■ Simple Wish
製作:1997年、脚本:ジェフ・ロスバーグ、監督:マイケル・リッチー 予告編 予告編
■ 登場人物(キャスト)
マレー(マーティン・ショート) - 主人公、新米魔法使い
オリヴァー・グリーニング(ロバート・パストレリ) - 売れない俳優
チャーリー・グリーニング(フランシス・キャプラ) - オリヴァーの息子
アナベル・グリーニング(マーラ・ウィルソン) - 第二主人公、オリヴァーの娘
クローディア(キャスリーン・ターナー) - 影の主人公、魔法使い
ブーツ(アマンダ・プラマー) - クローディアの手下、正体は?
ホーテンス(ルビー・ディー) - 北米魔法使い協会の会長、クローディアに紙っぺら状態にされる
ジェリー(デボラ・オデル) - オリヴァーのマネージャー、オリヴァーにはもったいないくらいの美人
■ レヴュー(クローディア)
◆ はじめに
本作は、キャスリーン姐さんが出演しているので、見てみようと思ったのだが、ネットにあるレヴューを見ても、クローディア(キャスリーンターナー)がどのようなポジションなのかは分からなかった。
見てみたら、すばらしい。すばらしい悪役である。実にキャスリーン姐さんらしい役柄である。感心したので、本作の本来の感想とは別にして書いてみる。
まず簡単に解説しておくと、アナベルと言う少女が、マレーという落ちこぼれの新米魔法使い(Fairy Godmother)と出会う。ここでの魔法使いはすべて女性なのだが、マレーだけは男性。
アナベルはマレーに「売れない俳優の父親のオリヴァーをスターにしてほしい」とお願いする。しかしマレーはオリヴァーをブロンズ像にしてしまう。これが間違いの発端。
◆ あらすじ-クローディア関連のみ
クローディアは、魔法の力を自分の利益のために使用した。これは許されないことである。別の言葉を使えば魔法使いから魔女(Witch)になった。そのために杖を取り上げられた。
詳細展開は本論に譲るとして、マレーが受け取った魔法の杖は、もとはクローディアが使っていたもの。
クローディアは、このことを恨んでいて、北米魔法使い教会(North American Fairy Godmothers' Association)/NAFGAで行われているパーティに乗り込んでくる。受付で「これ魔女のリンゴだと思うの?」と否定するような口ぶりでリンゴを渡し、受付がリンゴをかじってバタンと倒れると「魔女のリンゴに決まってるでしょ!」と言って中に入っていく。会長のホーテンスと対決する。
杖を取り上げられていると言っても、クローディアは強烈な力を持っている。ホーテンスに向かって手を振り上げて下ろす。するとホーテンスは、なすすべもなく、やられてしまう。会長をも簡単に倒してしまうほどの実力である。
ホーテンスは紙のように薄っぺらくなる。当然立っていられないので、へなへなとソファに倒れ込む。グニャグニャッと曲がり、ひくひくと痙攣している。そのまま折りたためそうである。クローディアは「24時間は、そのままよ」と言って、杖を探しに出かける。その杖は実はマレーがアナベルの家に忘れてきている。
ホーテンスに術をかけた後「いつも、あなたのこと、薄っぺらな人だと思ってた」と笑い飛ばす。
クローディアは、これだけの力を持っているが「one needs to control white magic too.」というのが動機である。字幕では「闇の世界のパワーだけじゃだめなの」だが、「(黒マジックは持っているけど)白マジックも必要」ということ。
クローディアが、実にニクったらしい。誰からも愛されるのではなく誰からも憎まれるようなキャラクタである。キャスリーン姐さんしかできないとは言わないが、ぴったりの役柄である。このようなキャスリーン姐さんが大好きである。パチパチパチ。
杖のありかを白状させるためにアナベラとマレーをバレーの自動人形にする。二人は体が勝手に動いてバレーを踊り続ける。さらにマレーに「体中の骨をへし折ってやる」と言ってマレーを軟体動物状態にする。
クローディアはホーテンスをやっつけたくらいなので、マレーがかなうわけもないが、マレーは一生懸命に頑張る。
クローディアにはブーツ(アマンダプラマー)という女性の手下がいる。ブーツがなかなかユニークなキャラクタ。ちょこまかと動き回って、グローディアから命じられた用をなす。しかし忠実なようで間が抜けている。
実はブーツも魔女(Witchの方)になりたい。ブーツが失敗をした後クローディアが責めるので、クローディアに「(私はクローディアの)相棒じゃないの?」と言うが、クローディアは「魔女を信じるのはバカだけよ」と言い放つ。この言葉でブーツはクローディアを裏切って反抗する。
ブーツの正体が面白いのだが秘密にしておく。
最後、クローディアは自分の魔法の失敗で、鏡の中に閉じ込められてしまう。これはブーツの離反が大きい。怒って中から鏡を叩くと鏡が割れて落ちる。バラバラになった鏡の破片の中で大声でわめく。
少しばかり残念なのは、クローディアが魔法をかける時に、相手に向けて手を振り下ろすのだが、その時に「チャリーン」みたいな感じのちょっとかわいいメロディと、きれいな☆がいくつも飛び出す。これがかなり残念。憎らしくない。クローディアらしくない。キャスリーン姐さんらしくない。
地響きとか雷鳴が轟いて、稲妻が走るというようにしてほしいところである。あるいは小さな黒い悪魔が飛び出してくるのもよい。そして地面がグラグラッと揺れ黒いモヤが立ち込め、その中でクローディアの高笑いが五秒間反響していればベスト。
◆ 用語-参考
Fairy Godmothers(魔法使い)。Fairy(妖精)なので「魔法使い」とはちょっと違う気がするが特に問題はないだろう。吹替えでは「魔法使い」で字幕では「妖精」となっている。妖精には本来は性別はないはずだが、本作では女性である。マレーだけが男性。
Witch(魔女)。これは「悪い意図をもった魔女」の意味。女性限定。クローディアはこちら。
Wizard(魔法使い)。男性女性は問わない。本作では本来Wizardを使うとよいのだが、Fairyでもよいだろう。どちらかと言えば善に属する。そして「賢者」という雰囲気になってくる。
Magician(悪い意図を持った魔法使い)。男性女性は問わない。ただし現在ではあまり「悪い意図を持った」という意味は薄れているようである。
◆ Magicianについて-蛇足
新約聖書に三人の博士がイエスの誕生を祝福に来たという話がある。この博士はmagiで単数形はmagus。これは元を辿るとイランの部族の名前なのだが、ゾロアスター教の(宗教的な言葉を使えば)啓示を受けた僧侶を指す。
このような人物がイエスの誕生を祝福に来た。新約聖書が書かれた時代にあってはキリスト教とゾロアスター教は友好関係にあった。しかし後には「悪意を持った」という意味に転化する。
magi(magus)が使う術がmagicである。さらにmagicを使う人物がmagicianとなった。
紀元前539年、イランの軍隊がバグダッドに進撃し占領した。そして捕えられていた多数のユダヤ人を解放した。これを機にゾロアスター教の教義がユダヤ教に影響を与えたと言われている。キリスト教とゾロアスター教の友好関係は、このようなことに由来する。
紀元前539年は、後年ゾロアスター教徒からゾロアスターが啓示を受けた年であると誤解された年である。ゾロアスターは30歳で啓示を受けたことになっているので、ゾロアスターは紀元前569年に生まれたという説が発生した。もちろん間違い。
さらに蛇足かつ私の推測だが、「魔術」という中国語・日本語は、Magicと同語源ではないかと思われる。
■ レヴュー(クローディア以外)
◆ あらすじ
魔法学校の卒業試験。マレーだけが男性。周りに迷惑をかけながら大騒ぎして、一番最後に答案を出して、やっとのことで卒業。
オリヴァーは売れない俳優、いやまだ俳優ではない、俳優を目指している。チャーリーとアナベルと三人暮らし。妻は死亡した。
オリヴァーはダッチェス(←馬)が引っ張る馬車でオーディションを受けに行く。途中でダッチェスが逃げ出したりして大変。自転車を借りて追いかける。やっと追いつく。その後チャーリーとアナベルを乗せる。
オーディション会場。チャーリーもアナベルも陰から見ている。チャーリーによると合格しなければ俳優を諦めて田舎に引っ越すらしい。終了して「後で連絡します」と言われた。このような言葉は落選と同義である。
アナベルの部屋に男性が迷い込んできた。マレー。魔法使いだそうである。いやしかし、かなり頼りなさそう。ただ人柄は良さそう。アナベルはマレーに願い事をしようとするとオリヴァーが覗きに来たので二人は隠れる。オリヴァーは戻っていったが、その間にマレーは消えた。しかし壊れた魔法の杖を忘れていった。
アナベルは杖を持って学校へ行こうとしている。マネージャーのジェリーがオリヴァーに会いに来て「もう一度、歌を聞きたいとのこと。21:30に」と伝えた。オリヴァーとジェリーは恋人同士でもある。
学校。アナベルは授業を真面目に聞かないで杖を修理しようとしている。教師に注意されたので逃げ出す。教師が追いかけてくる。隠れる。そこにマレーが来る。杖が壊れているので愕然とする。とりあえずアナベルのリボンで応急修理。
アナベルはマレーに願い事を言う。「今晩、パパが役を貰えますように」「そんなことなら、かなったも同然」。「劇場に行く」とマレーは杖を振る。そうすると二人はなぜか大平原。ネブラスカ州にきたらしい。学校ではアナベルが消えたので大騒ぎ。
ネブラスカではライフル男に脅されたりするが、再度杖を振ってセントラルパークに到着。オリヴァーは池のそばで観光客のためにシャッターを押している。
マレーが杖を振って魔法をかける。嵐が起きた。それが止むとオリヴァーはブロンズ像、ダッチェスはネズミ、馬車はカボチャ。とりあえずダッチェスとカボチャをカバンに入れる。
「元に戻して」と言ったがマレーは自信がなさそう。「ホーテンスならなんとかしてくれる」。
北米魔法使い協会に来るが、ホーテンスはクローディアから紙っぺら状態にされている。ホーテンスをソファに運んでオリヴァーの状況を話すと「真夜中まで魔法を解かないと、ずっとそのまま」。
マレーたちは劇場に駆け付ける。再オーディションの時間。マレーが一生懸命に杖を振ると、雨が降ったり、応募者の口からカエルがでてきたり、とにかくゴタゴタが発生して大騒ぎ。なにはともあれ時間稼ぎができた。
そこへクローディアとブーツが登場。マレーとアナベルはクローディアからずっと虐められる。「杖のありかを言いなさい」。マレーの杖は、元はクローディアのもの。注、杖はゴタゴタのせいで、マレーが落としてチャーリーが別のところで持っている。
クローディアのいじめは延々と続き、刻々と時刻は過ぎていく。23:30。後は簡単に言えば、ブーツの離反でクローディは自滅。鏡の中に閉じ込められた。
残り15分。セントラルパークに駆け付ける。オリヴァーは依然としてブロンズ。マレーが杖を振って、しかし効果がない。24時をすぎてしまった。
マレーは「すまない、これ以上は無理」と言うので、三人で輪になって願った。嵐が起こった。ダッチェスが元に戻る。馬車が元に戻る。そしてオリヴァーが元に戻った。
ジェリーに電話して大急ぎで劇場に駆け付ける。公演が行われようとしてる。マレーが杖を振る。主役がケガをする。主役は「公演は中止」と叫ぶが、かねてより嫌味な性格が嫌われていた主役は外されてオリヴァーが主役として公演する。大喝采。
注、最後の部分はストーリーがあいまいで、再オーディションは行われず、直接本公演に登場する。しかしその公演は24時を過ぎて開始される。
■ 蛇足
アマンダ・プラマー。「フリージャック/Freejack(1992)」レーサーが未来に連れ去られる。かっての恋人がレーサーを助ける。
◆ キャスリーン・ターナー
(1981)白いドレスの女/Body Heat
(1988)スイッチングチャンネル/Switching Channels
(1991)私がウォシャウスキー/V.I. Warshawski
(1983)二つの頭脳を持つ男/ The Man with Two Brains
(1984)ロマンシング・ストーン/Romancing the Stone
(1985)女と男の名誉/Prizzi's Honor
(1985)ナイルの宝石/The Jewel of the Nile
(1986)ペギー・スーの結婚/Peggy Sue Got Married
(1988)偶然の旅行者/The Accidental Tourist
(1989)ローズ家の戦争/The War of the Roses
(1992)心の扉/ハウス・オブ・カード/House Of Cards
(1993)アンダーカバーブルース/子連れで銃撃戦/子連れスパイ危機一発/UNDERCOVER BLUES
(1994/シリアル・ママ/Serial Mom
(1997)シンプル・ウィッシュ/Simple Wish
(1999)ベイビートーキング/ Baby Geniuses