■ I MARRIED A WITCH(1942年)


製作:1942年、脚本:ロバート・ピロッシュ、マーク・コネリー、監督:ルネ・クレール   予告編   予告編   予告編  


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■ あらすじのあらすじ

魔女のジェニファーは火刑に処せられた。死ぬ直前に「代々のウーリー家の当主が不幸な結婚をするように」と呪いをかけた。ジェニファーの死体の上には樫の木が植えられた。

時代を経て、大きくなった樫の木にカミナリが落ちて、ジェニファーは復活し肉体を得た。

ウォーレス・ウーリーは知事選挙に立候補しており、また同時に結婚もするつもりである。

ジェニファーは策を弄してウォーレスに近づくが、ウォーレスはジェニファーに興味を示さない。

困ったジェニファーは特製の媚薬を作り、ウォーレスに飲ませようとした。しかし手違いで自分が飲んでしまった。結果ジェニファー自身がウォーレスを好きになってしまった。


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 ジェニファー(ヴェロニカ・レイク) - 魔女
 ダニエル(セシル・ケラウェイ) - ジェニファーの父
 ウォーレス・ウーリー(フレドリック・マーチ) - ウーリー家の当主
 エステル・マスターソン(スーザン・ヘイワード) - ウォーレスの婚約者
 J・B・マスターソン(ロバート・ワーウィック) - エステルの父親

この映画は、77分と短いが、わりと画面が次々と変わっていく。ジェニファーに関係する場面を主に紹介していく。
 


■ あらすじ

◆ 火刑

ダニエルとジェニファーは17世紀末マサチューセッツ州セイラムで魔法使い・魔女として火刑に処せられた。ジェニファーは火刑の直前に「ウォーリー家の代々の当主が不幸な結婚をするように」と呪いをかけた。

二人の遺灰は埋められて、さら二人を封じ込めるために、その上に樫の木が植えられた。その樫の木は大きく育った。

ウーリー家の当主の結婚はジェニファーの呪いの通りとなった。

◆ ウォーレス

ウォーレスはエステルと婚約した。またさらに州知事選挙に立候補した。選挙の前日に結婚式を挙げて相乗効果を狙う作戦である。

エステルは、結婚するわけなのでウォーレスを好きなのは間違いがないが、やたらと強気な女性で、また細かいことでウォーレスにいろいろと小言を言っている。もちろんこれはジェニファーの呪いのせい。

◆ 復活

ここでビッグニュース。ダニエルとジェニファーが埋められた場所の樫の木が落雷によって倒れた。二人の封印が解かれた。二人は白い靄となって地上に出てきた。

二人はまだ肉体を持っていない。ジェニファーが「パパ、どうしたら肉体を?」と聞くと「火で焼かれたのだから、火を燃やせばよい」との答え。ジェニファーはたまたま見かけたホテルに火をつけた。ダニエルは「悪い娘になるんだぞ」と励ました。

ホテルはたちまち猛火に包まれた。幸い客と従業員はすべて無事に避難が完了。周りには野次馬が集まった。ウォーレスは帰宅する途中であったが、この火事現場を通りかかり立ち往生となった。

ウォーレスは車を降りて近づいて行った。知事候補が来たので、みんなは道を開けた。ホテルのオーナーは「保険金で、ホテルを新しくできる」とウキウキしている。

ウォーレスとオーナーが並んで見ていると、ウォーレスに女性の声が聞こえてきた。しかしオーナーには聞こえてないようである。その声は次第にはっきりとしてきた。もちろん我々は声の主はジェニファーであるとすぐに分かる。

ウォーレスは燃えているホテルに入っていった。中に女性がいた。ジェニファー。ソファに座っている。周りは火の海だが、なぜか落ち着いている。

「ウォーレスさん、こっちよ。あなたを待ってたの」。ウォーレスが連れ出そうとすると「なぜ急いでるの?私きれい?自分の姿を見たい」と悠長である。

(自分の肉体を見るのは初めてなので)鏡を見て「金髪なのね。黒髪の方がいい?」。さらに「二人きりね。私の身長はあなたの心臓の高さ」と嬉しそうに話す。延々と続く。注、ヴェロニカは150cm。

ウォーレスはジェニファーを抱えてホテルから出てきた。大勢の人が見ている。拍手が起きた。カメラのシャッターが押される。次の日にはウォーレスの善行が紙面に踊り、知事選挙に貢献するはずである。

ウォーレスはジェニファーを病院に運んだ。そして家に向かった。

さてウォーレスには内緒だが、入院したジェニファーは病室の近くにあったホウキを呼び寄せて跨った。空に向けて飛び立った。ホウキならばなんでもOKらしい。


◆ ウォーレス家

ウォーレスは帰宅して二階の自室に入った。なんとジェニファーがソファに座って待っていた。

また先ほどの調子である。「私って魅力的?」。さすがにウォーレスが怒るが「怒った顔もすてき」と始末に負えない。

ウォーレスはタクシーを呼んでジェニファーを送り出した。そして戻ると今度はベッドにいて休んでいる。

ウォーレスは火事から助け出したので、ジェニファーがウォーレスに対して特別な感情を抱いたのだと考えた。しかし我々はジェニファーが復讐のために、ウォーレスに近づいたことを知っている。

ジェニファーは一生懸命にウォーレスを誘惑したが、ウォーレスは一向に乗ってこない。

そうこうしているうちに朝になってしまった。結婚式の日である。注、実はジェニファーが魔法を使って時間を進めた。

朝になって食事がでてきた。ジェニファーは出された食事を手掴みでみんな食べてしまった。

エステルとJ・B・マスターソンが訪ねてきた。エステルは、今後の準備ということで二階のウォーレスの部屋に行こうとするが、そこにはジェニファーがいるので必死に止める。

ウォーレスが玄関まで二人を押していったところで、ジェニファーは魔法を使ってドアをドンと閉めた。二人は家の外にはじき出された。

エステル親子は結婚式場に、ウォーレスは選挙の放送のために放送局に向かった。

◆ 媚薬

ジェニファーは、自分の必死の誘惑も効果がなかったのでダニエルに相談した。「媚薬を作れ」。ジェニファーは、暖炉の火の上に鍋をおいて、いろいろと材料を入れて媚薬を作った。「これで私の奴隷ね。体も魂も苦しめてやるわ」。

ジェニファーはダニエルに頼んで放送局に火をつけた。ウォーレスは自宅に戻ってくる。なんで自宅に戻るのかは不明だが、とにかく戻ってくる。ジェニファーは放送局に火をつければ、ウォーレスが戻ってくると踏んだのだろう。

ジェニファーは媚薬を入れたグラスを持ってウォーレスに勧める。また同じような会話が繰り返される。しかしウォーレスはなかなか飲まない。

ジェニファーはグラスをテーブルに置いて壁際のソファに腰かけた。ちょうどそのタイミングで壁に掛けてあった絵が落下してジェニファーの頭を直撃。ジェニファーは意識を失った。

ウォーレスは、ジェニファーのほっぺたを叩いて気づかせようとする。ダメなので、テーブルに置いてあるグラスをジェニファーの口にもっていく。ジェニファーは意識を失ったまま、媚薬を飲んでしまった。

気が付いたジェニファーは、ウォーレスに抱き着く。そしてまた甘い言葉を連発する。しかし今まではウォーレスを誘惑して不幸に突き落とすための演技であったのだが、今度は本気にウォーレスを好きになっている。ここが違う。

さて結婚式が迫っているので、ウォーレスはジェニファーを置いて式場に急いだ。

ダニエルが訪ねてきて「効き目はどうだ?」と聞いた。「あったわよ。でも飲んだのは私」。「結婚させたくないの、お願い、何とかして」と頼む。二人は結婚式場に出かける。注、ダニエルも放送局放火事件で、もう肉体を持っている。

◆ 結婚式-ウォーレスとエステル

ジェニファーとダニエルは式場に現れた。そして風を巻き起こした。衣服がめくれ、テーブルが倒れた。叫び声が沸き起こった。

台風騒動が一段落したところで、二階の控室。ジェニファーとダニエルとウォーレス。ダニエルは「傷物にされた娘の復讐をする」という。注、「傷もの」なんてずいぶん時代錯誤な言葉だな(笑)。

ダニエルは拳銃を取り出して、それをウォーレスに渡す。「これで私を殺せ」。ダニエルは、その意図を説明する。ウォーレスは殺人罪で起訴されて死刑となる。電気椅子。ダニエルとジェニファーに対して行われた火刑の復讐である。注、説明したらダメじゃん。

ウォーレスは拒否して拳銃をテーブルに置く。ダニエルは拳銃に呪文を投げる。拳銃は自動的に動いて銃口がダニエルに向く。そして自動的に引き金が作動し、ダニエルに命中する。ダニエルは息が絶えて首をガクッと落とす。

銃声を聞いて、他の人が駆け込んでくる。ウォーレスは「事故だ」と主張。すると死んだはずのダニエルが「ウォーレスが犯人。警察に通報しろ」と言って、また首をガクッと落とす。注、だったら死んでないじゃん。

ここでジェニファーが「あれは父親じゃない。借り物の体よ」とウォーレスを弁護するとようなことを言う。とりあえず、ウォーレスなどは階下の式場に降りていく。注、ウォーレスを弁護するのは、今では本当にウォーレスを好きになっているから。

ジェニファーはダニエルの遺体に向かって「体から出たのね、どこにいるの?」と言いながら、拳銃をダニエルの遺体に向ける。

再度の銃声に驚いて、またウォーレスなどが駆け上がってくる。するとジェニファーがソファに倒れている。ウォーレスはジェニファーが自殺したと思い「本当に私を愛していたのだな」とのぞき込む。

そのとたんにジェニファーは起き上がって「やった!」と抱き着いてキスをする。満面の笑み。

一連の事件を目撃していたエステルが怒りを爆発させる。その剣幕に押されてウォーレスとジェニファーは式場から出ていく。

メディアは、ウォーレス=州知事候補が結婚式当日にスキャンダルを起こしたと書き立てた。

◆ 結婚式-ウォーレスとジェニファー

ウォーレスとジェニファーは車を州境に向かって走らせていた。明日は知事選挙だが、ウォーレスは、もうすべてをあきらめた。

しかし途中でジェニファーは「車を止めて」と言う。大きな古い建物がある。明かりがついた。窓を開けて女性が声をかけてきた。注、これはジェニファーの魔法。

ここに泊まることになった。夜間ではあるが大急ぎで結婚式を挙げる。注、牧師も神父もいない。書類だけを作成する。

そしてジェニファーは自分が魔女であることを明かす。ここはお決まりの展開であるが、ウォーレスは、この言葉を誤解する。「魔女?それは知っていた。出会った瞬間に君の魔法にかかってしまった」。注、しかしウォーレスは最初はジェニファーを全然好きではなかったのに。

ジェニファーは「明日の選挙で勝てる」と言う。もちろん自分の力を使う。選挙結果は圧勝。ウォーレスは知事となった。

◆ 再び樫の木へ

しかしこの結果を好ましくないと考える人物がいる。身近にいる。ダニエル。なぜかといえば、そもそも魔女が人間を愛するなんてことは許されないことであり、しかも相手は二人を処刑したウーリー家の子孫である。すなわち宿敵である。

ダニエルはジェニファーから魔力を剥奪した。ジェニファーは自分の魔力がなくなったことを知って、ウォーレスに「遠くに行こう」と言う。ダニエルから逃れるためである。再び二人は車に乗って走っていく。だが運転手はダニエルに代わっている。

途中から二人が乗った車は空中に浮かび上がる。そのまま空中を突き進んでいく。そしてダニエルとジェニファーが捕らえられていた樫の木に激突する。

夜の12時になると永久に閉じ込められる。ジェニファーはウォーレスに別れを告げる。そして死ぬ。ウォーレスはジェニファーの遺体を抱えて戻っていく。注、本当は死んでない。意識が肉体から抜け出て、元の靄の状態になっている。

靄となったジェニファーはダニエルに「ウォーレスの苦しむ姿を見届けたい」と言う。ダニエルは(簡単に騙されて)「魔女の心を取り戻したな」と満足そうである。

ウォーレスは家に戻ってジェニファーの遺体を前に嘆き悲しんである。靄の状態となった二人は、これを見ている。二人は別々の酒瓶に入った。

隙を見て突然ジェニファーは自分の遺体に飛び込んだ。すっくと立ちあがりダニエルの酒瓶にコルクを押し込んでダニエルを閉じ込めた。

◆ ラスト

七年後、二人には二人の子供が生まれている。仲良く暮らしている。子供がホウキで遊ぶのでジェニファーは「止めなさい」と注意している。

この時は、ジェニファー=ヴェロニカは、トレードマークの長い髪ではなく、短く纏めている。
 


■ 蛇足

本作ではジェニファーの描き方に疑問がある。注、このように言ったからと言ってこの映画が嫌いなわけではない。むしろ好き。

ジェニファーの描き方。媚薬を飲むまでは、ジェニファーの意図は「復讐のために、ウォーレスの心を奪い、しかも結婚せずに、ウォーレスを苦しめる」というものだが、媚薬を飲んだ後では本当にウォーレスを好きになる。

しかし、この前後でジェニファーの描き方が同じである。前半のジェニファーを「魅力的ではあるが、いかにも憎らしい悪女」という風に描いてほしかった。両方ともとても無邪気な感じに描いている。

ダニエルが全然魔法使いらしくない風貌なのが笑える。

最後の方で州境に向かってドライヴするところで、ジェニファーがフードを被っている。L.A.コンフィデンシャルでキム・ベイシンガーがヴェロニカ・レイク似の娼婦を演じたが、同じようなフードを被っている。ここの場面を真似したのか。

用語。magicianは「悪意を持った魔法使い」の意味。本来は男女無関係のはずだが男性のイメージが付着している。witchは「悪意を持った魔女」。女性限定。その他にwizard。「悪意を持たない魔法使い」。こちらも本来は男女無関係のはずだが男性のイメージが付着している。用語の由来なども含めて「シンプルウィッシュ-クローディア」に解説している。

セイラムの魔女裁判。セイラムでは1692,1693に実際に魔女裁判が行われた。欧米におけるほぼ最後の魔女裁判である。ただしこの映画のような火刑は行われていない。「セイラム魔女裁判」を参照。

不当な仕打ちを受けた時などは「中世の魔女裁判」などと言うが、実は魔女裁判が盛んに行われたのは中世ではなく近代である。魔女裁判が始まったのは確かに中世。しかし魔女裁判がヨーロッパで一番盛んだったのは、1600~1650であり、ルターの宗教改革が1517であることを考えれば、明らかに近代である。

また魔女裁判は、どちらか言えばプロテスタントの方が激しかった。これも傍証。宗教改革のルターやカルヴァンは、魔女裁判という点から見ると大罪人である。魔女裁判が猛威を振るったのはスコットランド、ドイツ、スイスなどプロテスタントの地域。ただスウェーデンでは、若くして即位したクリスティーナ女王が魔女裁判自体を禁止した。彼女はカトリックに改宗し、さっさと退位してローマに移住した。「魔女裁判/魔女狩りは中世か」に解説しているので、興味があれば、ご覧いただきたい。蛇足。クリスティーナはデカルトをストックホルムに招いた人物でもある。
 


■ 出演作

ヴェロニカ・レイク。「ガラスの鍵/The Glass Key(1942)」「拳銃貸します(1942)」「青い戦慄(1946)」これらはアラン・ラッドとの共演。「Sullivan's Travels/サリヴァンの旅(1941)」。

セシル・ケラウェイ。「郵便配達は二度ベルを鳴らす The Postman Always Rings Twice (1946)」「ふるえて眠れ Hush… Hush, Sweet Charlotte (1964)」「招かれざる客 Guess Who's Coming to Dinner (1967)」「月光の女 The Letter (1940)」。

フレドリック・マーチ。「ジキル博士とハイド氏/Dr. Jekyll and Mr. Hyde(1931)」「アンナ・カレニナ/Anna Karenina(1935)」。

ロバート・ワーウィック。「サリヴァンの旅/Sullivan's Travels(1941)」ヴェロニカと共演。「レディ・イヴ/The Lady Eve(1941)」バーバラ・スタンウィック、ヘンリー・フォンダと共演。「女王エリザベス/The Private Lives of Elizabeth and Essex(1939)」ベティ・デイヴィス、エロール・フリン、オリヴィア・デ・ハヴィランドと共演。
スーザン・ヘイワード
(1942)奥様は魔女/I MARRIED A WITCH
(1938)黄昏/THE SISTERS
(1951)狙われた駅馬車/Rawhide
(1942)絶海の嵐/Reap the Wild Wind
(1946)暁の死線/タイムリミット25時/DEADLINE AT DAWN
(1958)私は死にたくない/I Want to Live!
(1947)私は殺さない/THEY WON'T BELIEVE ME
(1954)悪の花園/Garden of Evil