何個採卵したらよい? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

2013.11.23「☆何個採卵したらよいか?」では、女性が35歳未満の場合、新鮮胚移植では6~15個、融解胚移植では16個以上で生産率が最大になることをご紹介しました。本論文は、移植が可能なら新鮮胚移植でも16個以上、融解胚移植でも16個以上で、上限はないことを示しています。

Hum Reprod 2015; 30: 81(オーストリア)
要約:2010~2012年新鮮胚移植を行った7697名(45歳未満)の方の採卵数による妊娠率、生産率の違いを後方視的に検討しました。臨床妊娠率と生産率は、採卵数の増加に伴い増加し、1個採卵の場合の10.2%と9.2%に対し、16個以上採卵の場合に37.7%と31.3%でした。胚凍結率は、採卵数が4個未満で20%以下であるのに対し、16個以上で70%以上となりました。16個以上採卵の場合には、未熟率が若干増加し(18%→22%)、OHSSリスクのため新鮮胚移植のキャンセル率が増加します(0%→3%)。しかし、多数の胚が凍結できるため、多くの採卵ができた場合は、1回の採卵で妊娠できるチャンスが採卵数に比例して増大しました。

解説:凍結技術が進歩した現在、日本では全胚凍結をすることが多いですが、外国では今でも新鮮胚移植をまず実施し、余剰胚を凍結保存する方法が行われています。新鮮胚移植の場合には、採卵数が増加すると未熟率とOHSSリスクから妊娠率が低下するとされていました。そのため至適採卵数は、13個、15~20個、6~15個などとの報告があります。しかし、これらの報告は旧式の刺激法によるものでした(ロング法)。本論文は、現代の刺激法での至適採卵数を検討したものです。

沢山採れた方が、良い胚ができる確率が高くなり、妊娠までの時間が最短になります。したがって、私は、刺激周期が可能な方には刺激周期をお勧めしています。刺激してもしなくても同じなのであれば、刺激はしません。