☆何個採卵したらよいか? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

体外受精では、何個採卵したらよいのでしょう。本論文は、女性が35歳未満の場合、新鮮胚移植では6~15個、融解胚移植では16個以上で生産率が最大になることを示しています。

Hum Reprod 2013; 28: 2728(中国)
要約:2007~2011年に初回体外受精を実施した方2455名(18~34歳、平均BMI 22、long法、規則的な生理周期)を、採卵数別に4群に分け(1~5、6~10、11~15、16~)、生産率を後方視的に比較しました。新鮮胚移植の場合には、6~15個で生産率が最大(41.1%)となりました。16個以上ではOHSSリスクのため、新鮮胚移植をキャンセルする場合が多いため生産率が低下します。また、凍結融解胚移植を含めた累積生産率は、採卵数が多いほど高くなり、16個以上で最大(67.1%)になりました。いずれの場合も、0~5個の時が最も生産率が低くなっています。なお、流産率は各群で有意差を認めませんでした。

解説:新鮮胚移植の場合の最適採卵数は、10~15個、MII 8個という報告があります。しかし、凍結技術が進歩した近年では、むしろ凍結融解胚移植がメインであり、1回の採卵での累積妊娠率や累積生産率が重要となります。これまでは新鮮胚移植に関する報告しかありませんでしたので、本論文は1回の採卵での累積生産率を示した最初の報告となります。また、卵巣刺激は胎児の染色体異常を増加させないと報告されていますので、最小の採卵回数で最大の妊娠のチャンスを得るための戦略として重要なデータといえます。