本論文は、モザイク胚移植1000個の妊娠成績を様々な条件で検討したものです。
Fertil Steril 2021; 115: 1212(米国) doi:https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2020.11.041
Fertil Steril 2021; 115: 1160(米国)コメント DOI:https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2021.02.044
要約:米国、台湾、イタリアの6施設でPGT-Aを実施し移植したモザイク胚1,000個を対象に、同時期に移植した正常胚5,561個と比べ、妊娠成績を後方視野的に検討しました。サブグループ解析では、モザイク胚を部分モザイクと全体に及ぶもの、モザイクの程度が50%未満と50%以上、モザイク染色体の本数を用いました。結果は下記の通り(有意差ありを赤字表示)。
正常胚 全モザイク胚 モザイク胚(染色体全体に及ぶもの)
着床率 57.2% 46.5% 41.8%
出産+妊娠継続率 52.3% 37.0% 31.3%
流産率 8.6% 20.4% 25.0%
モザイク胚(染色体全体に及ぶもの) モザイク胚(部分モザイク)
50%未満 50%以上 50%未満 50%以上
着床率 44.5% 30.4% 50.9% 52.1%
出産+妊娠継続率 36.1% 19.3.% 43.9% 41.5.%
正常胚 部分モザイク胚 モザイク1本 モザイク2本 モザイク3本
着床率 57.2% 51.6% 46.4% 43.2% 30.4%
出産+妊娠継続率 52.3% 43.1% 34.8% 34.4% 20.8%
以上から、移植胚の優先順位は、正常胚>部分モザイク胚(モザイクの程度は問わない)>モザイク1本(50%未満)>モザイク2本(50%未満)>モザイク3本以上(50%未満)>モザイク1本(50%以上)>モザイク2本(50%以上)>モザイク3本以上(50%以上)となります。
解説:PGT-Aが世界中で実施されるようになりましたが、依然としてモザイク胚の取り扱いについての一致した見解はありません。本論文は、モザイク胚移植1000個の妊娠成績を様々な条件で検討したものであり、過去最大規模での検討です。移植胚の優先順位は、実際の臨床で大変参考になるでしょう。
コメントでは、出産後の赤ちゃんの詳細な分析がないことを指摘しています。
下記の記事を参照してください。
2020.5.18「モザイク胚移植でモザイク児が誕生:赤ちゃんは異常なし」
2019.3.12「モザイク胚100周期の移植経験」
2019.1.29「染色体一部モザイク(segmental mosaic)の取り扱い」
2018.6.22「☆モザイク胚や異常胚の移植について」
2018.6.10「☆モザイク胚の淘汰:マウスモデル」
2018.6.3「モザイク胚の特徴は?」
2018.3.22「Q&A1772 モザイク胚について2」
2018.1.29「☆モザイク胚を移植したらどうなるか?」
2017.10.31「Q&A1627 ☆モザイク胚について」
2017.1.24「☆ASRM:PGS特集 その1 モザイクの取り扱い」