Q&A2069 外国産の牛肉だけでなく、日本産のお肉にもエストロゲン? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2013.2.13「☆女性ホルモンのサプリは本当に健康によいか:日本編」、2013.8.27「☆乳製品は精子に悪い??」、2013.9.20「Q&A81 牛乳や乳製品の影響は?」の記事を読み、食品からエストロゲンを過剰摂取しないよう気を付けています。

最近、健康に関する本をいくつか読み、「アメリカ産牛肉にはエストロゲンを含むホルモン剤が投与されている」と知りました。気になってインターネット上で調べてみたところ、下記の研究を見つけました。

 

科研費報告書:「ホルモン剤使用食肉の摂取とヒトの組織中エストロゲン蓄積および発癌との関連性の究明」

抄録:食肉中のエストロゲン濃度について、日本産とフィリピン産、アメリカ産の牛肉、鶏肉を対象として国別に比較を行った。エストラジオール濃度、エストロン濃度ともに牛肉ではアメリカ産、フィリピン産、日本産の順に高濃度で、鶏肉ではアメリカ産、日本産、フィリピン産の順に最も高濃度だった。フィリピン産牛肉の脂肪部位のエスラジオール濃度は日本産よりも8倍高濃度で、日本産鶏肉の脂肪部位のエストロン濃度はフィリピン産の鶏肉よりも12倍高濃度だった。これらの違いは外的に投与されたホルモン剤の残留によると考えられた。ヒトの脂肪組織中エストロゲン濃度の比較は日本とフィリピンの2カ国で行った。閉経後女性の皮下脂肪中のエストロン濃度、エストラジオール濃度は、フィリピン人女性(n=6)が日本人女性(n=15)よりも高濃度であった。食事頻度調査においては、日本、フィリピンの2国間で食肉摂取の違いが見られた。このヒトの皮下脂肪中エストロゲン濃度の違いは、食肉中エストロゲン濃度、食事頻度調査のみからは説明が困難で、症例数が少ないためBMIの違いを補正できないことに起因する可能性を否定できなかった。本研究では、ホルモン剤使用食肉の摂取とヒト組織中エストロゲン蓄積との関連、ホルモン依存性癌の発生率の関連について、結論を出すことはできなかった。今後、ヒトの検体数を増やして再度検討を行う必要がある。

 

外国産の牛肉だけ気を付ければいいと思っていましたが、日本の鶏肉にもエストロゲンが含まれており驚きました。大豆食品、乳製品だけでなく、牛肉や鶏肉も食べ過ぎない方がよいのでしょうか。

 

A アメリカのみならず先進国では同じような状況ではないかと推察します。だからこそ、注意が必要なのだと思います。エストロゲン含有の餌により、高く売れるお肉が出来るならば、皆そうするに違いないからです。しかし、国や第三者機関がエストロゲン含有量を調査し、管理するような体制が出来れば、逆にそのようなお肉売れないお肉になります。それまではどのお肉がどうなのかは全くわかりませんので、控えることは懸命なことだと思います。

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。