■ Body Heat(1981)弁護士のネッドは野外コンサートでマティに出会った。そして深い仲になる。


製作:1981年、脚本:ローレンス・カスダン、監督:ローレンス・カスダン   予告編   予告編  


■ あらすじのあらすじ

弁護士のネッドは人妻のマティと知り合い深い仲となった。

マティが夫のエドモンドを怖れていることもあり、二人でエドモンドを殺害した。

エドモンドの財産がマティに転がり込んだが、マティはボート小屋で爆殺された。ネッドはマティ殺害犯として逮捕された。

しかしネッドは刑務所の中で、マティが生きていることに気がつく。
 


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 ネッド・ラシーン(ウィリアム・ハート) 弁護士
 マティ・ウォーカー(キャスリーン・ターナー) 一番悪い女(笑)
 エドマンド・ウォーカー(リチャード・クレンナ) マティの夫
 ピーター・ローレンスティーン(テッド・ダンソン) ネッドの同僚
 オスカー・グレイス(J・A・プレストン) 検事、ネッドの友人
 テディ・ルイス(ミッキー・ローク) ネッドが弁護した人物、爆弾の専門家
 メアリー・アン・シンプソン(キム・ジマー) マティの親友
 ローズ・クラフト(ラナ・サウンダース) エドモンドの妹
 ヘザー・クラフト(カローラ・マクギニス) ローズの娘
 マイルズ・ハーディン(マイケル・ライアン) 弁護士
 マイケル・グレン(トム・シャープ) 弁護士

本作は、キャスリーン姐さんの映画初出演作である。ストーリーはシンプルで無駄がない。リリース時は全米初登場一位になったそうである。キャスリーン姐さんの悪女ぶりに拍手っ!
 


■ あらすじ

冒頭の場面。場所はフロリダ、暑い夏。弁護士のネッド・ラシーン(ウィリアム・ハート)はある女性と一晩を過ごしたところである。女性は「私は用済みなんでしょ?」と笑いながら話す。この場面でネッドがどのような人物であるかを表現している。

ネッドは野外コンサートの会場でマティ・ウォーカー(キャスリーン・ターナー)を見かけ話しかけた。少しだけ話すが、マティは「夫がいるの、相手は要らないわ」と言ってあまり相手にしない。しかし夫は留守で週末だけ帰ると明かす。

「パインヘヴンの運河沿い?」と聞くと否定はしない。マティの服に飲み物がかかって、ネッドがトイレにティッシュを取りに行っている間にマティは姿を消した。

ネッドはマティから聞いた家のあたりをうろついている。バーのカウンターでマティが飲んでいる。ネッドは隣に座る。マティは迷惑そうな顔をするが、それなりに話に応答する。

マティの家には風鈴があるという。「なぜ来たの?後悔するだけなのに」。「そろそろ帰るわ」。「風鈴が見たい」と行ってみると豪邸である。

二人で二階のベランダで風鈴を見た。ベランダからボート小屋が見える。その向こうは運河。マティの顔を触ろうとすると「帰ってよ。通しちゃってごめんなさい」と言ってネッドを外に出して扉を閉める。

ネッドは外をうろついている。マティの姿が見え隠れてしている。突然ネッドは、ガラス戸を壊して入り、マティを抱く。

観客の立場で見ていれば、ネッドはマティに嵌められたのが一目瞭然。その後は何度も二人は寝るが、もうここは一直線である。

以降も二人の関係は続いていく。そしてマティは夫のことを少しずつ話していく。エドモンド・ウォーカー(リチャード・クレンナ)。「株や不動産や土地をやっているらしい」「でも夫は何も言わない」「私、怖いの」。

ネッドが「別れればいい」と言うと「そういうわけにはいかないの」。「契約があって、離婚したらわずかしかもらえない」。

そして「彼が死ねばいいと思っちゃう」「話すと現実になりそう」と言う。もうここでネッドは催眠術にかかってしまっている。

ネッドはレストランに行くが、ウォーカー夫妻に会う。少し話してマティは席を外す。エドモンドはマティを何も分からない馬鹿な女のように言う。そして「マティが浮気したら相手を殺す」。現在の状況に当てはめれば相手とはネッドである。

マティがネッドの事務所の前にいた。「彼が今朝までいたの。夫が怖い」「彼を殺そう、こうなる運命だ。殺す方法も考えた」「本気なのね」。弁護士の言動とは思えないな。

夜、マティとエドモンドがベッドにいる。「眠れない」「私も眠れない」。階下で音がした。「誰かいる」。エドモンドは拳銃を取り出して階段を下りて一階をチェックする。

二階からマティが「拳銃を持ってるわ」と叫ぶ。拳銃が叩き落されて取っ組み合いになるが、ネッドがエドモンドを棒で殴り殺す。死体を別の場所に運んで爆弾とガソリンで処理する。「当分、お別れだ」。

マイルズ・ハーディン(マイケル・ライアン)という弁護士からネッドに電話がかかってくる。エドモンドの件である。マティとエドモンドの妹ローズ・クラフト(ラナ・サウンダース)が同席する。

遺言書があり、マティとローズの娘ヘザーに半分ずつ分与という記述がある。実は以前の遺言書があり、その遺言書は書き換えられたものである。以前の遺書と新しい遺言書は、内容はほとんど同じである。

しかし新しい遺言書のヘザーの部分にはフロリダの法律では許容されない用語が使われている。なのでその部分は無効になるということらしい。すなわち遺産はすべてマティに渡ることになる。

なぜネッドに電話がかかってきたかと言えば、新しい遺書はネッドの事務所の用紙が使われている。立会人はメアリー・アン・シンプソンとネッドとなっている。ネッドは身に憶えがない。 メアリー・アンはヨーロッパに旅行中とのこと。

事件の早朝、誰かがネッドが泊っているホテルに電話を掛けたことも分かった。そして(当然ながら)不在であった。誰が掛けたのかは明示されないが、マティであることは明白。これでネッドのアリバイが崩れた。

事態は明らかである。ネッドの同僚は「危険な女だ」「あの女は一流のワルだ」と注意する。しかしマティに「一つだけ信じて、愛してるわ」「一緒に暮らせるわ」と言われると抗弁できない。

しばらくしてマティから電話があった。「うまく行きそうよ。でも問題が一つあるの」。家政婦がエドモンドのメガネを自宅で発見して、脅迫されているとのこと。そして「話をつけた。ボート小屋にメガネがある。行って調べてみて、衣装ダンスの中」。注、この時、マティは別の場所にいる。

ネッドは拳銃を持って、ボート小屋に行ったが、小屋には入らず戻ってきた。マティが現れた。「(財産が)振り込まれたわ。すぐに出発できる」。ネッドが拳銃を見せると「(メガネは)なかったの?」。注、小屋に入らなかったのは、この時点ではさすがに「嵌められたかも?」と感じていたため。

マティがボート小屋に走っていく。ネッドは追いかける。ボート小屋で大きな爆発が起こった。

ボート小屋で死体が発見され、めちゃくちゃだったが、歯型を送って調べると、確かにマティ・タイラーのものであった。

ネッドは刑務所にいる。「マティは生きている」と言って、送付されてきたマティの高校の卒業アルバムを見ている。一ページずつめくって顔を確認していく。

マティ・タイラーはメアリー・アン・シンプソン。メアリー・アン・シンプソンはマティ・タイラーであった。

そしてエンドクレジットでは、マティ(?)がリゾート地で保養している。
 


■ 補足

◆ エンジンが不調

ネッドがパインヘヴンのバーでマティを見つけて話したときに「エンジンが不調なのよ」「治してやる」「エンジン専門?」と微妙な会話をする。

◆ ヘザーの相続分

マティは「ヘザーに相続分がある、それが我慢できない」と言って「遺言書を書き換えて」と言うが、マイケル・グレン弁護士に「止めておいた方がよい」と忠告された。

それで自力でネッドの事務所の用紙を使って書き換える。

◆ メアリー・アン・シンプソン

全体を見ればわかるが、マティは本当はメアリー・アン・シンプソン、そしてメアリー・アンがマティ・タイラー。しかしマティではない本物のメアリー・アンが登場する。

1.メアリー・アンがマティの家の外にいる。ネッドが訪ねてきて、メアリー・アンをマティと誤解する。「抱いてやろうか?」と声をかけるが別人。マティが現れて「メアリー・アンは親友なの」と紹介する。メアリー・アンは、すぐに出ていく。

2.メアリー・アンはエドモンドの遺言書の書き換え時の証人。もう一人はネッド。ネッドの筆跡はマティが偽造したもの。ではメアリー・アンの筆跡は?これは明示されないが、マティ以外にはありえない。

3.エドモンドが死亡してエドモンドの遺言書が確認される時には、メアリー・アンはヨーロッパ旅行中となっている。だがしかし出国履歴は確認できない。

4.ボート小屋での爆殺。ここでメアリー・アンは殺される。そして本来のマティ・タイラーとして確認される。

実は1.の場面は不要。というよりも論理破綻。マティは現れた女性を「メアリー・アン」と紹介するが、メアリー・アン自身は、自分が本当はマティ・タイラーであることを知っているから。

ボート小屋で爆殺される時は、ボート小屋ですでに殺されていたか、監禁されていたかのどちらかである。前者ならば、死亡推定時刻が違うはず。後者ならば、縛っていたロープなどが発見されるはず。

◆ メガネ

エドモンドのメガネがエドモンドの死体が発見された場所ではなく、自宅で発見されるのが一つのポイント。

マティの言うことを信用すれば、このメガネの所在で家政婦に脅されることなる。

家政婦が本当に脅したかどうかは問題ではなく、マティが「家政婦に脅された」と言ったことがポイント。実際家政婦は一度も画面に登場しないし、マティの他は誰もメガネのことを問題にしていない。本作を素直に読めば、これもマティの偽装。

ではエドモンドは、その時にメガネをしていたのか?夜中ベッドにいるときは、当然メガネはしていない。「物音がする」と下に下りていくときは、メガネをしている。そして格闘の最中にメガネが外れる。

なのでメガネが外れているのを知って、マティが後で、メガネの件を思いついたというのが真相だろう。

◆ ボート小屋での爆発

マティの本来の計画では、ネッドをボート小屋に「メガネを取ってきて」とおびき寄せて、ネッドとメアリー・アン(本当はマティ・タイラー)を爆殺する。

爆弾はドアを開けると爆発するように仕掛けてある。爆弾を仕掛ける方法はテディに教えてもらった。

しかしこの時点でネッドは「罠に嵌められたかも?」と思っているので、ボート小屋には入らない。拳銃も持っている。

そこに現れたマティがボート小屋に走っていく。ボート小屋には入らずにドアに仕掛けた爆弾を爆発させて、自分は失踪する。

◆ マイク・グレン

上のあらすじには書かなかったが、事件後マイク・グレンという弁護士が現れる。

マイク・グレンがマティに弁護士としてネッドを紹介したとのこと。

しかし弁護士はいくらでもいるわけでネッドである必然性はない。まさか「女好きの騙しやすい弁護士を」と言ったわけでもないだろう。

◆ テディ・ルイス(ミッキー・ローク)

ネッドがかって弁護した人物で、ネッドに恩義を感じている。爆弾の専門家。

ネッドは殺害したエドモンドを別の場所に移動して、そこで死体を爆弾で処理するのだが、その方法をテディに相談する。

テディは「俺が代わってやろうか」と言うが、それはそのまま立ち消えになる。

さらにマティがテディを「ネッドに頼まれた」と言って、ドアを開けたら爆弾を爆発させる方法を問い合わせる。最後のボート小屋に仕掛けられる。

◆ 遺言書を無効にする方法

ネッドとマティが寝ているときにマティが「ある弁護士事務所に雇われていて、遺言書を無効にする方法を知った」と明かす。

そして「悪女と思われても仕方がないわ。一つだけ信じて。愛してる。一緒に暮らせるわ」と言う。いやもちろんこれも嘘だけど。

◆ 「あの女は超一流のワル」

ネッドに家でピーターとオスカーが、ネッドに「あの女は超一流のワル、どうしてあんな女と」と忠告する。

しかしネッドは忠告を聞き入れない。
 


■ 蛇足

最初のころ、野外コンサートの場面。ネッドが客席の後ろの方に来ると、マティが前の席の方から立って出てくる。これは「マティがネッドを嵌める」と言うには、ちょっと無理がある。まあいいか。

犯行の前日。ネッドが車を降りたところで、ピエロ姿が運転している車が通りかかる。ネッドはそれを目で追いかける。しかし意味不明。

キャスリーン姐さんは、ウィリアム・ハートとは「偶然の旅行者/The Accidental Tourist」でも共演している。ジーナ・ディヴィスも共演。

本作はキム・ベイシンガー,リチャード・ギア,ユマ・サーマンの「愛という名の疑惑/Final Analysis」と「他人を利用して夫を殺し財産を奪う」という点で非常に似ている。本作では弁護士、「Final Analysis」では精神分析医。そして二つとも「夫を悪人として描いている」という点がわずかながら惜しい点である。夫が善人であれば、妻の悪人ぶりがさらに際立つ。

単に夫殺しというもので私が見たのはジャック・ニコルソン,ジェシカ・ラングの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」。
 


■ 出演作


リチャード・クレンナ。「暗くなるまで待って Wait Until Dark(1967)」「ランボー First Blood (1982)」

ミッキー・ローク。「ホワイト・サンズ/White Sands(1992)」。
 

 

キャスリーン・ターナー
(1981)白いドレスの女/Body Heat
(1988)スイッチングチャンネル/Switching Channels
(1991)私がウォシャウスキー/V.I. Warshawski
(1983)二つの頭脳を持つ男/ The Man with Two Brains
(1984)ロマンシング・ストーン/Romancing the Stone
(1985)女と男の名誉/Prizzi's Honor
(1985)ナイルの宝石/The Jewel of the Nile
(1986)ペギー・スーの結婚/Peggy Sue Got Married
(1988)偶然の旅行者/The Accidental Tourist
(1989)ローズ家の戦争/The War of the Roses
(1992)心の扉/ハウス・オブ・カード/House Of Cards
(1993)アンダーカバーブルース/子連れで銃撃戦/子連れスパイ危機一発/UNDERCOVER BLUES
(1994/シリアル・ママ/Serial Mom
(1997)シンプル・ウィッシュ/Simple Wish
(1999)ベイビートーキング/ Baby Geniuses