■ The Strawberry Blonde
ビフは歯科医。ある日「抜歯してほしい」とヒューゴという客が来た。
ヒューゴは、好きだったヴァージニアを奪い、ビフが服役する原因となった人物である。ビフは麻酔薬を大量投与して復讐しようとする。
過去の悔しいことをずーっと思い出す。しかしそれで悔しい思いが吹っ切れた。あえて復讐をするまでもない小人物と理解した。
麻酔抜きで抜歯して、ちょっとばかり痛い思いをさせただけで終わりにした。


製作年:1941、監督:ラオール・ウォルシュ、脚本:ジュリアス・J・エプスタイン、フィリップ・G・エプスタイン、原作:ジェームズ・ヘイガン


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 ビフ・グライムス(ジェームズ・キャグニー)
 エイミー・リンド(オリヴィア・デ・ハヴィランド)
 ヴァージニア・ブラッシュ(リタ・ヘイワース)
 グライムス(アラン・ヘイル)
 ヒューゴ・バーンズテッド(ジャック・カーソン)
 ニコラス・パパラス(ジョージ・トビアス) 友達
 ハロルド(ジョージ・リーヴス)
 ブッチ(?) 猫
 テッシー(?) 犬

Strawberry Blondeはヴァージニアのニックネーム
 


■ あらすじ

◆ ビフは歯科医

ビフ・グライムスは歯科医。しかしあまり儲かっていない。場所が悪いのかあるいは前科者であるからなのか、とも思っている。

本日は日曜日。知人の散髪屋ニコラス・パパラスと家の外で馬蹄投げ遊びをやっている。

妻のエイミーが家から出てきた。「抜歯の依頼」とのことである。日曜日は依頼を受けないことにしている。

しかし患者の名前が「バーンステッド」であると聞くと、ビフは喜んで引き受けた。

ビフは、嬉しそうでかつ不敵な笑いを浮かべた。

これ以降は回想場面。

◆ ビフは歯科医になる勉強

ビフの父親は昼間からブラブラしている。失業したらしい。失業するのは、これが初めてではない。

しかし父親はまったく気にしていない。近くの女性にニコニコと話しかけていたりする。もちろんまともに相手にされない。

父親は酒場にきた。その酒場で警備員をしているビフは、父親が失業したことが分かった。

父親は、他の客と喧嘩して、経営者はビフに「コイツを追い出せ」と言われた。ビフは父親に拳を振りかぶって殴る格好をして、二人とも外に出た。

ビフは友達にニコラスの理髪店にいた。ヒューゴ・バーンズテッドが入ってきた。

外が突然騒がしくなった。「いちごブロンドがきた」。これは通称である。みるとヴァージニア・ブラッシュがしゃなりしゃなりと歩いてくる。

みんなが外を見る。ヴァージニアは店の前を通り過ぎた。ヒューゴが追いかけて何かを話しかけた。

夜、自宅で、父親とビフ。父親は歯が悪い。一方ビフは通信教育で歯科医になる勉強をしている。

◆ ダブルデート

ヒューゴから「女性に会いに行こう」と誘いがきた。馬車を借りて来ている。

「一人はいちごブロンド、もう一人の女友達と公園にいる。もう一人はブス」と言う。

ヒューゴはヴァージニアとデートするつもりらしい。

公園、ヴァージニアが座っている。エイミー・リンドがきた。二人でベンチに座って話している。

一方、ヒューゴとビフ。「もう一人は看護師」「それは遠慮する」という話をしている。

二人は馬車をヴァージニアとエイミーのベンチの前を通り過ぎた。これは予定の行動。そしてヴァージニアも「また戻ってくるわ」とちゃんと知っている。一回回って前に止まった。

ヒューゴはヴァージニアは、分かっているのだが、偶然に出会ったみたいに言う。

四人は馬車に乗った後、ヒューゴとヴァージニア、ビフとエイミーに別れた。

ビフとエイミーには、近くにいるヒューゴとヴァージニアの声が聞こえてく。楽しそう。

ビフとエイミーはなんとなくよそよそしく話す。


◆ ビフとヴァージニアがデート

次はビフとヴァージニアがデートした。最初は遊覧船に乗ろうとしたが、定員オーバーで乗れなかった。

二人は公園に行く。二人の話は我々から見るとスムーズとは思えないが、ヴァージニアは嬉しそうな顔をしている。

それから動物園に行って、野外で行われている音楽会に行った。

夕方になってクラブでダンス。二人が席についていると、歌手が歌う。そして替え歌でビフとヴァージニアの歌になる。ヴァージニアは嬉しくなってビフの頬にキス。替え歌になったのはビフが金を払っているから。

さらに公園に行った。しばらく話したのち、ビフは次のデートの約束をしようとする。ヴァージニアは「明日はビリー、土曜日はヒューゴ、月曜日はビアノの練習、、、」と延々と予定が詰まっている。

結果、次のデートは「三週間後の水曜日」となった。それでもビフは嬉しかった。

◆ ヴァージニアはヒューゴと結婚した

さてもう三週間後の水曜日。昼間にビフとヴァージニアがばったり会った。ビフが「今日が三週間後の水曜日」と言うと「そうだったわね」と忘れていた様子。それでも笑顔。

公園で会うと約束する。ヴァージニアは「楽しみにしてるわ」と笑顔で立ち去った。

夜、公園、ビフが待っている。エイミーが来た。「今日は非番なの」「デートなんだから帰ってくれ」と小競り合い。

二人は適当に話をした。そしてエイミーは「ヴァージニアを好きなの?」と聞く。ビフはその質問に怒った。「怒るということは好きなのね」と真実を突かれた。

二組のアベックが来た。男性の一人はニック。もう一人の男性が「今日、ヴァージニアはヒューゴと結婚した」と爆弾発言。ニックもそれを証言した。そしてエイミーはビフの目を見て頷いた。

ニック「デートするつもりだったんだろ?」。ここでビフは「いや、デートの相手はエイミーだ」と強がる。ここでエイミーは「水曜日はデートなの」と合わせてくれた。

二組が立ち去った後、ビフは「ヒューゴがケガをすればいいのに」と言ってさらに、エイミーに「俺を笑いにきたのか?」とふてくされた。

しかし思い直して「ニックが話した時に話を合わせてくれてありがとう。君はいい人だ」。そしてついでに「恋人になって」と申し込んだ。

かなりの紆余曲折ではあるが、二人は恋人同士となった

◆ 二人は結婚してうまく行っている

ビフとエイミーは結婚した。きっかけはともかくとしてうまく行っている。一年半が経過した。

ビフは昼間は働いている。そして相変わらず歯科の勉強をしている。

ニックが来た。ビフの父親が喧嘩したとのこと。ビフは酒場に出かけた。例によってビフも喧嘩になりそうになった。他の人に止められた。

ここでヴァージニアが現れて、声をかけてきた。「ヒューゴが会いたいと言ってたわ。でも今日は市長と会うの。明日はどお?」とヴァージニアらしく若干嫌味な話し方である。補足。「ヒューゴが会いたいと言っていた」のは嘘。

ヴァージニアはヒューゴにビフと会ったことを話した。「ビフにやる仕事はない」「親友でしょ。あなたならビフをうまく使える」。

◆ ヒューゴの下で働く

二組の夫婦が食事をしている。

ヒューゴは会社を興して大きくしたことを自慢した。ヴァージニアも自慢する。

ヒューゴは「自分のところに仕事をしないか?」と提案した。ビフは「歯科医になろうとしている。もう少しだ」と言う。しかしその言い方は自信なさげである。

ここでエイミーが「ありがとうございます」と返事。ビフも「サンキュー」と返事。

次の日からはヒューゴの下で働くことになった。

ここで停電があった。ライトが再点灯して、二人は帰った。ビフは「さっきのキスは良かった」と言ったが、エイミーは「私はしてないわよ」と答えた。

◆ 父親が死亡した

ビフはヒューゴの会社の役員になった。個室を貰って執務をした。

だがしかし、やることは挙げられてくる書類にサインをするだけ。ずつとこれをやらされている。

「もっと別の仕事がしたい」とヒューゴにアピールしたが却下された。

新聞に「建設会社が汚職」との記事が出た。ヒューゴは苦い顔をしている。

一方、ビフの父親は建設現場で働いていた。だが、事故が起こり、病院に運び込まれた。

ビフとエイミーは病室に駆けつけたが、父親は死亡した。

◆ ビフは逮捕された

ヒューゴとビフともう一人。事故の件について話している。

父親が死亡した事故は、ヒューゴの会社が納入した資材が不良品だったからである。

そしてヒューゴともう一人は、ビフに責任があるという。びっくりしたビフは抗議したが、ビフは会社に役員であり、いつのまにかヒューゴは役員ではなくなっていた。そして承認のサインをしたのはビフである。

警官が令状を持ってきてビフを逮捕に来た。ヒューゴは警官を殴り倒して逃げた。

ビフ家に帰った。警官がきた。ビフを逮捕しようとする。

そこでエイミーが帰ってきた。エイミーには「約束があって出かけるところだ」と言って、警官と出て行った。

ビフは嘘を言ったが、エイミーには分かっていた。

◆ ビフは服役した

ビフは有罪となり、懲役5~7年となった。

エイミーは元の看護師に戻って一生懸命に働いた。

ビフは刑務所の中で、歯科の通信教育を続けた。終わりが近づいてきた。

ビフは問題を起こして独房に入れられたが、独房に卒業証書が届いた。

◆ ビフは出所した

ビフは刑期を終えて出所した。

エイミーは駅に迎えにいないで、最初にデートした公園で待っている。

ビフが戻ってきた。ビフはエイミーがここで待っていることが分かったようである。

二人は抱き合った。ビフはエイミーに感謝の言葉を述べた。「価値ある人生を送る。家族より大切なものはない」。

これで回想場面終了。

◆ ヒューゴの歯を麻酔なしで抜く

ヒューゴが入ってきた。ヴァージニアも一緒。エイミーは出かけている。

二人が話しているのを聞くと、ヴァージニアが意図的にビフのところによこしたらしい。

ヒューゴは歯科医がビフであると知って「痛みは良くなった」と帰ろうとする。ヴァージニアが引き留めた。

ヴァージニアはビフに話した。「エイミーと一緒なの?元気?私はヒューゴと一緒よ」。さらにヴァージニアはいろいろくどくど話す。

ヒューゴも抜歯が怖いので過去のことをいろいろ弁解する。

ともかくビフはヒューゴをイスに座らせた。そして麻酔をかけないで、力任せに歯を引き抜いた。ヒューゴは頬を抑えて涙を流しながらイスから立ち上がった。

二人は喧嘩しながら出て行った。

ビフは独り言を言った。「幸せなのは僕だ。彼ではない」。とにかく、ビフのヒューゴとヴァージニアへのわだかまりは解消した。

エイミーが帰ってきた。ビフの態度が何か変である。「大丈夫?」。

その後、エイミーがビフの耳元に囁いた。ビフはにっこりした。

我々には秘密にされているが、エイミーが出かけていたのは産婦人科。そして囁いたのは妊娠の知らせ。たぶん。
 


■ 蛇足&感想

本作は『或る日曜日の午後(1933)』のリメイク。

通信教育で歯科医の資格が取れるのか?

ビフは強いとは思えないのにやたらと喧嘩っ早い。父親もそう。

他のレヴューでは「最後にヴァージニアの悪妻ぶりを見て、エイミーと結婚して良かった」とあるが、ヴァージニアはかなり嫌味な人物ではあるが、悪人とは思えないし、とりわけ悪妻とも思えない。

ビフは、久しぶりに見たヒューゴの態度で、むしろ「ヒューゴは恨みを抱くほどの人物ではない」と過去のわだかまりが取れたかのように見える。

ここでは紹介しなかったが、エイミーのキャラクタはわりと変である。理屈っぽくて笑える。もちろん意図的にそうしている。

リタは、本作では「チャラい感じの女」だが、以降は「危険な女」の雰囲気になってくる。もちろんこれは本人ではなく役の上である。リタはオリヴィアより二歳年下だが、オリヴィアの方が幼く見える。

オリヴィアはと言えば、この頃までは可愛い感じの役である。身長が160cmで顔が可愛いのであれば、必然的にそうなる。しかし以降は重厚な役を演じていく。
 


■ 出演測

◆ ジェームズ・キャグニー
「頑張れキャグニー/The Irish in Us(1935)」
「汚れた顔の天使/Angels with Dirty Faces(1938)」
「いちごブロンド/The Strawberry Blonde(1941)」

オリヴィア・デ・ハヴィランド
(1935)海賊ブラッド/Captain Blood
(1936)進め龍騎兵/The Charge of the Light Brigade
(1937)恋愛合戦/It's Love I'm After
(1938)ロビンフッドの冒険/The Adventures of Robin Hood
(1938)結婚スクラム/Four's a Crowd
(1938)黄金の罠/Gold Is Where You Find It
(1939)無法者の群/Dodge City
(1939)太平洋の翼/海の荒鷲/Wings of the Navy
(1939)女王エリザベス/The Private Lives of Elizabeth and Essex
(1939)風と共に去りぬ/Gone with the Wind
(1940)カンザス騎兵隊/Santa Fe Trail
(1941)いちごブロンド/The Strawberry Blonde
(1941)壮烈第七騎兵隊/They Died with Their Boots On
(1943)カナリヤ姫/Princess O'Rourke
(1946)遥かなる我が子/To Each His Own
(1946)暗い鏡/The Dark Mirror
(1948)蛇の穴/The Snake Pit
(1949)女相続人/The Heiress
(1952)謎の佳人レイチェル/My Cousin Rachel
(1958)誇り高き反逆者/The Proud Rebel
(1964)不意打ち/Lady in a Cage
ふるえて眠れ/Hush… Hush, Sweet Charlotte(1964)
(1977)エアポート'77/バミューダからの脱出/Airport '77

◆ リタ・ヘイワース
(1939)コンドル/Only Angels Have Wings
いちごブロンド/Strawberry Blonde(1941)
血と砂/Blood and Sand(1941)
(1946)ギルダ/Gilda
カルメン/The Loves of Carmen(1948)
情炎の女サロメ/Salome(1953)
コルドラへの道/They Came to Cordura(1959)
上海から来た女/THE LADY FROM SHANGHAI(1947)