患者Aさん=39才-女性/主婦の症例
患者Aさんは、子供の頃(約30年前)から顔や首-肘などにアトピー性皮膚炎があったそうですが、大人になるころにはかなり改善していたそうです。しかし肘だけは治癒せず、今でも両肘の内側にはアトピーが残っていて常時痒みがあるそうです。顔にも一部残っているそうです。今まで、様々なアトピー治療をされてきましたが、この肘のアトピーには効力が無かったので、近年は放置状態だったそうです。
・血色は少し悪い印象でしたが、眼球結膜に黄染は無く、眼瞼結膜はやや薄いピンク色でした。食欲も普通で、微熱などの全身所見も無いそうです。
・両肘の内側には、アトピー性皮膚炎特有のザラザラとした発疹が広く広がっていて、乾燥している感がありました。顔面の両下顎角付近に少しだけ発疹がありましたが、ほとんど目立ちませんでした。
・頚部の筋肉群は左右前後とも全般的に緊張していて、特に鎖骨上-下窩の緊張-硬化が進んでいました。
・胸部聴診上、呼吸音や血管音・心音に異常はありませんでした。
・胸部打診上、清音が全般的に聴取出来ました。
・腹部聴診上、血管雑音-ハム音は無く、グル音はかなり弱く聴取出来ました。
・腹部触診上、平坦でしたが臍より下方全般(☚回腸)に緊張が広がっていて、「小腸平滑筋が凝り固まっている」印象がありました。腫瘤感、抵抗感はありませんでした。肝脾腫はありませんでした。
・排便は毎日あるそうですが、やや下痢便気味だそうです。
・アドソンテストが左右とも陽性でした。
⑴ 頸部交感神経幹の緊張を緩和し、肥満細胞の遊離を低減させる
⑵ 残留便の排泄を促進させ、バイエル板・小腸リンパ節の機能異常を回復させる
⑶ 皮膚のターンオーバを促進させて、皮膚バリア機能を回復させる
・頚部交感神経緩和テクニック
・消化管平滑筋テクニック
・鎖骨下動脈解放テクニック
・3回目来院時、
・4回目来院時、
・5回目来院時、
・6回目来院時、
・アトピー性皮膚炎などのⅠ型アレルギーは下記の三つの構成要件が必要です。
ⅰ アレルゲンの存在
ⅱ そのアレルゲンに対応する抗体(Ig-E)の過剰分泌
ⅲ 肥満細胞の組織への遊離
そこに、
ⅳ 皮膚のバリア機能の破綻
が加わって皮膚での炎症反応が持続-悪化する事で、さらにアトピー性皮膚炎は悪循環に陥っていきます。
・上記ⅰ~ⅲの内、どれか一つでも阻止-低減させる事が出来ればⅠ型アレルギーは発症しにくくなります。ⅰのアレルゲンをゼロにする事は現実的に難しいですし、我々治療家の仕事ではありません。従って我々はⅱかⅲを阻止できれば、その患者さんのアレルギー症状を治癒あるいは軽減する事が出来ます。ただし現実には、ⅳの「皮膚バリア機能の破綻」が存在-進行しているケースが大半ですので、このバリア機能の回復を積極的に進めていかないと、効果の発現が期待できなくなります。
・逆に言えば、Aさんはこの「ⅳ 皮膚のバリア機能の破綻」が改善しなかったから、肘アトピーが改善されず残存していたのかもしれません。ですから、最初に重点的に治療していったのが
⑶ 皮膚のターンオーバを促進させて、皮膚バリア機能を回復させる
・鎖骨下動脈解放テクニック
である事は、言うまでもありません。これによって皮膚のターンオーバが促進され、比較的早期にザラザラ感が減り「肘のしっとり感」が表われていたのかもしれません。
・次に、ⅱのアレルゲンに対応する抗体(Ig-E)を減少させる為に
⑵ 「残留便の排泄を促進させ、バイエル板・小腸リンパ節の機能異常を回復させる」
を治療目標とし、その為の最適の整体テクニック
・消化管平滑筋テクニック
を、施術しました(☚しかしこれが効果発現するには少し時間が必要です)。
⑴ 「頸部交感神経幹の緊張を緩和し、肥満細胞の遊離を低減させる」
・頚部交感神経緩和テクニック
に関しては、比較的短期間で目的を達成できることがしばしばあります。ですから今回のAさんの症例では、30年近く残存していた肘のアトピーがかなり短期間で改善しましたので、先述しました「皮膚のターンオーバーを促進させて、皮膚バリア機能を回復させる」の改善効果に、この「頚部交感神経緩和テクニック」による「肥満細胞の遊離の減少」が功を奏したのでは、と考えました(☚下記「注1)-肥満細胞とⅠ型アレルギー」参照)。
肥満細胞はその中に「ヒスタミン」などの炎症物質を含んでいる細胞です。主に血管内壁に付着していますが、神経的あるいはサイトカイン的な刺激で血管内皮から遊離して、皮膚の表皮-真皮、あるいは鼻粘膜などの各組織に浸入します。そこでアレルゲンと結合したIg-E抗体と反応すると先述のヒスタミンが分泌され、同部でアレルギー反応が誘発されます。従って、この肥満細胞を血管内から遊離せずに止めておくことが、アトピー性皮膚炎を抑止する方法の一になります。その整体的なテクニックが「頚部交感神経緩和テクニック」です。
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