠成績を後方視的に検討しました。結果は下記の通り。

 

NGS法      正常胚     segmental mosaic胚   オッズ比  P値

臨床妊娠率  60%(215/357)   40%(8/20)     0.41    NS

出産率    54%(192/357)   30%(6/20)     0.34    0.04

流産率    18%(65/357)    40%(8/20)     3.02   0.04

 

解説:これまで、segmental mosaic胚は正常胚と比べ妊娠率も流産率も変わらないとの報告が多くありました。そのため、PGDIS(国際PGD学会)もASRM(米国生殖医学会)もsegmental mosaic胚の移植を推奨しています。しかし、詳細なガイドラインはありませんでした。本論文は、segmental mosaic胚は正常胚と比べ出産率は若干低下しますが、元気な赤ちゃんを出産する可能性がある胚であるため、廃棄せず移植すべきとしています。segmental mosaicは4〜19%に見られますので、NGS法で分析し移植対象に加えて欲しいと考えます。コメントでは、本論文の症例数が少ない(20症例)ため、結論づけることはできないとしています。

 

下記の記事を参照してください。

2018.8.19「☆PGT-A:賛成派 vs. 反対派

2018.7.17「PGS(PGT-A)の精度は?

2018.6.22「☆モザイク胚や異常胚の移植について

2018.6.10「☆モザイク胚の淘汰:マウスモデル

2018.6.3「モザイク胚の特徴は?

2018.5.31「Q&A1845 PGS異常胚の出産

2018.4.6「☆PGSの真価は?

2018.4.5「☆PGSについて:ASRM公式見解

2018.3.22「Q&A1772 モザイク胚について2

2018.1.29「☆モザイク胚を移植したらどうなるか?

2017.10.31「Q&A1627 ☆モザイク胚について

2017.1.24「☆ASRM:PGS特集 その1 モザイクの取り扱い