胚盤胞のPGT-Aの正確性は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、胚盤胞のPGT-Aの正確性をインビトロの長期培養系で調べたものです。

 

Hum Reprod 2019; 34: 758(ベルギー、オランダ)doi: 10.1093/humrep/dez012

要約:提供していただいた80個の胚盤胞(異常胚37個、モザイク胚17個、余剰胚26個)を、特殊な培養環境でday 6からday 12までディッシュへの接着培養を行い(Nat Cell Biol 2016; 18: 700、Nature 2016; 533: 1)、胚盤胞のPGT-A結果と、day 12での胎盤および胎児部分の染色体検査結果を比較しました。なお、染色体分析はNGS法を用いました。73個の胚盤胞は12日間培養でき、51%で生存が確認できました。12日間の培養で生存が確認できた胚は、PGT-Aの正常胚、トリソミー胚、一部倍数体の胚、モザイク胚であり、モノソミー胚、部分欠失胚、多数の箇所に異常が見られた胚では、ほとんどディッシュに接着もせず生存しませんでした。生存し外側への発育が見られた胚では、胚盤胞のPGT-A結果と、day 12での胎盤および胎児部分の染色体検査結果は完全に一致していました。胚盤胞のPGT-Aにてモザイク胚とされた胚の58%は12日間の培養で生存できており、71%は胎盤・胎児部分ともに正常でした。胚盤胞のPGT-Aにてモザイク胚とされた胚で偽陰性はなく(本当は異常なのに正常と診断される確率)偽陽性が19%(本当は正常なのに異常と診断される確率)でした。今回の検討から、胚盤胞のPGT-Aの診断精度は80%となります。ただし、もしモザイク胚を除外すれば診断精度は100%です。

 

解説:本論文は、胚盤胞のPGT-Aの正確性をインビトロの長期培養系で調べたものであり、正常胚は正常ですが、モザイク胚は7割に正常胚が含まれることを示しています。したがって、モザイク胚の取り扱いは慎重にすべきとしていますが、まずモザイク胚の定義が曖昧であり、シグナル強度が何%あるいは一部分の場合は部分が何%にすべきか議論が必要です。

 

下記の記事を参照してください。

2016.6.3「ヒト胚を13日間培養する新たな方法