Q&A2113 油性造影剤による影響は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2018.12.4「Q&A2032 甲状腺機能低下症で油性造影剤は?」の記事について、日本でのデータは公開されているのでしょうか。日本では長年、子宮卵管造影(HSG)に油性造影剤を使っているのでデータは揃っているのではないかと、油性造影剤は保険で使えるので、そう考えました。

 

A 調べてみましたが、日本でのデータは少数例の報告にすぎません(全国データはありません)。検索では下記の論文がヒットしました。

 

Horm Res Paediatr 2015; 84: 370(日本)doi: 10.1159/000439381

要約:油性造影剤によるHSG直後に妊娠した赤ちゃん212名の甲状腺機能を検査したところ、5名の赤ちゃんに甲状腺機能低下症が見つかりました。これらの赤ちゃんはHSGに使用した造影剤の量が有意に多くなっていました。

 

Gynecol Endocrinol 2017; 33: 682(日本)doi: 10.1080/09513590.2017.1307960

要約:164名の甲状腺機能が正常な女性に、油性造影剤と水溶性造影剤によるHSGを実施しました。油性造影剤使用の25%の女性に甲状腺機能低下が認められましたが、水溶性造影剤使用では10%未満でした。

 

妊娠率や出産率、お子さんの予後に関するデータは不十分と言えますが、油性造影剤により母体のみならずお子さんの甲状腺機能低下症が増加するようです。

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。