PGT-Aでメリットがある方は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、PGT-Aでメリットがある方は38歳以上の方であることを示しています。

 

Hum Reprod 2019; 34: 268(米国)doi: 10.1093/humrep/dey346

要約:2014〜2016年に初回採卵でPGT-Aを実施したPGT-A群300名とそれにマッチした対照群(初回採卵でPGT-Aを実施しなかった)300名を対象に、妊娠成績を後方視的に検討しました。結果は下記の通り(有意差ありを赤地表示)。

 

採卵あたり累積出産率    PGT-A群        対照群

37歳以下        49.4%(78/158)  69,1%(114/165)

38歳以上        37.8%(54/142)  37.3%(50/135)

 

移植あたり出産率      PGT-A群        対照群

37歳以下        45.9%(78/170)  45.3%(115/254)

38歳以上        62.1%(54/87)   31.7%(51/161)

 

なお、移植できなかった方が、PGT-A群で25.3%(76名)、対照群で2.3%(7名)おられました。2回以上の流産経験のある方が、PGT-A群で23.7%(71名)、対照群で10.7%(32名)おられました。

 

解説:PGT-Aをどのような方に実施すべきかについては、定まった決まりはありません。本論文は、PGT-Aでメリットがある方は38歳以上の方であることを示しています。しかし、後方視的な症例対照研究であること、PGT-A群には流産を繰り返している方が多く含まれることなど、いくつかの問題がありますので、結論を導くことはできません。今後の研究の進展を待つ必要があります。

 

下記の記事を参照してください。

2019.1.29「染色体一部モザイク(segmental mosaic)の取り扱い

2018.8.19「☆PGT-A:賛成派 vs. 反対派

2018.7.17「PGS(PGT-A)の精度は?

2018.6.22「☆モザイク胚や異常胚の移植について

2018.6.10「☆モザイク胚の淘汰:マウスモデル

2018.6.3「モザイク胚の特徴は?

2018.5.31「Q&A1845 PGS異常胚の出産

2018.4.6「☆PGSの真価は?

2018.4.5「☆PGSについて:ASRM公式見解

2018.3.22「Q&A1772 モザイク胚について2

2018.1.29「☆モザイク胚を移植したらどうなるか?

2017.10.31「Q&A1627 ☆モザイク胚について

2017.1.24「☆ASRM:PGS特集 その1 モザイクの取り扱い