■ Pickup on South Street
スパイの単なる走り使いをしている女性からスリが機密情報が入った財布をスリ取った。
騙されていたと知った女性はスリと一緒にスパイ組織と対決する。


製作:1953年、脚本:サミュエル・フラー、監督:サミュエル・フラー   予告編   予告編   フル動画


■ はじめに

「拾った女」という邦題は変。場所はニューヨーク。

◆ 登場人物
 キャンディ(ジーン・ピーターズ) - スパイの使い走り
 スキップ(リチャード・ウィドマーク) - スリ
 モー(セルマ・リッター) - 情報屋
 タイガー(マービン・バイ) - 警部
 ザラ(ウィリス・バウチイ) - FBI
 ジョーイ(リチャード・カイリー) - スパイ

◆ スキップ

スキップは、今まで三回逮捕されており、もう一度捕まると終身刑というルールがある。出所して一週間。

◆ モー

モーは昔は悪いことをしていたが、今はネクタイを売っている。しかしまだいろいろな裏情報に通じており、FBIと警察、キャンディにスキップの情報を提供する。

「無縁墓地には入りたくない」としきりに言う。そのために気力を振り絞っている。

◆ キャンディ

スパイのジョーイと一緒に住んでいる。自分がスパイの使い走りをしているとは知らない。

しかし事情を知ってからは、積極的に行動する。
 


■ あらすじ

◆ マイクロフィルムをスリ取られる

キャンディは地下鉄に乗ってマイクロフィルムを届けに行く。中身はなんであるかは知らずに、単にジョーイに命令されたから。

警察とFBIはジョーイやキャンディの動向を掴んでおり、タイガーとザラはキャンディのそばで監視している。すぐに逮捕しないのは、相手にマイクロフィルムを届けたタイミングで一網打尽にするためである。

別の車両からスキップが移動してきてキャンディのそばに立った。新聞を広げてキャンディのバッグに手を伸ばした。キャンディは気がつかない。

スキップはキャンディのバッグから財布をスリ取って次の駅で降りた。タイガーとザラは気がついてスキップを追いかけようとしたがドアが閉まって取り逃がした。

キャンディは目的の駅で降りてから初めてスリ取られたことに気がついた。

キャンディはジョーイに電話した。「戻ってこい」と言われて戻っていった。注、財布を盗まれたのに電話代や帰りの電車賃があったのかは不思議だが許す。

◆ スリ取った犯人を捜す

タイガーとザラは警察署に戻り犯人を捜そうとした。警察ではスリのリストを持っているものの、一人ずつあたっていくのは気が遠くなる作業である。

そこで警察の手法としてはルール違反気味ではあるが、スリに詳しいモーに接触した。

モーは手口を聞いて八人を選び出した。二人はスリの情報に乗っている顔と地下鉄の中で記憶した顔を照合して、犯人はスキップであることを突き止めた。

スキップの居場所をモーに聞いて出かけた。

◆ スキップは警察に連れていかれる

スキップは港の釣り船屋のところに住んでいる。スリ取ったものは、ビニールにくるんで、それを水の中に沈めて隠している。

タイガーとザラが訪ねてきた。型通りの応酬の後、スキップはタイガーに警察署に連れていかれる。ザラは残って捜査をする。

警察署で「出所して一週間で、スリをするのか?」「証拠はあるのか?」と押し問答。

タイガーは埒が明かないので、相手はスパイで、スリ取ったものは「政府の極秘情報のフィルム」と明かす。

また「協力すればスリの件は見逃す」と言うが、結局スキップであるとの証拠はないので、スキップを釈放した。

◆ スキップは図書館に行く

スキップは、スリ取ったマイクロフィルムを水の中から取り出した。

それをもって図書館に行く。もちろん尾行されているので、複雑な手順で尾行を撒いた。

過去の新聞のマイクロフィルムを見る手続きをして、持ってきたマイクロフィルムを見てみた。なにやら記号と図が描かれている。

内容はスキップには分からなかったが、機密情報らしい匂いがした。

◆ キャンディも犯人を探す

キャンディはジョーイのところに戻った。

ジョーイは怒ってて「取り戻してこい」と言う。貴重な化学式の情報らしい。キャンディはその情報がなにやら秘密めいたものであることを知った。

「そんなことできるわけないでしょ」と喧嘩するが、なんとか犯人を探すことになる。

数人を辿ってライトニング・ルイという情報屋に聞いた。そしてモーの名前と住所に辿り着いた。

キャンディはモーのアパートへ行った。「地下鉄の中で私の財布をスリ取ったスリを探している」。

すでに警察とFBIがモーに接触しており、モーはキャンディにスキップのことを教えた。

◆ キャンディはスキップを訪ねた

もう夜である。スキップが住んでいる釣り船屋を訪ねた。中は暗い。ドアを開けると突然殴り倒された。

スキップは気絶したキャンディにビールをかけた。

キャンディは気がついた。「今朝私からスリ取った財布を返して」「俺がスリに見えるか」「見えるわ」。

「兄の写真のフィルム」と言ったが、スキップには嘘と分かっている。

その後にスキップはキャンディにキスをする。キャンディはスキップに適当にあしらわれて帰っていった。

キャンディはジョーイのところに戻った。「住所を教えるから自分でやって」と(スキップではなく)モーの名前と住所を教えた。

しかし500ドルを渡されて「必ず持って帰ってこい」と言われて、またスキップのところへいくことになった。まるで子供の使いだな。

またキャンディはスキップのところに行ったが、今度は「いくら持ってきた?」「500ドル」「25000ドル持ってこい」と追い返された。

追い返されてジョーイの部屋に戻ってくると、ジョーイの他に二人の男がいる。ジョーイがフィルムの件で脅されている。キャンディに対する高飛車な態度とは打って変わってビクビクしている。

このあたりでキャンディはスキップの話や二人組とジョーイの態度から、スパイが機密情報を持ち出そうとしていることに気がつく。

ジョーイが拳銃を出して「ヤツ(スキップ)の住所を教えろ」と言うので偽の住所を教えた。注、しかしモーの住所は教えてしまっている。

この後キャンディはモーのところに行き、状況を話して「スキップの住所は教えないで」と言った。

ここからは今までのキャンディとは違って、積極的に行動する。

◆ モーが殺された

スキップがカフェにいるとモーが訪ねてきた。「家には近づかないで。それとスリはもう止めて」と言って出ていった。

モーが帰るとジョーイがいた。注、ジョーイはキャンディに教えられたスキップの住所が偽であったために、モーのところへ来た。

「スリの名前と住所を知りたい」と言われると「忘れた、思い出すのは数日かかる」。さらに追及されて「スパイのあんたはフィルムを探している」と答えるとモーはジョーイに拳銃で撃たれた。

スキップはモー殺害の件で警察に捕らえられたが、アリバイがあったので、釈放された。

モーの遺体が無縁墓地に埋葬されようとしている。そこにスキップが現れて遺体を引き取って、埋葬した。注、モーは「無縁墓地には入りたくない。立派な墓に」と言っていた。立派な墓かどうかはともかくスキップによって無縁墓地行きは免れた。

◆ キャンディがフィルムを奪い取る

スキップが自宅に戻ったところ、キャンディがいた。「モーが死んだ。私のせいだわ」と泣いている。注、キャンディはジョーイにモーの住所を教えた。

キャンディは一晩中歩いていたらしい。

スキップはジョーイの住所を聞いて、フィルムを水の中から取り出してジョーイにところに行こうとした。

キャンディはスキップを後ろから殴り倒した。(自分が殴ったのだけれど)「スキップ、大丈夫?」と駆け寄り、フィルムを奪い取った。すごい!キャンディ。注、でも殴り倒すんだったら、なぜジョーイの住所を教える?

キャンディは警察に行った。「スキップに頼まれた」と(嘘を)言ってフィルムを渡した。

タイガーは最初はまじめに取り合わないので、「財布を盗んだとか、そんな話をしているんじゃないの。スキップは生まれ変わろうとしてるのよ」という。

するとタイガーは「フィルムを持ってジョーイのもとに戻れ」と言う。危険な任務である。

◆ キャンディが撃たれた!

キャンディはジョーイの部屋に戻った。建物の周りには警察が配備されている。

ジョーイが戻ってきた。「なぜ偽をの住所を教えた?」「人を殺したら罪になるから」。

ジョーイにフィルムを渡す。ジョーイはフィルムをチェックして「1フレームない」と言う。注、1フレームを抜く場面はないが、スキップがやったはず。

「ヤツはどこだ」「引っ越した」と言って逃げ出そうして拳銃で撃たれて倒れた。ジョーイはキャンディのバッグの中のメモからスキップの住所を知った。

警官隊が突入した。ジョーイは荷物用エレヴェーターに隠れて逃げた。刑事一人が死亡、キャンディは救急車で運ばれ、けっきょくジョーイは逃げ切った。

◆ ジョーイがスキップの家へ

殴られて拳銃で撃たれたキャンディがベッドの上で看護師に「スキップはまだなの?」と焦っている。スキップの住所がばれてしまったからである。

スキップがきた。「大丈夫か?」「今は家に戻らないで」「なぜ殴られた?」「住所を教えなかったから」。

ここでキャンディは「死んだ反逆者より生きているスリが好き」と意味不明の言葉。ともかくスキップが好きになったらしい。

スキップはキャンディにキスして出ていく。

スキップの家。だれか来たので、スキップは奥に隠れた。

ジョーイともう一人。スキップを探すが見つからない。「時間がない。フィルムを届けよう」と話している。「(1フレームの)不足分は空港で渡すと伝えろ」。

ジョーイは出ていく。もう一人は残ってフィルムの不足分を探している。

スキップはもう一人には分からないように脱出してジョーイを追いかけた。

◆ スキップとジョーイが格闘

ジョーイはフィルムを受け渡すために地下鉄に乗った。手に新聞を持ったスキップが近づいてくる。スキップはジョーイの内ポケットから拳銃をスリ取った。

ジョーイが下りる。スキップも下りた。

ジョーイがトイレの洗面台の前に立つ。スキップは隣の隣の洗面台の前に立つ。

ジョーイがフィルムを取り出して洗面台の端に置く。二人の間の洗面台の前に来た男が、そのフィルムを取って内ポケットに入れた。

スキップが「1フレーム抜けてるぞ」と言いながら受取人に殴りかかって倒した。ジョーイは拳銃を取り出そうとするが拳銃がない。

ジョーイが逃げ出す。スキップは追いかけて格闘となる。注、受取人がどうなったかは表示されない。

二人は駅構内で大乱闘。ジョーイは線路に降りて逃げる。スキップは追いかけて倒した。

◆ 警察署

スキップは、今までの前科がチャラになった。今まで通りタイガーと「(ジョーイの)拳銃をスリ取っただろ」「イヤ~、やってねえよ」みたいな話をしている。

そばにキャンディがいる。キャンディの顔を見て「きれいに治ったな」と言う。

二人は腕を組んで警察署を出ていった。
 


■ 蛇足

本作はスリとスパイの使い走りという、あまりまともではない人物がスパイと対決していく。この二人が事情を知って、決意を固めて変わっていくところがよろしい。警察とFBIは登場するけれども、ほとんど活躍しない。

キャンディが500ドルをもってスキップを訪ねて行ったが、キスをされて「キスで値段を上げないで」というところは笑える。キャンディがスキップをなぜ好きになるかは割と唐突感がある。


■ 出演作

この時代の映画にはリチャード・ウィドマークは、そこいらじゅうに出演している。ほとんどみんな悪役だけど。

リチャード・ウィドマーク。「死の接吻/Kiss of Death(1947)」「街の野獣/Night And The City(1950)」「人生模様/O. Henry's Full House(1952)」「太陽に向って走れ/Run for the Sun(1956)」「深夜の歌声/Road Houseo(1948)」。

セルマ・リッター。「三十四丁目の奇蹟/Miracle on 34th Street(1947)」「イヴの総て/All About Eve(1950)」「ママは二挺拳銃/The Second Time Around(1961)」。

ウィリス・バウチイ。「復讐は俺に任せろ/THE BIG HEAT(1953)」。
 

 

ジーン・ピーターズ
(1948)海の呼ぶ声/Deep Water/漁師とケースワーカーと孤児
(1948)征服への道/Captain from Casile/恋人ともに新大陸に渡る
(1950)Love That Brute/ギャング・ロマンティック・コメディ
(1951)女海賊アン/Anne of the Indies/捕虜を救って好きになったが裏切られる
(1952)革命児サパタ/Viva Zapata!/メキシコ革命、伝記映画
(1952)人生模様/最後の一葉/O. Henry's Full House/吹雪の中を歩いて肺炎に
(1952)ジャングルの逃亡者/Lure of the Wilderness/冤罪で逃亡し沼地で暮らす
(1953)拾った女/Pickup on South street/スパイ組織との対決
(1953)ナイアガラ/Niagara/殺人犯と一緒に滝に流される
(1953)ヴィッキー/モデル殺人事件/Vicki/ハリウッドに進出しようとしたが殺された
(1954)アパッチ/Apache/ジェロニモ降伏後も白人と戦う
(1954)愛の泉/Three Coins in The Fountain/ローマでのアメリカ人女性三人の恋愛模様