PGT-Aの際の新しいバイオプシー方法 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、PGT-Aの際の新しいバイオプシー方法を示したビデオ論文です。

 

Fertil Steril 2020; 114: 438(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.05.035

要約:PGT-Aの際の新しいバイオプシー方法「機械的鈍的切除法(MBD法)」をご紹介します。day 3での透明帯処置を行わず、胚盤胞に到達した時点で、その形態により以下の方法でバイオプシーを行います(20μmバイオプシーピペット使用)。なお、MBD法は、細胞を吸引したピペットとホールディングピペットをこすり合せるようにして鈍的に切除します(日本ではフリック法と呼びます)。AS(artificial shrinkage)は、胚盤胞のTE細胞間にレーザーで穴を開け、胞胚腔の液体を外に出す方法であり、通常は胚盤胞凍結の際に行われます。

1 ハッチング(ー)→AS実施→細胞収縮あり→小さな穴を開け細胞を吸引→MBD法

2 ハッチング(ー)→AS実施→細胞収縮なし→小さな穴を開け培養液を注入→細胞を吸引→MBD法

3 ハッチング(+)ピーナツ様→AS実施し細胞収縮させる→反対側で小さな穴を開け細胞を吸引→MBD法

4 ハッチング(+)8の字様→そのまま細胞を吸引→MBD法

5 完全脱出胚盤胞→そのまま細胞を吸引→MBD法

なお、細胞吸引の場所はICMから離れた部分で実施します。本法はレーザー使用回数をかなり減らした方法であり、胚への熱損傷を最小限にすることができます。

https://youtu.be/yGNfiFY0wJE

 

解説:最近、day 3での透明帯処置を行わないバイオプシー法が試みられています。これらの新しい方法が本当に優れているか否か検証が必要ですが、生殖医療の技術は日々進歩していますので、最先端の技術を確認しながら、もし優れているならばいち早く取り入れるようにしたいと思います。

 

下記の記事を参照してください。

2020.7.3「☆PGT-A:バイオプシー方法による違い