風邪に罹患後「匂いが分からない」…
5年前からの嗅覚障害と整体治療
患者Aさん=41才-女性-主婦の症例
Aさんの症例解説を読まれる前に、、、
風邪などにより、鼻腔の上深部にある「嗅球(嗅細胞)」の一部が変性・壊死し嗅覚に障害が生じるケースがあります。Aさんも同様の機序だったと思われます。この様なケースでは、鼻腔上深部の血流を回復-増進して、少しでも「嗅球(嗅細胞)」を回復する事が、一番適切な治療法だと思います。
このAさんの症例では、鼻腔上深部の血流を回復-増進する整体治療法( 前/後篩骨動静脈解放テクニックなど)で、Aさんの嗅覚が改善した症例の解説です。
長文ですが、よろしくお読みください。
不明な点、ご質問等は当院お問い合わせHPかお電話 (06-6180-6880) にてご相談ください。
① Aさんの病歴・・・
患者Aさんは5年前に風邪に罹患し、一週間ほどで治癒したそうですが、その直後から「匂いをかいでも、何の匂いかが分かりにくい」といった嗅覚の障害に気づいたそうです。この件で担当医に改めて診て頂いても「特に、鼻に異常は無いです」と言われ、風邪薬以外の特段の治療は受けていなかったそうです。ところがその三年後(今から2年前)、新型コロナに感染し、今度は咽頭痛や咳などがかなりひどく、前回-3年前の風邪の時より重度の症状に見舞われたそうです。これも治癒したそうですが、治癒後さらに嗅覚障害は悪化したそうです。耳鼻科で再検査してもやはり異常無しとの事で、嗅覚異常についての治療は無かったそうです。仕方が無いので鍼灸や漢方など、幾つかの治療をされていましたが、全く効果は表れなかったそうです。このままでは、風邪をひくたびに嗅覚が悪化し続け、その内に全く匂いを嗅げなくなるのでは、と思い、今回の来院となりました。
② Aさんの問診と診察所見
・血液検査で異常は指摘されていないそうです。
・嗅覚の具体的な状況は、家族などの周囲の人がある匂いに気づいても、Aさんはほとんど匂わず、その匂いの発生源に鼻を数㎝まで近づけて、初めて匂いを感じるそうです。この様な事は、5年前に風邪をひいて嗅覚障害になるまで、一度も無く、むしろ嗅覚はいい方だったそうです。
・5年前の風邪の罹患後、あるいは2年前の新型コロナ罹患後、眉間の奥の方で疼痛or違和感が数週間ほど続いていたそうです。現在はかなりマシになっていますが、軽度の違和感は持続しているそうです。
・鼻水は出ないそうですが、鼻づまり感はあり、常時左右どちらかの鼻がつまっている感じがするそうです(完全閉塞ではない)。後鼻漏は無いそうです。
・味覚の異常は感じていないそうです。
・中耳炎、鼻炎/副鼻腔炎などの既往は無いそうです。ただ若い頃によく扁桃腺が腫れていたので、その除去手術を勧められていたそうですが、結局手術はしていないそうです。
・30代の頃から眼がまぶしくて、外出時などにサングラスをするようになっているそうです(特に自動車運転時には必須だそうです)。
・顔色全体がやや「くすみ」気味で、昔から「顔色が悪いね」と言われていたそうです。また左右の上下眼瞼は「くま」があり、かなり濃く見えました。「くま」は20代頃から気になっていたそうですが、最近さらに悪化傾向なので、この「くま」の件で美容クリニックを受診するかどうかを、検討中だったそうです。
・目ヤニ(眼脂)やドライアイは無く、花粉症も無いそうです。
・虫歯や歯周病は無いそうですが、口内炎は度々生じるそうです(下唇の裏に好発)。
・気道は正中にあり、甲状腺の腫脹/萎縮はありませんでした。
・20代から両手両足の冷え症が酷いそうです。
・月経周期は23~25日で、生理痛はほぼ無いそうです。但し、出産前までは生理痛は酷かったそうです。
・十年以上も自宅でスマホを使用して仕事をしているので、ほぼ一日中スマホを操作しているそうです。Aさん自身、「私はスマホ首だと思います」と仰っていました。
・頬部や頸部の筋肉群が著明に緊張していました。
・嗅覚テスト(片方の鼻口を指で押さえて臭い物質を嗅いでもらう)では、右側を「10」とした場合、左側は「6」程度しか臭わないそうです。またその際、臭い物質を曝露してから匂いを感じるまで、左右とも十秒以上かかりました。
➂ 治療目標と整体治療
⑴ 前・後篩骨動脈と蝶口蓋動脈の血液循環を促進し、損傷またはうっ血している可能性のある嗅神経、篩孔、あるいは上鼻甲介粘膜の修復を促進する
⑵ ネザールサイクル(自律神経機能)を回復し、鼻づまり(感)を解消する
・前/後篩骨動静脈解放テクニック
・蝶口蓋動静脈解放テクニック
・顎動脈解放テクニック
・静脈還流促進テクニック
・翼突筋静脈叢解放テクニック
・頸部交感神経幹解放テクニック
・翼口蓋神経節解放テクニック
④ 経過と結果・・・
・初診治療後、
治療前には「6」程度しか匂いにくかった左側の鼻が、初診治療直後には右側と同程度の「10」にまで回復していました。また、鼻の通りがよくなったとも仰っていました。
・2診目来院時、
前回治療後によく通っていた鼻は、一日しか持たなかったそうです。
・3診目来院時、
「(前回の治療後から)瞼がよく開くようになりました」と仰っていました。また羞明も気にならなくなっていたそうです。
・6診目来院時、
「鼻の通りもよく、臭いもしっかり匂うようになってきました(初診時に比べて6/10程度)。」と仰られていました。
・その後若干の不安定感はありましたが、次第に臭い感覚は安定化し、11診目来院時には、「先日(中学生の)娘と臭い感覚の利き比べをしましたが、ほとんど差が無いくらいにまで改善していました。」と仰っていました。
・12診目来院時、
嗅覚および鼻のとおりは安定していましたので、これで集中治療を終了する事にしました。
⑤ 今回の症例の概説、、、
◆ 嗅神経の大脳までのルート…
・嗅覚の大脳までのルートは、まず空気中の臭い物質を感受する「嗅細胞」から始まり、その軸索である「嗅神経」から「外側嗅条」を経て「扁桃体・鉤周辺皮質」に投射し、最終的に大脳-前頭葉の「眼窩面皮質」で匂いとして認識されます。
従ってこのルートの何れかに障害があると、嗅覚に異常をきたす事になります(☚細かくは、その他の大脳領域or内臓などの影響も考えられるが、ここでは割愛する)。
◆ 眉間の奥の痛み…嗅細胞が位置する部位
・そこで今回のAさんの「匂いが分からない」という嗅覚障害の原因部位を特定しなければならないのですが、複数の医療機関では原因不明との事なので、整体的な仮説で考えていかなければなりませんでした。そしてその突破口として最も有力な所見が、5年前に風邪に罹患直後から「匂いが分からない」症状が発生している事、そしてその風邪罹患後から「眉間の奥の方で疼痛or違和感が数週間ほど続き」、それが現在に至るまで軽度の違和感が残っている事、があります。
ここで重要な事は「眉間の奥」とは、先述の嗅細胞が位置している部位(☚篩骨篩板=鼻腔の最上部)付近に相当する事だと思います。
◆ 風邪ウイルスが嗅細胞を破壊したのか、、、
・以上の所見を勘案すると、Aさんが風邪に罹患時に、その炎症が鼻腔内から篩骨篩板を超えて、同板に位置する嗅細胞、あるいはその付属器官や関連組織に及び、その後遺障害が残存する結果、嗅覚の機能に異常をきたしているのでは、と仮説を立てました。
◆ 嗅神経付近の自然治癒力低下が起因している ?!
・おそらくAさんは、元々鼻腔上部の血液循環が減弱していて、同部の局所免疫力および細胞再生力が低下する事で、嗅細胞付近の自然治癒力が低下し、そのせいで後遺障害を残したのでは、と考えます。
それは頬部や頸部の筋肉群が著明に緊張していた事などから、その緊張により、嗅細胞付近を支配する前・後篩骨動脈や蝶口蓋動脈を絞扼し、循環不全が生じていたのでは、と推測します。
◆ ネザールサイクル機能(下段参照)の失調も原因の一つか、、、
・さらにもう一つの仮説として、ネザールサイクル機能に失調をきたし、鼻腔が軽度閉鎖状態(鼻閉)になり、その結果匂いを感じにくくなっているのでは、と考えました。
Aさんは羞明もありますが、ひょっとしたらこの羞明も自律神経失調的(☚瞳孔散大を支配する頸部交感神経節の失調?)な機序で、瞳孔が縮瞳しにくく散瞳状態なっている為ではないか、と考えました。
・さらに言うと、この頸部交感神経節の失調により、Aさんの上眼瞼が下垂気味になっていたのでは、と考えます。頸部交感神経は上眼瞼の挙上筋である上眼瞼板筋を支配しているので、その失調で上眼瞼が軽度下垂するからです。(☚両者とも頸部交感神経の整体治療などで改善している)。上記どちらの仮説も軽微なもので、それぞれの医療機関での検査では現れなかったのかもしれません。
頸部交感神経幹
◆ Aさんの治療目標…自然治癒力の回復とネザールサイクル失調の改善
・そこで、上記「➂ 治療目標と整体治療」に掲げる治療目標を設定し、血流促進によって嗅神経付近の細胞再生力の改善を図ると共に、ネザールサイクル機能を正常に戻し、鼻腔のとおり(ネザールサイクル機能)を改善する整体治療を施術する事にしました。
・ただ一般的に、一度障害された神経細胞は再生しにくく、かつAさんの症例に至っては数年も経過している事から、どれだけ嗅神経などが再生してくれるのか、不明な点もありました。しかし同じ神経細胞でも、中枢神経でなく末梢神経は、ある程度再生力があると言われているので、それに期待することにしました。
・結果的にAさんの嗅覚機能は、風邪に罹患前の完全な状態ではないものの、相当程度にまで改善していたので、以上の仮説で概ね妥当であったのでは、と思います。
●ネザールサイクル機能
ネザールサイクル機能とは、左右の鼻腔粘膜が2~3時間おきに交互に勃起現象(☚粘膜浮腫)を繰り返し、左鼻腔と右鼻腔の口径が互いに変化する現象。それが失調すると、どちらかのor両方の鼻腔粘膜が勃起(浮腫)したままとなり、鼻の通りが悪くなる=鼻閉=といった、通年性のアレルギー性鼻炎とよく似た症状になる。
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それではお大事にしてください。
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