Q&A2112 夫が放射線従事後3年経ちますが影響は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 妻37歳、夫43歳、治療歴半年

初診時に精子運動率が0%で自然妊娠はまず無理と言われ、泌尿器科を紹介されました。紹介された泌尿器科で調べた時の運動率は20%程度でした。詳しく検査しましたが、治療できるような異常は見つからず、先生からは「規則正しい生活、バランスの良い食事、適度な運動を心がけて」と言われ、サプリメントを薦められました。夫は比較的健康的な生活をしています。タバコは5年ほど前にやめました。お酒は不妊治療を始めてからやめました。規則正しい生活は以前からできていますし、毎日水泳かランニングをしています。そういった理由から、あとできることとして、サプリメントを飲んでみては?と思ったんですが、夫は「意味が無い」と言います。彼が思う運動率が低い理由として「仕事柄、放射線を常に浴びてきたので精子がダメージを受けているんだと思う」とのこと。職場の同僚も不妊治療経験者は多く、授かった人も、圧倒的に女の子ばかり授かっているそうです(女の子が多いということは染色体がダメージを受けている証拠だ、とのこと)。そして「東北の震災の時に更に被爆したので、サプリメントを飲んだくらいで良くなることは無い」と断言します。

1 そもそも放射線と精子の運動率に関連はあるのでしょうか。
2 放射線に触れる仕事からは離れて3年経ちます。精子は卵子と違って在庫を消費しているわけではないならば、今後、良いと言われるものを摂 ることで運動率が改善される、という望みはないのでしょうか。

5日目胚盤胞を4個凍結していましたが、3回の移植は陰性で、先日最後の凍結胚を移植しましたが、おそらくダメだろうと思っています。凍結胚が無くなったので、また採卵から顕微授精をしようと思っています。今まで着床しなかった原因は私の年齢もあると思いますし、転院も考えていますが、夫の精子の運動率・状態が少しでも良くなるといいな、とも思います。

 

A 精子は毎日作っていますので、何らかのダメージになる要因があっても一次的なものです。

1 放射線被曝と精子の運動率に関連はあり得ます。

2 放射線被曝後3年経過していれば、その影響はまず消えているものと考えて良いでしょう。例えば、精子は熱に弱いので男性が高熱を出すとその後3ヶ月間の精子は壊滅的なダメージを受けますが、その後元に戻ります。

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。