■ House Of Cards/ハウス・オブ・カード/心の扉
サリーは父親が死亡した後、言葉を発しなくなった。
母親のルースは、精神科医に相談するなどしたが、効果がかなった。精神科医も分からないようである。
ある時サリーはトランプのカードで一メートルくらいの塔を作った。


製作:1992年、脚本:監督:マイケル・レサック   予告編   予告編   予告編  


■ はじめに

本作は、言ってみればキャスリーン姐さんらしくない作品である。私が持っているイメージとはちょっと違う。私のイメージは、罵詈雑言を飛ばし、殴り合いをして、拳銃を撃ちまくるというものである。最初に見た「私はウォシャウスキー」に影響されているのだろう。

タイトルの「House Of Cards」は、トランプカードで作られた塔を意味している。
 


■ あらすじ

ルース・マシューズ(キャスリーン・ターナー)は、考古学者の夫がマヤのピラミッドから転落死した後、子供のマイケル(シロー・ストロング)、サリー(アーシャ・メニーナ)とともに帰国した。サリーは6歳。

ルースは隣人のリリアン(パーク・オーヴァーオール)と再会し、また自分の建築の仕事に復帰した。マイケルも元の友達と遊んでいる。リリアンとは仲が良いようで、よく訪ねてくる。またリリアンの男の子とマイケルは友達同士である。

しかしサリーが言葉を発しなくなった。もともとはとてもおしゃべりな子供で、またメキシコ滞在中にスペイン語も話せるようになっていた。マイケルが友達遊んでいるところをじっと見ている。ルースやマイケルが話しかけても黙っている。顔も無表情である。

マイケルが友達とボールで遊んでいたところ、ボールが屋根の雨どいに引っかかってしまった。マイケルは高いところが得意なサリーにボールを取ってくるように言った。サリーはなんなく屋根に上ってボールを取った。注、この家は二階建+屋根裏部屋であるが、天井が高く、かなり高いとの印象を受ける。

しかしそれを見たルースが慌てて、屋根裏部屋から屋根に出たところ、サリーが奇妙な叫び声を発し始めた。止まらない。

ちょうどその時に、相談していた精神科医のジェイク・ビアランダー(トミー・リー・ジョーンズ)が駆け付けた。マイケルに「今までのルースと何か違ってないか?」と聞いて、若干の試行錯誤の後、ルースが被っている帽子の方向を直したところ、サリーの叫び声がピタッと止まった。

サリーは屋根から難なく降りるが、ルースは落ちそうになり助けてもらう。

ジェイクによれば、自閉症児は通常と何か違うものを見ると、そのようになることがあるらしい。以降ルースはジェイクの病院にサリーを連れて行って診てもらうが、なかなか好転しない。

ルースが仕事で建築現場に、マイケルとサリーを連れていく場面がある。二人は外で待っていて、ルースは打ち合わせをしている。マイケルが目を離したすきに、サリーは現場の鉄塔によじ登る。まったく危なげなくずんずん登っていく。驚いた現場の作業者がクレーンを使って追いかけて、サリーを抱いて降りてくる。この件で、ルースは役所から注意を受ける。

サリーはジェイクの病院に通って治療を続けている。ただルースはサリーが心配ではあるが、ジェイクとはあまり反りが合わない。自分の子供が自閉症であるという事実を認めたくないこともあるようである。

サリーの症状は改善が見られないが、ある時サリーは自宅の二階でトランプカードを使って塔を作った。高さは1.5メートルくらい。カードがらせん状に組みあがっている。微妙なバランスを保っており芸術品のようである。サリーはその塔の中にいる。それを見て驚いたマイケルがルースに知らせて、ルースはその写真を撮る。

感銘を受けたるルースは、その写真を元にパソコンでヴァーチャルリアリティのプログラムを使ってシミュレーションする。そしてさらに、自宅の敷地内に、実物の塔の建設を始める。長方形の板を多数用意してローブで結び、支えを作って組み上げていく。作業員も使う。板は1メートル×2メートルほどもあるので、塔はかなりの大きさ・高さである。その様子をマイケル、サリー、リリアンが見ている。

ある日ルースは、その塔のそばで寝てしまう。夢を見る。サリーと二人で塔に登る。サリーがらせんを登りながらルースに「私と来て、怖がらないで」と言う。注、言葉で言うのではない。

朝になって目が覚めると、ジェイクとマイケルがサリーを連れてやってくる。外をさまよっていたそうである。

サリーの無表情だった顔が、元に戻っている。ルースが抱きしめるとサリーは「パパと会いたかった」と言う。ジェイクが名前を聞くと「サリー」と答え、さらに「汚いシャツね」と言う。マイケルが「お前は困ったヤツだ」と言うとサリーは舌をだして反抗する。そしてマイケルとサリーは手をつないで歩いていく。
 


■ サリー

サリーは、高いところが好き、恐がらない。父親がピラミッドから転落したことと合わせて、本作のテーマとなっている。

マイケルが友達と飛ばしていたラジコン飛行機が屋根に引っかかるが、マイケルに依頼されていないのに取ってきて、黙ってマイケルに渡す。

上記で紹介した屋根のボールと建築現場の塔の件。それとカードの塔。

学校に行って、勝手に木の上に上る。他の男の子も木に登って落ちる。

逆にルースは高いところが不得手。

ジェイクの病院の中で、サリーが自分に絵の具を塗って隠れる場面がある。後ろの木と一緒になっていて、ジェイクはしばらくサリーを見つけることができない。この件でジェイクは、自分の治療法に疑問を抱く。
 


■ サヴァン症候群

ルースはジェイクの病院で知恵遅れの子供同士が、数桁の素数を言い合っている場面に遭遇する。ジェイクは、それを否定する。

これは「サヴァン症候群」と言われるもの。最初に報告したのはフランスの医師のジョン・ラングドン・ダウン。「ダウン症」の報告者でもある。

知恵遅れの子供が、あるカテゴリにおいて異常な才能を発揮する「病気」である。

瞬時のカレンダ計算や数値計算、絵画、彫刻などの才能などが知られている。日本人では山下清が例。本作でも絵画が上手な(しかし知恵が遅れている)子供が出てくる。

書籍としては「なぜかれらは天才的能力を示すのか―サヴァン症候群の驚異」(978-4794203854,草思社)を参照。映画では「レインマン」がある。

 


■ 蛇足

画面が全般に暗く画質が悪い。私が見ているのはVHS字幕。

本作はわりと観念的で理屈っぽい。サリーの父親がサリーに「物事をよく見るためには言葉はいらない」などと話す場面がある。その他にいろいろ話す。本作は、これがサリーの自閉症の原因と示唆している。しかしこのようなことは不要であろうと思う。

マイケルがなかなかよい。なんでもない言動・行動で、それとなくサリーやルースを触れ合う場面が良い。なんでもないようであるが、しかしマイケルがいなければ本作は成立しない。

ルースがヴァーチャルリアリティのプログラムをパソコンで動かす場面がある。画面に"VIRTUAL REALITY"と表示されている。サリーが作った塔をシミュレーションするために使用する。本作は1992年。Windows93の前。まだヴァーチャルリアリティの時代ではないが、用語自体は、ずっと以前からあったようである。

「これが自閉症か?」と言う方もいらっしゃるだろうが、映画なので、そのあたりは気にする必要はない。

ルースは「建築家」ということになっている。建築現場で打ち合わせして現場責任者に「ひどい設計ね」と話しているので、日本でいえば「建築士」ではなく「施工管理士」というところ。

パーク・オーヴァーオール。キャスリーン姐さん出演の「アンダーカバー・ブルース/子連れで銃撃戦(1993)」。
 


■ 出演作

トミー・リー・ジョーンズ。ジェシカ・ラングと共演した「ブルースカイ/Blue Sky(1994)」
 

キャスリーン・ターナー
(1981)白いドレスの女/Body Heat
(1988)スイッチングチャンネル/Switching Channels
(1991)私がウォシャウスキー/V.I. Warshawski
(1983)二つの頭脳を持つ男/ The Man with Two Brains
(1984)ロマンシング・ストーン/Romancing the Stone
(1985)女と男の名誉/Prizzi's Honor
(1985)ナイルの宝石/The Jewel of the Nile
(1986)ペギー・スーの結婚/Peggy Sue Got Married
(1988)偶然の旅行者/The Accidental Tourist
(1989)ローズ家の戦争/The War of the Roses
(1992)心の扉/ハウス・オブ・カード/House Of Cards
(1993)アンダーカバーブルース/子連れで銃撃戦/子連れスパイ危機一発/UNDERCOVER BLUES
(1994/シリアル・ママ/Serial Mom
(1997)シンプル・ウィッシュ/Simple Wish
(1999)ベイビートーキング/ Baby Geniuses