■ THEY WON'T BELIEVE ME
ラリーの妻グレタは大金持ち。ラリーがジャニスと浮気して逃げようとしたら、会社を買収して社長にしてしばりつけた。
その会社の秘書ヴェルナと浮気すると、今度はその会社を売って、人里離れた牧場に住まわせた。
しかしグレタはラリーが大好きである。ラリーはチャンスをうかがって再度ヴェルナと会った。


製作:1947年、脚本:ジョナサン・ラティマー、監督:アーヴィング・ピシェル


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 ラリー・バレンタイン(ロバート・ヤング)
 グレタ・バレンタイン(リタ・ジョンソン) ラリーの妻、大金持ち
 ヴェルナ・カーソン(スーザン・ヘイワード)
 ジャニス・ベル(ジェーン・グリア)
 トレントン(Tom Powers)
 カー警部(George Tyne)
 


■ あらすじ

◆ 裁判

裁判が開かれている。グレタ・バレンタインとヴェルナ・カーソン殺人事件。

被告はラリー・バレンタイン。ラリーは事件のことを回想する。

以下は回想場面。

◆ ラリーとグレタ

ラリーの妻のグレタは大金持ち。グレタはラリーに対しては、少々命令口調の話し方をするが、しかしラリーを大好きなようである。

結婚して五年。ラリーはなじみの店でシガレットケースを買った。

帰ってそれをグレタにプレゼントした。グレタからは時計を貰った。

◆ ラリーはジャニスと浮気

喫茶店でラリーはジャニス・ベルと会った。

ジャニスは「グレタから(ラリーから貰った)シガレットケースを見せられた」。ラリーは「もっといいものをあげる」。

しかし日頃のジャニスとはちょっと違う。「もっと確かなものが欲しい。土曜の女じゃダメ」。

ジャニスは転勤を希望してモントリオールに行くという。

対してラリーは「妻を愛してない。妻も別れたがっている」という。しかしグレタはそんなことは言っておらず、口から出まかせである。

さらにラリーは出まかせを続けた。「妻と別れる。自分もモントリオールに行く」。

ジャニスはにっこりとした。ともあれジャニスの転勤は決定しているので、すぐに出発する。

◆ グレタはラリーとジャニスを別れさせる

ラリーは帰って出発の準備をした。そしてグレタは、その準備を積極的に手伝う。

しかしなぜか様子が変。ラリーは「ただの出張ではない。もう戻らない」と言っても平気な顔。

グレタが切符をとりだして見せた。行き先が違う。「あなたが望んでいた家をビヴァリーヒルズに借りた」。

さらに「証券会社の株を買った。あなたは証券界社の共同経営者」とこともなげに言う。「なぜ黙ってた?」「今日買ったのよ」。つまりジャニスのことを察知したらしい。

ということで、ラリーの行動はグレタに読まれており、モントリオール行を阻止された。

翌朝、グレタとラリーは列車に乗っている。「なぜ出張じゃないと分かった?」「ジャニスがモントリオールに転勤すると言ってた」。

けっきょくグレタの方が上手である。グレタはラリーが浮気していたと知っても動揺していない。「私が望んでいるのは結婚生活を続けること」。

それでラリーとジャニスとの関係は終わった。

◆ ラリーとヴェルナ

ラリーの勤務先は「トレントン&バランタイン」となった。

半年後。仕事は順調。ラリーは共同経営者とは言っても経験がないので、トレントンの方が仕事の指示をだしている。しかしグレタが株を持っているので、わりと大きな顔をしている。

秘書をしているのはヴェルナ・カーソン。ある時トレントンから褒められた。ヴェルナが気を利かせたからである。

ここでラリーはまた病気が出た。ヴェルナに「好きな香水は?」と言う。ヴェルナは「お礼は結構です。私の好意です」と意味ありげな返事。

ヴェルナのアパートに行く。わりと豪華。「私の給料で、このアパートって不思議でしょ?」とわざと漏らしてくる。「スーザン・ヘインツと家賃を分担している」。ラリーは「君より美人か?」と余計な事を喋る。

わりと怪しい感じで会話が進むが、ヴェルナは慣れているようである。

グレタに電話をしたら不在。実はヴェルナが先に手を打っていたりする。

ヴェルナと食事をした。しかしここで予想外の出来事。ヴェルナが席を外した時にジャニスに会った。ジャニスはもう冷めている感じで「(グレタと別れるなんて)嘘だったのね。グレタに聞いたわ。それを恥ずかしいとは思っていない」。ジャニスは立ち去って、ヴェルナが戻ってきた。

◆ ヴェルナのことがグレタにばれた

朝、帰宅する。ラリーの部屋にグレタが来た。

「あなたを待ってたの。座ってちょうだい」と有無を言わさない雰囲気。

「ジャニスを覚えている?」と始まった。それからヴェルナのこと。すなわちジャニスからヴェルナとのことを聞いたらしい。

「ジャニスは仕方なかった。でもヴェルナは性悪よ」。そして「人里離れた山奥に牧場を買った。当分はそこに住む」と言い渡す。

ジャニスの時と同様にグレタは勝手に決めて来た。一応グレタはラリーに選択させる。「私と一緒に来るか、恋人の元に行くのか。明日返事して」。

ヴェルナと会った。「会社になぜ来なかったの?」「もう仕事はない」「どうしたの?」「妻が会社を売った」と展開。

「君との仲を知られた」と言うと、ヴェルナは「気が楽になったわ。もうこそこそしなくていい。私と奥さんとどっちを選ぶの?」。ラリーが拒否すると。「珍しく本気だったのに」と言って立ち去った。

◆ 今度は山奥

山奥の大きな屋敷。昔は牧場だったが、今は誰もいない。電話はグレタが指示して取り外してある。五キロ先に雑貨店があるだけ。

ラリーはがっくりしたが、グレタはウキウキしている。

毎日グレタと周りを馬で回った。森や谷川があり、滝もあった。よい景色だがラリーは次第にイライラしてきた。

そのうちグレタは「マーサおばさんのためにゲストハウスを立てる」と言い出した。そして「雑貨店に行って電話してきてちょうだい」。

◆ ラリーはヴェルナと連絡を取る

ゲストハウスの件でロスアンジェルスに行く用事ができた。グレタ宛に「離婚する」とメモを残して出かけた。

ヴェルナに電話したが、ヴェルナは電話を切った。

ラリーは一人で酒を飲んでいた。ヴェルナが来た。「なぜ来たのか、自分でも不思議」。

「僕と来てくれ」「いつまで?」「君が僕を嫌になるまで」「私より金を選んだくせに」となる。

しかし「でも金はいずれ必要ね」「金は手に入る」「前よりはいい申し出ね」「かなりの額だ」「どのくらい?」「妻の口座には三万ドルある」と話がとんとん拍子。

グレタとは一応共同口座になっているので、ラリーも引き出すことができる。引き出すタイミングを調整すると発覚を遅れさせることができる。そして二人で遠くに行く。なかなかうまい計画である。

ラリーは小切手を切ってヴェルナに渡した。

◆ ラリーはヴェルナと一緒になる

二人はいったん別れて落ち合う。ヴェルナがラリーに疑問を持って待ち合わせに遅れるなどのトラブルがあるが、ともかく二人は落ち合って出発する。

湖で泳いだりして遊ぶ。ヴェルナは自分で指輪を買ってきた。それをラリーが受け取ってヴェルナの指に刺した。

それと重要情報。ヴェルナは指輪を買うときにラリー・バレンタインの名前を出した。もう一つ重要情報。ヴェルナはトレントンの会社の社員なので、トレントンに「退職する」と連絡してきた。注、もちろんトレントンの会社はしばらく前はラリーとの共同経営の会社。

◆ ヴェルナは事故で死亡する

二人は車を走らせていた。前から来たトラックが暴走して衝突。車は燃え上がった。

ラリーが気がつくと病院のベッド。となりにはトラックの運転手。ヴェルナは死亡した。運転手は「妻は結核で死亡した」と話した。

警察が来て、事故報告書を作成する。「運転していたのは?」「私です」「奥さんではない?」「そうだ」。警察が女性をグレタと判断したので、そのままにした。

グレタと判断されたのは、一つはヴェルナがしていた指輪。ヴェルナが指輪を買うときにバレンタインを名乗っている。

◆ ラリーはグレタを殺害しようとする

ラリーはここから恐ろしいことを考える。「グレタを分からないように殺せば、グレタの金が手に入る」。

ラリーは牧場に行く途中の雑貨店に立ち寄った。店主もグレタが死んだものと理解している。

そして牧場に帰った。

◆ しかしグレタは死亡していた

中に入った。真っ暗。誰もいない。

グレタを殺す予定なので、机の引き出しから拳銃を取り出した。屋敷の中をグレタを探して回る。いない。

敷地の中の滝に向かった。グレタの馬がいた。

そしてラリーが出て行った時の「離婚する」のメモが見つかった。

グレタの死体を発見した。グレタを抱えて、深い滝壺に捨てた。

ラリーはアメリカを出た。

◆ ラリーはジャマイカでジャニスと会う

いろいろ放浪してジャマイカまで来た。海岸のホテル。ロビー。なんとジャニスがいた。「グレタのことは残念ね」。

夜、バーにいるとまたジャニスが来た。ジャニスはツアーを途中でキャンセルして残ったとのこと。

いろいろ楽しんで、ロスアンジェルスに戻った。

◆ トレントンは警察に通報する

トレントンを見かけた。オフィスに入っていった。ヴェランダに忍び込んで様子を見ているとジャニスが来た。

ジャニスはトレントンと話した。「彼(ラリー)を連れ戻しました」「ヴェルナは?」「分かりません」「ではどこに?」「彼も知らないそうです」。

ラリーはジャニスに嵌められたことを知ったが「グレタは死亡したことになっている。ヴェルナの行方は不明だ。自分は安全」とつぶやいた。

トレントンと会った。トレントンは推理を披露した。「ヴェルナは君をゆすりに行った。彼女を牧場で殺したのでは?その後奥さん(グレタ)と出かけて事故にあった」。グレタとヴェルナが逆になっているが、ほぼ合っている。

ラリー「だったら警察に通報すれば?」トレントン「そうした」。

◆ 牧場が捜索される

警察が来て牧場が捜索された。家の中では見つからず外も捜索され、滝の中から死体が発見された。

警察はヴェルナの死体と判断した。

◆ 裁判

ラリーの回想は終了した。弁論は終了して、陪審員団は退廷して結論を出す。その間は休廷。

その間にジャニスが面会にきた。ジャニスは意外にも「まだあなたを好き。裁判が終われば結婚したい。待ってる」と言う。ラリーは「私は有罪になる」と答える。

さて陪審員団の評決が発表される。

ここでラリーは被告席から走り出して窓から逃げようとした。廷吏に射殺された。

中断したが評決が読み上げられた。無罪。ジャニスは涙を流した。
 


■ 補足

「スーザン・ヘイワードとジェーン・グリアがでているなら、絶対に見なくちゃ」と思う人は多いのではなかろうか?

ラリーはかなりひどい人間だけれども、グレタもヴェルナも殺しておらず、ジャニスとハッピーエンドにしてやったらどうだろうか?
 


■ 出演作

◆ ロバート・ヤング
「十字砲火/Crossfire(1947)」

スーザン・ヘイワード
(1942)奥様は魔女/I MARRIED A WITCH
(1938)黄昏/THE SISTERS
(1951)狙われた駅馬車/Rawhide
(1942)絶海の嵐/Reap the Wild Wind
(1946)暁の死線/タイムリミット25時/DEADLINE AT DAWN
(1958)私は死にたくない/I Want to Live!
(1947)私は殺さない/THEY WON'T BELIEVE ME
(1954)悪の花園/Garden of Evil


ジェーン・グリア
(1947)過去を逃れて/Out of the Past
(1956)太陽に向って走れ/Run for the Sun
(1984)カリブの熱い夜
(1946)船乗りシンバッドの冒険/Sinbad the Sailor
(1949)仮面の報酬/THE BIG STEAL
(1947)私は殺さない/THEY WON'T BELIEVE ME
(1948)拳銃往来/Station West