☆☆一度に多くの卵子を採卵するメリット:その2 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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「刺激すると悪い卵子」で「自然だと良い卵子」という話に明確な根拠はありません。本論文は、刺激周期で取れた卵子の数による正常胚数を検討したもので、一度に多くの卵子を採卵するメリットを示しています。刺激しても卵子の質は低下しませんので、ご安心ください。

 

Hum Reprod 2018; 34: 79(オーストラリア)

要約:2011〜2016年に採卵し、day 3胚のPGT-A検査(aCGH)を実施した724周期を対象に、採卵数と正常胚数の関係を後方視的に解析しました。正常胚数は、採卵数増加と有意な正の相関(+0.40)を示し、年齢と有意な負の相関(-0.06)を示しましました。その他のパラメータとの関連は認めませんでした。

 

解説:これまでにも「何個採卵するのが良いか」について妊娠率と出産率についての検討が報告されていますが、本論文は正常胚数での初めての報告です。重要なポイントは、正常胚数は採卵数の増加に伴い増加し続けることです。この事実は「沢山採れると卵子の質が悪くなる」という考えを否定します。刺激しても卵子の質は低下しませんので、ご安心ください。刺激周期の正当性を明らかに示した重要な論文です。

 

下記の記事を参照してください。

2018.10.28「☆一度に多くの卵子を採卵するメリット」14,469名での検討

 凍結胚を含めた累積出産率は、採卵数の増加に伴い増加(25個以上採卵で70%)

 新鮮胚移植のみでは、採卵数7個まで増加し、7〜20個がプラトーで、20個以上では低下

2015.1.26「何個採卵したらよい?」7697名での検討

 累積妊娠率と累積出産率は、採卵数の増加に伴い増加(1個採卵で10.2%と9.2%、16個以上採卵で37.7%と31.3%)

2013.11.23「☆何個採卵したらよいか?」2455名での検討

 新鮮胚移植の場合には、6~15個で出産率が最大(41.1%)

 凍結融解胚移植を含めた累積生産率は、採卵数が多いほど高くなり、16個以上で最大(67.1%)

 0~5個の時が最も出産率が低い