「過去の恨みを忘れて」とは、まさにそのとおりのことを言っているのだが、少し補足。

誰かに何らかの恨みがある。それが悔しくて忘れられない。しかし例えば「他人を恨むのは悪いことだ」と思って「恨んではいけない、いけない、いけない」と自分に言い聞かせる。その結果として「恨みを忘れる」。

私が言っている「恨みを忘れる」とは、このようなことではない。「過去の体験は頭の中に確かに残っているけれども、あるきっかけがあって、その恨みはまったく気にならなくなった」と言ったことである。

「過去の恨みが気にならなくなった。そんなことは小さな問題だ」と悟ることである。

ついでながら言っておけば、これらの映画で「過去の恨みを忘れて再出発しよう」とか「もう過去の恨みは気にならなくなった」というようなセリフが語られているわけではない。

それぞれの映画を見れば分かる。もしそのように感じられないようであれば、「その映画を理解していない」と言うことになる。


(1941)いちごブロンド/The Strawberry Blonde

出演はジェームズ・キャグニー、オリヴィア・デ・ハヴィランドリタ・ヘイワース、ジャック・カーソン。

ビフ(ジェームズ)は歯科医。今ではエイミー(オリヴィア)という妻と一緒に幸せに暮らしている。

ある日「抜歯してほしい」とヒューゴ(ジャック・カーソン)という客が来た。ずいぶん昔のことだが、その名前を聞いて思い出した。

ヒューゴは、好きだったヴァージニア(リタ)を奪い、ビフが服役する原因となった人物である。ビフは麻酔薬を大量投与して殺害しようとする。

そして過去の悔しいことをずーっと思い出す。この部分が本作のメインストーリー。

回想が終了して、はっと我に返った。しかしそれで悔しい思いが吹っ切れた。相手があえて復讐をするまでもない小人物と理解した。

麻酔抜きで抜歯して、ちょっとばかり痛い思いをさせただけで終わりにした。

補足。

「いちごブロンド」とはヴァージニアのこと。ビフは通信教育で歯科医の資格を取るのだが、いくらアメリカでもそんなことはあるまい。

オリヴィアはリタよりも二歳年上だが、エイミーの方が幼く見える。メイクと演技でやったのかも。

 


(1949)他人の家/House of Strangers

出演はエドワード・G・ロビンソン、リチャード・コンテ、スーザン・ヘイワード

マックス(リチャード)は刑期を終了した。その間に父親(エドワード)は死亡した。父親が設立し、今は兄弟が経営している銀行に行った。

服役することになったのは兄弟のせいである。少なくともマックスはそのように考えている。

激しい言い合いが発生したが、その場は別れて、服役前に付き合っていたアイリーン(スーザン)のアパートへ行った。

アイリーンは喜んで「遠くへ行って新しく暮らしましょう」と言う。それには答えないで別れた。まだ兄弟に対する恨みがあるからである。

昔一家が住んでいたが、今では空き家になっている屋敷に入った。注、これが「他人の家」。

壁に飾ってある父親の肖像画を見ながら過去を回想した。ここがメインストーリー。

回想が終了すると兄弟に対する憎しみは洗い流されていた。

アイリーンに電話して彼女の提案通りに遠くに行くことにした。アイリーンが車で来て、二人は走り去った。

 


(1954)折れた槍/Broken Lance


出演はスペンサー・トレイシー、ロバート・ワグナー、ジーン・ピーターズ

マット(スペンサー)は牧場主、四人の息子がいる。最後の一人ジョー(ロバート)は後妻の先住民との子供。

鉱山から流れてきた汚染水で牛が死亡し、鉱山側とトラブルになった。そのトラブルでマットは暴力を振るった。

マットは起訴された。裁判は不利に進行した。ジョーは父親のことを思って身代わりとなった。三年の刑期。

その間に他の息子たちは土地を鉱山側に売ろうとした。そのトラブルでマットは死亡した。

刑期の途中であったが、許可を得て父親の葬儀に出てきた。

そこで兄たちと対立した。ジョーは先住民の流儀にしたがって、槍を地面に突き立てて決闘を申し込んだ。

ただ服役中なので、槍はそのままにして、刑務所に戻った。

刑期を終了して、恋人のバーバラ(ジーン)と父親の墓に行った。槍が元のままに地面に突き刺さっていた。

しかしもう兄たちに対する恨みは残っていなかった。槍を抜いて折った。

バーバラと馬車に乗って走り去った。
 


■ 出演作

リタ・ヘイワース
(1939)コンドル/Only Angels Have Wings
(1941)いちごブロンド/The Strawberry Blonde
(1941)血と砂、闘牛士の最後/Blood and Sand
(1946)ギルダ/Gilda
情炎の女サロメ/Salome(1953)
(1959)コルドラへの道/They Came to Cordura
上海から来た女/THE LADY FROM SHANGHAI(1947)
(1948)カルメン/The Loves of Carmen

◆ リチャード・コンテ
(1946)記憶の代償/SOMEWHERE IN THE NIGHT
(1949)深夜復讐便/THIEVES' HIGHWAY
(1959)コルドラへの道/They Came to Cordura
(1968)セメントの女/Lady in Cement
(1948)出獄/CALL NORTHSIDE 777
(1947)いのち短し/The Other Love
(1949)ならず者と墓荒らし/Big Jack
(1950)大病院殺人事件/The Sleeping City
(1953)バビロン伝説/Slaves of Babylon
(1954)ハイウェイ捜査網/Highway Dragnet
(1949)他人の家/House of Strangers
(1949)疑惑の渦巻/Whirlpool

スーザン・ヘイワード
(1942)奥様は魔女/I MARRIED A WITCH
(1938)黄昏/THE SISTERS
(1951)狙われた駅馬車/Rawhide
(1942)絶海の嵐/Reap the Wild Wind
(1946)暁の死線/タイムリミット25時/DEADLINE AT DAWN
(1958)私は死にたくない/I Want to Live!
(1947)私は殺さない/THEY WON'T BELIEVE ME
(1954)悪の花園/Garden of Evil
(1947)Smash-Up,The Story of a Woman
(1949)タルサ/Tulsa
(1949)他人の家/House of Strangers
(1955)一獲千金を夢みる男/Soldier of Fortune
(1959)愛は憎しみの彼方に/Woman Obsessed

ジーン・ピーターズ
(1948)海の呼ぶ声/Deep Water/漁師とケースワーカーと孤児
(1948)征服への道/Captain from Casile/恋人ともに新大陸に渡る
(1950)Love That Brute/ギャング・ロマンティック・コメディ
(1951)女海賊アン/Anne of the Indies/捕虜を救って好きになったが裏切られる
(1952)革命児サパタ/Viva Zapata!/メキシコ革命、伝記映画
(1952)人生模様/最後の一葉/O. Henry's Full House/吹雪の中を歩いて肺炎に
(1952)ジャングルの逃亡者/Lure of the Wilderness/冤罪で逃亡し沼地で暮らす
(1953)拾った女/Pickup on South street/スパイ組織との対決
(1953)ナイアガラ/Niagara/殺人犯と一緒に滝に流される
(1953)ヴィッキー/モデル殺人事件/Vicki/ハリウッドに進出しようとしたが殺された
(1954)アパッチ/Apache/ジェロニモ降伏後も白人と戦う
(1954)愛の泉/Three Coins in The Fountain/ローマでのアメリカ人女性三人の恋愛模様


オリヴィア・デ・ハヴィランド
(1935)海賊ブラッド/Captain Blood
(1938)ロビンフッドの冒険/The Adventures of Robin Hood
(1938)黄金の罠/Gold Is Where You Find It
(1939)無法者の群/Dodge City
(1939)太平洋の翼/海の荒鷲/Wings of the Navy
(1940)カンザス騎兵隊/Santa Fe Trail
(1941)いちごブロンド/The Strawberry Blonde
(1943)カナリア姫/PRINCESS O'ROURKE
(1946)遥かなる我が子/To Each His Own
(1946)暗い鏡/The Dark Mirror
(1948)蛇の穴/The Snake Pit
(1952)謎の佳人レイチェル/My Cousin Rachel
(1958)誇り高き反逆者/The Proud Rebel
(1964)不意打ち/Lady in a Cage
(1977)エアポート'77/バミューダからの脱出/Airport '77
 


(1954)折れた槍/Broken Lance

 

 

(1949)他人の家/House of Strangers

(1941)いちごブロンド/The Strawberry Blonde