5年前から続く歯の知覚過敏と整体治療
2診目で2/10に軽減、6診目でほぼ完治した症例の解説です…
患者Yさん=33才-男性・会社員の症例
① Yさんの病歴・・・
患者Yさんは、鼻詰まり、後鼻漏、尿漏れ、耳管開放症、顎関節症、下痢など、多彩な愁訴がありましたが、歯の知覚過敏もありましたので、併せて整体治療することになりました。
【Yさんは遠方にお住いのため、一度の来院で2枠分の施術時間を設けたり、あるいは一度の来院で、午前診は二枠分、午後診で二枠分の施術時間を設けて(合計4枠分)治療したりしました。またYさんは会社員であるので、会社に1か月の休暇を取られ、その間で治療が完了する集中治療計画を立てて施術しました。その際、施術による副作用に細心の注意を払いながら、施術を進めていきました。】

② Yさんの診察
【知覚過敏および口-顎関節に関する所見】
・最初に歯の知覚過敏が生じたのは今から5年ほど前だそうです。その部位は上下左右の小臼歯付近だそうです。特に、冷たい飲食物やドレッシングなどの酸っぱい飲食物で知覚が過敏になるそうです。今までいろいろな治療を受けたそうですがどれも改善するには至らず、知覚過敏の原因はよく分かっていないそうです。
・虫歯や歯肉炎(歯周病)は無いそうですが、歯をかみしめる癖、歯ぎしりがひどいそうです。歯科医より歯のすり減りを指摘されていて、それは左右ともあり、5年前からマウスピースの処方を受けているそうですが、よくマウスピースをつぶしてしまうそうです。
・10年以上前から左の顎関節症があり、顎関節付近の軽度の疼痛と、顎の開閉時のクリック音、および口の開閉時の非対称(右顎が先に動く)があるそうです。また左の奥歯のかみ合わせが悪く、両方の歯をかみ合わせたとき、左の上下の奥歯の間が1~2mmほど開いているそうです。
・高校生の時に3年間ほど歯科矯正をしていたそうです。その際に左右上下の奥歯(4本)を抜歯しているそうです。
・下顎を前方に突き出す検査ではほぼ正常でしたが、下顎の左右側方への運動については、左側方への運動は、かなり制限されていました。
【その他の所見】
・近視ですが、眼圧などは正常で、今まで眼科医から異常を指摘されたことは無いそうです。
・5年ほど前に右の耳で自声強聴が出たので近医を受診すると「耳管開放症」と診断を受けたそうです。自声強聴は毎日出るのではなく、数日に一度の割合で出るそうです。ただ運動後やエレベーターの昇降時には生じやすいそうです。左耳で自声強聴が生じることは無いそうです。耳鳴りや難聴は無いそうです。
・幼稚園の頃に右耳が痛くなったので近位を受診すると、中耳炎と診断されたことがあるそうです。それ以降、時折右耳の奥にボコボコとした違和感を感じる時がたまにあったそうです。
・鼻がつまるのは右鼻だけで、左鼻はあまりつまらないそうです。鼻閉はあっても鼻水はほぼ出ないそうです。ただ後鼻漏はあるそうですが、サラサラとした液体調でほぼ無色透明だそうです。これらの症状はどちらも10年ほど前から毎日のように続いているそうです。耳鼻科の担当医から「治すには手術しかありません」と言われているそうです。
・今までの検査の中で、花粉症などのアレルギーや鼻腔、副鼻腔、上咽頭などに炎症所見が確認されたことは無かったそうです。
・いびきがひどく、両親や奥さんからよく指摘されるそうです。睡眠時に無呼吸があるかどうかは不明だそうです。
・発声や構語の異常は無いそうですが、嚥下時にむせる事(誤嚥)は度々あるそうです。鼻腔への逆流は無いそうです。
・カーテンサインは陰性でした。
・頭顔面の視診上、気管は正中にあり、甲状腺の腫脹、委縮はありませんでした。鼻梁は「し」状に右側凸で軽度彎曲していました。左右の上・下眼瞼に、かなり濃い「くま」があり、顔面全体がくすんでいました。
・残業があると頭が全体的に痛くなることが多いそうです。
・左の後頚部から左肩甲骨上角にかけて、しびれに似た疼痛が常時あるそうです。
・血圧は正常で、血液検査で異常を指摘されたことは無いそうです。
・頚胸部聴診上、血管雑音は無く、心音に特段の所見はありませんでした。
・腹部聴診上、血管雑音は無く、グル音はやや弱めで聴取されました。
・頸頬部触診上、第5,6棘突起(C5,6)の押圧で著明な圧痛がありました(特にC6)。左右の下顎切痕部や頬骨弓下方(側頭下窩)にも著明な緊張と圧痛がありました。左右の眼窩下孔やオトガイ孔に圧痛・放散痛はありませんでした。しかし眼窩下孔の下部とオトガイ孔の上部に軽度のしこり(硬結部)と圧痛がありました。頸部の筋肉群は、前後左右の筋肉全般が緊張し、圧痛がありました。特に右側の頸椎(C1~C7)横突起前後には数mm大のしこりを伴う緊張がありました。また同部の押圧により、右耳の奥のほうで「パコパコ」といった振動(?)が誘発したそうです。
・腹部触診上、回盲部で著明な緊張と圧痛がありました。特に右上前腸骨棘(ASIS)から右鼠経靭帯~恥骨結合にかけて、数mm大のしこりと緊張および強い圧痛がありました。特に恥骨の直上部位は極めて硬く、かつ極めて強い圧痛がありました。心窩部や左季肋部(十二指腸空腸曲)でも緊張と圧痛がありました。打診上、臍より下方は全般的に濁音で、かつ触診的にも下腹部全般的にかなり硬めの粘土状の感触がありました。
・Yさんの身長は170cmで、体重は55kgだそうです。
➂ 治療目標と整体治療
⑴ 上および下歯槽神経の走行部位にあるしこり(硬結部)を解放し、当該神経の易刺激性を解除する
・上歯槽神経解放テクニック
・翼口蓋神経節解放テクニック
・下歯槽神経解放テクニック
・耳神経節解放テクニック

④ 経過と結果・・・6診目でほぼ解消 !!
【Yさんは遠方にお住いであり、また数多くの愁訴がある方でしたので、今回の来院でそれらを一括して整体治療を受けたいとの事でした。その為に、会社に一か月間の休暇届けを出され、その間にまとめて整体治療することになりました。この様な状況ですので、下記の経過にはそれらの愁訴の経過がランダムに記されていて、本件(歯の知覚過敏)については分かりにくくなっているかと思います。そこで本件については青字で記しています。】
・初診治療後、
「施術の途中から右鼻が通ってきて、今も鼻の通りは良いです」と不思議そうに仰っていました。また左側方への下顎の移動は、かなり改善されていました。
・2診目来院時、
「鼻が通っていたのは(治療終了後)3時間くらいでした。それからはいつもと同じく鼻がつまりました。その他の症状も元に戻りました。ただ歯の知覚過敏についてはかなり楽で、普段の2/10程度が今でも続いています」と仰っていました。また「治療後すぐに体がだるく、眠気も強くなったので、ホテルに戻ってからすぐに眠りました。それと頻尿気味になりました」とも仰っていました。
・6診目来院時、
「後鼻漏や自声強聴はありませんでしたが、鼻閉はつまったり通ったりの繰り返しでした。ただ通っているとしても6~7分くらいの間でした。歯の知覚過敏は、(初診以来)ありませんでした。」と仰っていました。また「下痢便はなくなりましたが、やはりまだ軟便ですね」とも仰っていました。
午前診後の休憩後、
「さっき食事をしている時に気が付いたのですが、左の歯の”かみ合わせ”が良くなりました! 十年以上もかみ合わせが悪かったのに、急に良くなってビックリしています」と仰っていました。また「”知覚過敏がどこまで良くなっているかな~”、と思い、思い切って氷で満たしたお水を飲んでみましたが、ほんの少し違和感がある程度で無理なく飲めました。つい先日までは、こんな事をすると飛び上がるほど歯に響いていましたが、今は全然ましです」とも仰っていました。
・8診目来院時、
「後鼻漏や自声強聴、歯の知覚過敏は無かったですが、鼻つまりはあり、それが強くなったり弱くなったりしました。それとこれは関係ないかもしれませんが、昨晩の就寝中にオデコに汗をいっぱいかいていました。こんな事は今までに記憶がなかったですが、これも治療と何か関係があるのでしょうか」と仰っていました。お通じについては、まだ軟便が続いているそうです。しかし「そう言えば、下腹部痛は気にしなくなりましたね」とも仰っていました。
・10診目来院時、
「鼻つまりは今週もやはりありましたが、一時止まっていた後鼻漏や自声強聴も今週は時折ありました。それと前回の治療で良くなっていた歯の開き具合とかみ合わせが、今週は元に戻りました。でも歯の知覚過敏は無かったです。」と仰っていました。尿漏れについてお聞きすると「そういえば、今週はあまり気にすることは無かったですね。いつもの半分くらいかもしれません。」とも仰っていました。お通じについてはやはり軟便ですが、下腹部痛はここのところ感じていないそうです。
施術後、「顔面の治療中、右耳の奥のほうで”パコパコ”とした音が鳴っていました。今は、さっきまであった自声強聴が無くなっています。それと左歯のかみ合わせも良くなって、さっきより大きく開く気がします」と仰っていました。鏡で口の開閉を確認していただくと、治療前は左右の顎関節が非対称的に開閉していましたが、治療後は対照的にバランスよく開閉していました。
・12診目来院時、
「後鼻漏や自声強聴、歯の知覚過敏は無かったですが、鼻つまりはありました。尿漏れについても、漏れそうになった感じはありましたが、結局一度も漏れずに済みました。それと、今日はまだ一度しか排便はありませんが、軟便でなく比較的硬い便が久しぶりに出ました」とも仰っていました。
・14診目来院時、
「後鼻漏、自声強聴、歯の知覚過敏は非常に調子よくなり、ほとんど無かったです。左顎の痛みやクリック音もほとんど感じませんでしたし、かみ合わせも良好です。ただ鼻つまりだけはありました。」と仰っていました。また「便は硬めの普通の便で、最近は緩い便が出なくなってきています。そう言えば、尿漏れも一度も無かったですね」とも仰っていました。施術後、「今は鼻がスッキリと通っています」と仰っていました。
この段階で、鼻づまりに関しては少し不充分でしたが、その他の愁訴(歯の知覚過敏、耳管開放症、尿漏れ、下痢、顎関節症)については日常生活的に問題の無いレベルにまで大幅に改善していました。またYさんの休暇期間がほぼ満了に近かったので、今回の集中治療は一応の終了としました。

⑤ 今回の症例の概説、、、
Yさんの特徴・・・頭顔面の愁訴が多い !!
本件=歯の知覚過敏=もその一つ、、、
・本件は歯の知覚過敏についてですが、本件も含めてYさんの特徴は、この歯の知覚過敏以外にも「鼻詰まり、後鼻漏、耳管開放症、顎関節症」など、頭顔面の愁訴が非常に多い事だと思います。左記に加えて、他にも頭顔面の愁訴として「残業時の頭痛」や「就寝時のいびき」などもあるので(☚両者は治療の依頼を受けていないので、当院では具体的な治療はしていない)、その事は強く言えると思います。
頭顔面の愁訴が多い理由については不明、、、
ただ、過去の頭顔面の外傷や既往歴があったのでは??、、、それが遠因か ?!
・頭顔面の愁訴が多い事に関して、Yさんに「頭顔面の外傷やその他の既往歴の有無など、何か思い当たることはありませんか?」といった趣旨の問診を何度もし、ご両親にも訪ねていただくなどしたのですが、結局は分からずじまいでした。ただ当院の予想としては、遺伝的な事も含めて幼少時から何らかのアクシデントが頭顔面に働いていたのでは、、、それが数々の頭顔面の愁訴の遠因になっているのでは、その様に感じました。
知覚過敏部位(上下左右の小臼歯付近)を支配する上・下歯槽神経!!!
この神経が知覚過敏に関係する可能性・・・
・話を歯の知覚過敏に戻すと、上記の様に根本的な原因は不明でしたが、最終的には歯の知覚を支配する知覚神経(上・下歯槽神経)の閾値が下がり、当該神経の活動電位が発生しやすい状況になっているからこそ、通常では反応しない微小な刺激に対しても活動電位が発生し、それが知覚過敏として現れているのでは、と考えました。
触診検査・・・
上・下歯槽神経の走行経路にしこり(硬結部)がある !!
・そこで、この事を確認するために下記の様な触診検査を施術してみました。
『頸頬部触診上、(前略) 左右の下顎切痕部や頬骨弓下方(側頭下窩)にも著明な緊張と圧痛がありました。左右の眼窩下孔やオトガイ孔に圧痛・放散痛はありませんでした。しかし眼窩下孔の下部とオトガイ孔の上部に軽度のしこり(硬結部)と圧痛がありました。(後略)』
・上記の中で重要なヒントとなる所見は、Yさんの知覚過敏部位(上下左右の小臼歯付近)を支配する上・下歯槽神経の走行経路(☚眼窩下孔の下部とオトガイ孔の上部)にしこり(硬結部)と圧痛がある、、、といった所見だと思います。なぜ、これらの部位にしこり(硬結部)が生じたのか、またこのしこりとは何なのかについては不明ですが、このしこり(硬結部)が当該神経を常時刺激している可能性があり、その事が当該神経の閾値を下げて知覚過敏状態にしている可能性が推定され⑴ました。
上歯槽神経と下歯槽神経
歯の知覚過敏の整体治療方針、、、
上・下歯槽神経の走行経路にしこり(硬結部)を取り除け!!
・以上の事から、「➂ 治療目標と整体治療」に掲げる治療目標、
⑴ 上および下歯槽神経の走行部位にあるしこり(硬結部)を解放し、当該神経の易刺激性を解除する
を設定し、それに対応する整体テクニックである、
・上歯槽神経解放テクニック
・翼口蓋神経節解放テクニック
・下歯槽神経解放テクニック
・耳神経節解放テクニック
を施術することにしました。
整体治療の結果、、、Yさん自ら”氷水を飲む実験”を実施 !!!
・結果は良好で、2診目来院時には2/10にまで歯の知覚過敏は軽減し、それ以降ほぼ0/10といった状態が続いていました。そして6診目にはYさん自身が知覚過敏の状態を確認するために、以下の様な、それまでYさんにとっては絶対にタブーであった”氷水を飲む実験"をされたことです。
「”知覚過敏がどこまで良くなっているかな~”、と思い、思い切って氷で満たしたお水を飲んでみましたが、ほんの少し違和感がある程度で無理なく飲めました。つい先日までは、こんな事をすると飛び上がるほど歯に響いていましたが、今は全然ましです」
しこり(硬結部)について・・・
やはり、過去の頭顔面の外傷や頭顔面臓器の既往症の後遺障害などが遠因か ?!
・このしこり(硬結部)とは何だったのか、、、との疑問については、結局はよく分かりませんでした。ただ推測できることは、Yさんの記憶にはありませんでしたが、過去の頭顔面の外傷や頭顔面臓器の既往症の後遺障害などが遠因となって炎症残渣や血腫が残存していたり、あるいは左記の結果癒着、浮腫などが当該部位に生じ、それらがしこり(硬結部)となっていたのでは、と考えました。
・そしてこの推測であれば、整体手技でそれらを除去することは可能であると考え、上記施術を実践したわけです。結果的には6診目で知覚過敏がほぼ解消するほどの著効を得ましたし、具体的に副作用も皆無でしたので、この仮説でおおむね妥当であったのでは、と思います。
・ところでYさんは、この知覚過敏以外にも別の愁訴についても整体治療する予定でしたので、この6診目で終わらず、最終的には14診まで施術しました。その後もずっと知覚過敏はほぼゼロの状態でしたので、知覚過敏についてはこの6診目で”ほぼ治療終了”といってもよかったと思います。
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