本論文は、刺激周期も自然周期も正常胚率は同じであることを示しています。
Fertil Steril 2019; 112: 670(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.05.039.
Fertil Steril 2019; 112: 644(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.06.032
要約:2013〜2015年に自然周期採卵を実施した369名(平均年齢36.9歳)を対象に、過去に刺激周期で採卵した2846名(平均年齢36.1歳)との比較を行いました。結果は下記の通り、1回の採卵あたりの採卵数、胚盤胞数、正常胚数は刺激周期で優位に高くなっていましたが、刺激周期と自然周期で正常胚率と着床率に有意差を認めませんでした。
採卵1回 自然周期 刺激周期
採卵数 0.9個 14.7個
胚盤胞数 0.4個 4.8個
正常胚数 0.2個 3.0個
異常胚率 43.5% 36.7%
着床率 60.0% 63.8%
解説:マウスでは刺激すると異常胚が増加するという報告があり、当初ヒトでも同様ではないかとされていましたが、最近のヒトの報告では否定的になっています。本論文はこのような背景の元に行われた研究であり、刺激周期も自然周期も正常胚率は同じであることを示しています。刺激周期では当然多くの卵子が回収できますので、正常胚が見つかる確率も高くなり、結果的に時間短縮に繋がります(採卵1回で15倍=3.0/0.2正常胚が見つかります)。刺激すると卵子の質が悪くなるとおっしゃる医師がおられますが、医学的には根拠がないものですのでご注意ください。
コメントでは、ランダム化試験でないこと、トリガーにhCGを用いていること、PGT-Aが院内検査であることなどを指摘していますが、重要な知見であると結んでいます。
下記の記事を参照してください。
2019.9.20「嬉しい報告:高刺激で正常胚」
2019.1.10「☆☆一度に多くの卵子を採卵するメリット:その2」
2019.8.29「正常胚率はトリガーの種類で変わらない」