■ Slaves of Babylon
紀元前、多数のユダヤ人がバビロンに捕らえられていた。
ユダヤの賢人ダニエルはネイハムという若者に、バビロンを解放する王となる人物を探すように命じた。
苦労の末ネイハムはキュロスという羊飼いの若者を探し当てた。
しかしキュロスは自分が真の王であるとは知らず、また欲もなかった。


製作年:1953、監督:William Castle、脚本:DeVallon Scott、原作:DeVallon Scott


■ はじめに

◆ 登場人物(キャスト)

 ダニエル(モーリス・シュワルツ) ユダヤの賢人
 ネイハム(リチャード・コンテ) ユダヤの青年
 レイチェル(ルース・ストーリー) ネイハムの恋人

 ネブカドネザル(レスリー・ブラッドレー) バビロンの国王
 ベルシャザル(マイケル・アンサラ) 国王の息子

 キュロス(テリー・キルバーン) 羊飼いの青年
 キュロスの育ての父親(ウィートン・チェンバーズ)
 キュロスの育ての母親(ベアトリス・モード)
 アスティガス王(ロバート・グリフィン) メディア国王、キュロスの真の祖父
 マンダネ(?) キュロスの真の母親、アスティガスの娘

 パンシア(リンダ・クリスチャン) 王女(どこの?)

リチャード・コンテとルース・ストーリーは本作当時は夫婦である。

◆ 本作の歴史的背景

紀元前586年、ユダ王国が新バビロニア王国によって征服されて、多数のユダヤ人がバビロンに連行された。いわゆるバビロン捕囚。

紀元前539年、イランのキュロス(二世)の軍隊がバビロンに進撃し、捕らえられていたユダヤ人を解放した。

以降の記述は本作とは無関係だが、

この事件によってゾロアスター教の教義がユダヤ教に大きな影響を及ぼした。

新約聖書にあるイエスの誕生を祝福しにきた東方の三人の博士(マギ/magi)は、ゾロアスター教の僧侶である。これは新約聖書が書かれた当時にあっても、ゾロアスター教とキリスト教が友好関係にあったことを示している。

マギ/magiは複数形で単数形はmagus。ゾロアスター教の僧侶を意味する。その語源はイランの一部族のことである。

ちなみに紀元前539年は後世のゾロアスター教徒から、ゾロアスターが啓示を受けた年と誤解された年である。ゾロアスターは30歳の時に啓示を受けたことになっているので、ゾロアスターは紀元前569年に生まれたと誤解された。

魔術(magic)/魔術師(magician)の語源は、上記であるが、現在の英語では、これらには「悪」の意味が付着している。
 


■ あらすじ

◆ バビロン捕囚

多数のユダヤ人がバビロンに捕らえられていた。ユダヤ人たちは過酷な労働をさせられていた。

ユダヤ人の一人、賢者のダニエルは優れた知恵を評価されて、国王のネブカドネザルから重用されていた。

ダニエルはユダヤ人たちの苦労を忘れてはおらず、たびたびネブカドネザルに進言したが受け入れられなかった。

ネブカドネザルの息子のベルシャザルは、ダニエルが重用されていることに対して不満を述べていた。

◆ ネイハム

ユダヤ人の中にネイハムという若者がいた。ネイハムは正義感にあふれた青年であった。したがって、しばしば兵士たちに反抗をして追われていた。

ネイハムの恋人のレイチェルはしばしばネイハムを匿った。

ダニエルがネイハムのところに来て重大な任務を与えた。

ダニエルの得た預言によればイランのキュロスという国王がバビロンを滅ぼしてユダヤ人を解放する。

ネイハムの任務はキュロスを探して、この預言を実現するようにキュロスを説得すること。

◆ 脱出

レイチェルはネイハムの身の安全を心配して反対した。またネイハムは、立派な青年であるが、そこまでの使命感はなく、またレイチェルと離れたくない。

しかしネイハムはユダヤ民族の運命を賭けた使命に目覚めて、キュロスを探しに行くことにする。

まずはここを脱出するのが困難。町全体が城壁に囲まれており、兵士が見張っている。

町の中を川が流れている。その川の入り口と出口も出入りができないように、鉄柵が埋め込まれている。

ネイハムは水に潜って、やっと体を捩じってぎりぎりで鉄柵を抜けることができた。

◆ ついにキュロスと会った

ユーフラテス川を越えて、ザグロス山脈をこえて、ついにメディアの国に入った。

キュロスを探して訪ねまわったが、なかなか見つからない。

水辺で笛を吹いている羊飼いがいた。「キュロスという青年を探している」と聞く。「僕のことを嗅ぎまわっていたのはアンタなのか」との答えである。

この若者が当のキュロスであると確信して、使命を説いた。

だがしかし、もちろんキュロスは王であるとの自覚は持っておらず、バビロンを解放するなどということは、まったく頭にない。

◆ キュロスの両親と会った

ともかく、二人はそれなりに仲良くなり、ネイハムはキュロスの両親に会いたいと提案した。

ネイハムは両親に会って「キュロスはあなたたちの子供ではない」と切り出した。

しかし母親は喋れないようである。父親が事情を話した。キュロスには話したことがないことである。

妻は当時、宮殿に出入りしていた。夫は妻が臨月の時、羊の世話をして山を越えて遠くに行っていた。戻ったときは息子は一か月となっていた。そして妻は舌が切り取られていた。

続いて母親は織物に描かれた絵で説明した。補足。おそらくは文字は知らないという前提。

王の使いがきた。赤ん坊を抱いていた。赤ん坊を育てるように命令した。口封じのために舌を抜かれた。その赤ん坊を自分の子供として育てた。補足、自分の子供はどうなったのかは明示されない。死産か殺された。

◆ しかしキュロスは王となる望みがない

両親の話を真剣に聞いていたキュロスは、徐々に納得した。

ネイハムはキュロスに「君はメディア国、ペルシャ地方の正当な王」と切り出した。

しかしキュロスには、そのような気持ちは全くない。

困ったネイハムは「王になれば王妃を自由に選べる」と説得した。

意外にもキュロスは心が動いたようである。わりと単純だな。

◆ 国王と会った

補足、メディア王国内にペルシャ王国があり、ここで会うのはメディア国王。

二人は王宮に出かけた。王宮には、国王のアスティガスと娘のマンダネがいる。アスティガスはキュロスの祖父であり、マンダネは母親である(はず)。

キュロスの育ての母親の織物を出した。またキュロスは育ての親から貰っていたお守りを見せた。

マンダネはキュロスを見て「夫と目が似ている」と言った。またお守りは、マンダネが赤ん坊に秘密裏に持たせたものだった。これはマンダネにとって確かな証拠となった。

マンダネはキュロスと母子であると確信した。しかしアスティガスは否定した。

補足、説明はないが、アスティガスは、自分の王の地位を守るためにのマンダネの夫を殺し、さらに孫を他の女性に預けて放逐したことになる。

◆ 結婚したい

キュロスはペルシャ国王となり王宮に移り住んだ。ネイハムも一緒に住んでいる。

ネイハムにしてみれば、まだ初期段階で、さらにバビロンに進撃するように仕向けなければならない。

キュロスは「結婚したい」と言い出す。続けて「欲しい女性はただ一人、もう決まっている。パンシア王女」という。

今までに二度見かけたそうである。

補足、パンシアは王女と言うが、どこの王女であるかは明らかにされない。

◆ パンシア王女と会う

代理としてネイハムがパンシア王女に会った。

会ってみるとパンシアは、トラを可愛がっているような女性である。

ストレートに「ペルシャ王国の妃に」と言った。しかしパンシアはペルシャ王国をバカにする。「もっと大きな国の妃でなければ」と言う。とんでもない女性である。

それをキュロスに報告する。ここでキュロスはメディア国王となる野望が生まれる。

ネイハムは「アステュアゲス王は君を殺しに来るが、しかし預言では君が王を失脚させる」。

◆ ダニエルは牢に入れられた

一方ダニエル。ネブカドネザル王は新しい布告を出した。「三十日間の間、ベル・マルドックの神に祈らなければ、死刑に処す」。

ダニエルは星をみている。キュロス軍がメディア軍に勝つ方法がまだ見つからない。

他の人は、それよりも布告のことを心配するが、ダニエルは気にしていない。

ダニエルは捕らえられたが、ベル・マルドックの神を否定した。ダニエルには到底受け入れられるものではない。

ダニエルはライオンの檻に入れられた。

しばらくして兵士が見に来たら、ダニエルのそばに数頭のライオンがゆったりと寝そべっている。

ダニエルは牢から出された。試しに兵士が檻に入ると、たちまちライオンに食い殺された。

ここでダニエルは「キュロス軍がメディア軍に勝利する方法が見つかった」と言う。

◆ メディア王国の王になる

キュロスはメディア王国に攻め入ることにした。ネイハムが軍の統率をする。

キュロスの軍が出発した。しかしキュロスは「この戦いに勝てれば満足」とネイハムの言う「バビロン征服」は関心がない。

さて、メディア軍は強力である。簡単には勝つことができない。

ダニエルの霊感に呼応してネイハムにはある考えが浮かんできた。日食が発生するはずである。

その日食に合わせてメディア軍と戦う。

両軍は激しく戦った。決着はつきそうにない。

太陽が少しずつ隠れてきた。メディア軍は何事かと不安になってくる。キュロス軍は知っているので影響はない。

太陽がすべて隠れた。メディア軍は取り乱して降伏した。

アスティガス王は追われてキュロスがメディア王国の王となった。

◆ バビロンにむけて進撃する

さて、これではネイハムの目的はまだである。そしてキュロスはメディア王国の王となったことに満足している。

ネイハムはパンシアに会った。「バビロン王国の王妃になりたくないか?」とそそのかした。パンシアは「なぜバビロンなの?」と疑問に思うが、しかし興味を持ったようである。

パンシアに姿を隠すように指示した。

そしてネイハムは少々汚い手を使う。すなわち「ベルシャザルがパンシアを好きになり、パンシアはバビロンに向かった」とキュロスに吹き込んだ。

これを聞いてキュロスは「バビロンを攻める」と即断する。

キュロスの軍隊はバビロンに向けて出発した。

◆ バビロンに到着した

ネイハムはキュロス軍の少し後を進んでいる。そして実はパンシアと一緒である。注、キュロスはパンシアは先に行っていると思っている。

ネイハムとパンシアは一緒にいる。そこでパンシアはネイハムに次第に惹かれてくる。王妃になりたいパンシアにしては不思議である。しかしネイハムにはレイチェルという恋人がいる。

さてキュロス軍はバビロンに到着した。バビロンの巨大な城を前にしている。

少し攻撃を仕掛けたが、頑丈な城壁はびくともしない。そこで軍師のネイハムを待つことにする。

◆ ユダヤ人たちは騙される

バビロンの城の中。ネブカドネザルは病気でもう長くはない。ベルシャザルが権力を握っている。

そしてキュロス軍が近づいてきた。キュロス軍に対しては、頑丈&巨大な城があるので心配はない。

しかしユダヤ人たちが叛乱を起こさないかと心配である。そこでベルシャザルはユダヤ人たちを騙すことにした。

ユダヤ人たちを解放した。ユダヤ人たちは城からでてエルサレムに向けて旅立った。

しかし山中で森に火がつけられた。慌てて元に戻ろうとする。しかし後方からも火がつけられた。ユダヤ人たちは行き場をなくした。

だがしかし、ここで雷がなり大雨が降り出した。火は消えてユダヤ人たちは助かった。

補足。この状態ならば、そのままエルサレムに帰れるので、キュロス軍がバビロンを滅ぼす必要はなくなっているはずだが、このようなストーリーになっている。

◆ バビロン落城

キュロス軍にネイハムが到着した。キュロスはネイハムに作戦を立てるように指示する。

ネイハムは、自分が城から抜け出したと同じ方法を使うことにする。

バビロン城から流れ出る川に兵士を入れる。鉄柵にロープを結びつけて、みんなで引っ張った。

鉄柵が曲がって兵士が入れるようになった。兵士が次々と侵入する。

城の中で激しい戦いが始まる。キュロス軍は城門を開けた。さらに多くの兵士が突入した。

次第にキュロス軍が優勢になる。

ついに城は制圧された。

◆ エルサレムに帰る

ダニエル、ネイハムをはじめとしてユダヤ人たちはエルサレムに向けて出発した。

ネイハムはレイチェルと一緒に歩いていく。
 


■ 出演作

◆ リチャード・コンテ
(1946)記憶の代償/SOMEWHERE IN THE NIGHT
(1949)深夜復讐便/THIEVES' HIGHWAY
(1959)コルドラへの道/They Came to Cordura
(1968)セメントの女/Lady in Cement
(1948)出獄/CALL NORTHSIDE 777
(1947)いのち短し/The Other Love
(1949)ならず者と墓荒らし/Big Jack
(1950)大病院殺人事件/The Sleeping City