「刺激すると悪い卵子」で「自然だと良い卵子」という話に明確な根拠はありません。本論文は、刺激周期で取れた卵子の数による妊娠率を検討したもので、一度に多くの卵子を採卵するメリットを示しています。刺激しても卵子の質は低下しませんので、ご安心ください。
Fertil Steril 2018; 110: 661(ベルギー、スペイン)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.04.039
Fertil Steril 2018; 110: 632(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.05.030
要約:2009〜2014年に欧州15施設で初回採卵を行った方14,469名(18〜45歳、アンタゴニスト法、刺激周期)を対象に、凍結胚を含め全ての胚を使い切るまでか出産するまで、少なくとも2年間以上経過観察し、後方視的に解析しました。凍結胚を含めた累積出産率は、採卵数の増加に伴い増加(25個以上採卵で70%)し、この伸びはプラトーにならず増加し続けました。新鮮胚移植のみに絞ってみると、採卵数7個まで増加し、7〜20個がプラトーで、20個以上では低下しました。これは、採卵数20個以上の方は全胚凍結になるためです。
解説:これまでにも「何個採卵するのが良いか」について同様な検討が報告されていますが、本論文が最多数での検討です。重要なポイントは、累積出産率は採卵数の増加に伴い増加し続けることです。この事実は「沢山採れると卵子の質が悪くなる」という考えを否定します。刺激しても卵子の質は低下しませんので、ご安心ください。刺激周期の正当性を明らかに示した重要な論文です。勿論、本論文内でもコメントでも、OHSSリスクを考慮することとの但し書きを設けています。
下記の記事を参照してください。
2015.1.26「何個採卵したらよい?」7697名での検討
累積妊娠率と累積出産率は、採卵数の増加に伴い増加(1個採卵で10.2%と9.2%、16個以上採卵で37.7%と31.3%)
2013.11.23「☆何個採卵したらよいか?」2455名での検討
新鮮胚移植の場合には、6~15個で出産率が最大(41.1%)
凍結融解胚移植を含めた累積生産率は、採卵数が多いほど高くなり、16個以上で最大(67.1%)
0~5個の時が最も出産率が低い