正常胚率はトリガーの種類で変わらない | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、正常胚率はトリガーの種類で変わらないことを示しています。

 

Fertil Steril 2019; 112: 258(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.03.040

要約:2013〜2018年に採卵およびPGT-Aを実施するした366名、539周期を対象に、GnRHaトリガーとhCGトリガーによる正常胚率の違いがないかどうかについて後方視的に検討しました。なお、全てアンタゴニスト法で、hMG製剤とFSH製剤を用い、17〜18mmでトリガーを実施しました。hCGトリガー群と比べGnRHaトリガー群では、年齢が有意に若く、BMIが有意に低く、AMHが有意に高く、採卵数が有意に多く、PGT-A実施数が有意に高く、PGT-A実施あたりの正常胚率(30.3% vs. 37.8%)が有意に高くなっていました。しかし、年齢その他交絡因子を補正すると、両群間の有意差は消失しました。一方、採卵あたりの正常胚率は、交絡因子の補正にかかわらず有意差を認めませんでした。参考までに、採卵あたりの正常胚率は、35歳未満で15.4〜16.2%、41歳以上で3.0〜4.9%でした。

 

解説:ASRM(米国生殖医学会)が発表したOHSSの予防策と治療についてのガイドラインによると、

1 トリガーにGnRHaを用いるとOHSSのリスク低下につながる(A)

2 新鮮胚移植では、トリガーにGnRHaを用いると生産率が低下する(A)

ことが強いエビデンスを持って証明されています。しかし、PGT-A実施に際してのトリガーの優劣についてのデータはありませんでした。本論文はこのような背景の元に行われた研究であり、正常胚率はhCGトリガーとGnRHaトリガーで変わらないことを示しています。従って、OHSSリスクのある場合には、GnRHaトリガーが推奨されるとしています。

 

下記の記事を参照してください。

2016.12.11「☆OHSSの予防策と治療:ASRMガイドライン

2014.1.11「☆トリガーにはhCGとGnRHaのどちらがよい?