ハリーは往年の名プロレスラーのグレゴリウスと出会い、プロレスの興行を思いついた。
自分が勤めるクラブの経営者のフィルと妻のヘレンから金を借りることができた。
しかしロンドンでプロレス興行を取り仕切っているグレゴリウスの息子クリストが妨害する。
グレゴリウスの弟子のニコラスとクリスト配下のストラングラーの試合を組もうとするが喧嘩となり、ニコラスは手首骨折、グレゴリウスは死亡する事態となって計画は破綻した。
父親が死亡したと知ったクリストは手下を使ってハリーを追いかけた。
製作年:1950、監督:ジュールズ・ダッシン、脚本:ジョー・アイシンガー、原作:ジェラルド・カーシュ
■ はじめに
◆ 登場人物(キャスト)
ハリー・ファビアン(リチャード・ウィドマーク) 客引き
メアリー・ブリストル(ジーン・ティアニー) 歌手、ハリーを好き
アダム・ダン(ヒュー・マーロウ) メアリーを好き
フィル・ナゼロス(フランシス・L・サリヴァン) シルバーフォックスの経営者
ヘレン・ナゼロス(グーギー・ウィザース) フィルの妻
グレゴリウス(スタニスラウス・ズビスコ) 元レスラー
ニコラス(ケン・リッチモンド) レスラー、グレゴリウスの弟子
クリスト(ハーバート・ロム) プロレス興行業者、グレゴリウスの息子
ストラングラー(マイク・マズルキ) レスラー クリスト配下
ファーガス・チルク クリストの弁護士
モリー(エイダ・リーヴ) シルヴァーフォックスの店員
メアリーの歌はジーンではなく別の人とのこと。本作のレヴューで「メアリーの出番が少なくて残念」とある。確かにそのとおり。
■ あらすじ
◆ ハリーは客引き
ハリー・ファビアンはシルヴァー・フォックスというクラブの客引きである。ハリーはいつも「大物になりたい、金持ちになりたい」と分不相応に思っている。そして失敗して何かと金を浪費してしまう。
同じ店の歌手メアリー・ブリストルはハリーが好きである。ハリーがいろいろと騒動を起こして、メアリーに無心に来る。メアリーはハリーを信用はしていないのだが、ハリーを好きなので、いつも金を都合してやっている。ハリーはそれに甘えている。
ハリーとメアリーは同じアパート(の別の部屋)に住んでいる。そのアパートにはアダム・ダンという好青年が住んでいる。アダムはメアリーが好きである。メアリーの気持ちも知っている。メアリーがハリーに金を無心されていることも知っており、それでもメアリーに金を渡してやったりしてメアリーを助けている。
客観的に見れば、ハリーよりもアダムの方がまともな人間なのだが、ともかくメアリーはハリーが好きである。
ついでにクラブの経営者フィル・ナゼロスの妻ヘレンもハリーが好きである。ヘレンはフィルから離れたいと思っている。
◆ ハリーはプロレス興行を思い立った
ハリーは客引きの一環としてプロレス興行の会場に行った。リング上では激しい戦いが行われている。観客は興奮してレスラーを応援している。
しかしその会場で一人の男が、プロレスの在り方を批判して拳を上げている。プロレスの本来のあり方を逸脱していると主張している。
これを見てハリーの野生のカンが働いた。「プロレス興行で大儲けしよう」。
その男がかっての伝説のレスラーのグレゴリウスであると知って、グレゴリウスにいかにも「自分はプロレスのファンであり、グレゴリウスのファンである」という顔をして話しかけた。
本当はプロレスのことにも興味はなかったし、グレゴリウスの名前を知らなかったのはもちろんである。
◆ ハリーは金策に走る
さて会社を立ち上げて興行するためには400ポンドが必要である。注、400ポンドの根拠は不明。ヤマカンかも。
さっそくフィルに掛け合ったが相手にされない。そばにいたヘレンもハリーの都合のいい話に怒った。「400ポンドなんて大金よ。200ポンドでも自分で用意してくれば、フィルが貸してやるわよ」。フィルも納得する。もちろんフィルは「ハリーが200ポンドなんて集められるわけはない」と思っている。
ハリーは知人を訪ねて回った。ハリーとはみんな親しい仲である。しかし金のことは別である。これまでハリーが何度も失敗してきたのを知っている。ハリーは困ってしまった。
それを見たヘレンがそっと話しかけてきた。200ポンドを渡して「クラブの許可証を取ってちょうだい」。ヘレンはフィルと別れて独立したい、しかしヘレンは犯罪歴があるので、許可がおりない。
念のために言っておけば、ヘレンはクラブの許可証のために金を出したのである。ハリーはこれを引き受けた。
このような時にズルい考えが浮かんでくるのはハリーの才能である。ハリーは知人の偽造屋に許可証の偽造を頼んだ。受け取った200ポンドは興行資金にした。
作ってもらった偽造許可証をヘレンに渡し、ヘレンはフィルにタンカを切って出て行き、開店の準備を始めた。
◆ クリストの妨害
ハリーは200ポンドをフィルの前に見せて、約束通りさらに200ポンドを出させた。
ハリーの動きは、グレゴリウスの息子でロンドンのプロレス興行を仕切っているクリストの耳に入る。
クリストはハリーの事務所に押しかけた。しかしグレゴリウスが一緒と知って引き下がった。そしてフィルに圧力をかけた。
◆ ストラングラーの参加
フィルはクリストの圧力を受けて「資金を引き揚げる」と言い出した。ここまでくればハリーは引き下がれない。「人気レスラーのストラングラーとグレゴリウスの弟子のニコラスの対戦」と提案した。
フィルはストラングラーを説得できるとは思っておらず、提案を受けた。
しかしここがハリーのスゴイところである。ハリーはストラングラーがいるレストランに出かけて行って、そばの席でストラングラーの悪口を言った。要は「ストラングラーなんてヘナチョコのレスラーだ」みたいなことを言う。
怒ったストラングラーをさらに挑発してつれてくる。
◆ メアリーから金を奪う
一方フィルはヘレンとハリーの関係を知って怒る。フィルはストラングラーの件をクリストに報告するとともに、ハリーから出資を引き揚げる。
困ったハリーは、今までやってきたように「困ったときのメアリー頼み」とメアリーに頼み込む。しかし大金である。さすがにメアリーは断る。しかしメアリーが出かけた隙にメアリーの金を盗む。
◆ グレゴリウスが死亡する
ストラングラーはグレゴリウスやニコラスと会ったが些細なことから口論となった。興奮して乱闘となった。ニコラスは手首の骨を折るケガをした。
ストラングラーとグレゴリウスの戦いとなる。グレゴリウスはなんとか勝つが、しかしもう年寄りである。興奮したグレゴリウスは心臓に負担がかかり死亡してしまった。
この時点でハリーの興行計画は完全に破綻した。
◆ 許可証の偽造がばれた
一方、ヘレンは開店準備に忙しい。そしてフィルが現れてハリーが破滅したことを知らせた。ヘレンに自分の元に戻るように訴えた。しかしヘレンはフィルを撥ねつけた。フィルは落胆して戻っていった。
開店間際である。従業員の訓練も佳境に入ってきた。
店に巡回の警官が立ち寄ってきた。警官は「念のため」と言って営業許可証を確認する。しかし警官は許可証が偽物であることを見破った。「持ち帰って確認し、後ほど連絡します」と言って帰っていった。
開店できないと分かったヘレンはフィルの元に帰った。
フィルは暗い部屋の中でソファに座っていた。話しかけるが答えない。肩を揺するとフィルは床に転がった。「遺産はモリーに譲る」との遺言書があった。
◆ ハリーは殺された
父親が死んだと知ったクリストは、手下にハリーを探すように指令した。そして1000ポンドの懸賞金。
ハリーは必死で逃げ回る。ここがわりと長い。
事態を知ったメアリーは、それでもハリーを追いかけて、持っていた金を渡してハリーを逃がそうとする。ここにいたってハリーは「自分をクリストに売れば1000ポンドが入る」と言う。しかしメアリーにとっては受け入れられる案ではない。メアリーは立ち去った。
クリストが見ている。ハリーはメアリーに向かって「よくも俺を1000ポンドで売りやがったな」と叫ぶ。メアリーに懸賞金を渡すためである。
ここでストラングラーが現れてハリーを殺し、テムズ川に死体を投げ捨てた。ストラングラーは警察に逮捕された。クリストは立ち去った。
残っていたメアリーの前にアダムが現れて、メアリーを抱きしめた。
■ 出演作
◆ リチャード・ウィドマーク
(1947)死の接吻/Kiss of Death
(1950)街の野獣/Night And The City
(1953)拾った女/Pickup on South street
(1954)折れた槍/Broken Lance
(1956)太陽に向って走れ/Run for the Sun
(1948)深夜の歌声/Road House
(1954)悪の花園/Garden of Evil
(1948)廃墟の群盗/Yellow Sky
(1949)ハリケーン観測/Slattery's Hurricane
◆ ジーン・ティアニー
(1942)ベンジャミンの復讐/Son of Fury
(1944)ローラ殺人事件/Laura
(1945)哀愁の湖/Leave Her to Heaven
(1946)呪われた城/Dragonwyck
(1946)剃刀の刃/The Razor's Edge
(1950)街の野獣/Night and the City
(1949)疑惑の渦巻/Whirlpool
(1943)天国は待ってくれる/Heaven Can Wait
(1951)脱獄者の秘密/The Secret of Convict Lake
(1950)歩道の終わる所/Where the Sidewalk Ends
(1941)女傑ベル・スター/BELLE STARR
(1942)デパートガールが詐欺師に変身/Rings on Her Fingers