世界の体外受精の成功率が低下しているのは何故? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、世界の体外受精の成功率が低下している事実とその理由の可能性を示唆しています。

 

Hum Reprod Open 2019; 3: hoz017(米国)doi: 10.1093/hropen/hoz017

要約:米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド新鮮胚移植の統計によると、出産率は2002年にピークを迎えたた後プラトーになり、2014年以降低下しています。この時期に新たに導入されたものには、胚盤胞培養、単一胚移植、タイムラプス、PGT-A、低刺激および自然周期採卵、全胚凍結などがあります。このうち一部あるいは全部の関与が考えられますが、人種間の違いをはじめ様々な要因を考慮すべきだと考えます。

 

解説:医学の進歩によるメリットと共に、デメリットも起こります。本論文は、世界の体外受精の成功率は低下している事実を示していますが、その理由としていくつかの可能性を示唆しています。2014年以降広まった技術のどれか(胚盤胞培養、単一胚移植、タイムラプス、PGT-A、低刺激および自然周期採卵、全胚凍結)にその理由の関与の可能性があるものと考えます。しかし、本論文では新鮮胚移植のみを対象にしていますので、凍結の部分は除外されます。現段階では何とも言えませんが、新しい技術の全てが妊娠率増加に貢献するわけではないことを示しています。

 

時々、「できることは全てやってください」とおっしゃる方がおりますが、実施することによりマイナスになる場合がありますので、必要なものだけ取捨選択して実施するのが良いでしょう。