■ The Dark Mirror/殺人事件、双子姉妹、犯人は?


製作:1946年、脚本:ナナリー・ジョンソン、監督:ロバート・シオドマク   予告編   フル動画  


■ あらすじのあらすじ

医師が殺された。目撃者がいて、すぐに容疑者が判明した。

しかし容疑者に聞くと「公園にいた」と主張し、裏付けも取れた。

容疑者宅を訪問し「アリバイは崩して見せる」と話していると、奥の部屋から、まったく同じ顔をした女性が現れた。一卵性双生児。

改めて所在を確認すると「部屋で寝ていた」とのこと。「どちらが公園で、どちらが部屋に?」と聞くが、どちらがどうであるかを頑として明かさない。

容疑者が特定できないので、捜査は暗礁に乗り上げる。そこで精神分析医の助けを求める。
 


■ はじめに

登場人物
 フランク・ペラルタ(-) - 医師
 ルース・コリンス(オリヴィア・デ・ハヴィランド)
 テリー・コリンス(オリヴィア・デ・ハヴィランド)
 スティーヴンソン(トーマス・ミッチェル) - 警部補
 スコット・エリオット(リュー・エアーズ) - 精神分析医

注意事項

この映画のレヴューは、いくつもネット上にあるが、映画の内容と明らかに違っているものがある。

例えばスティーヴンソンが探偵となっているものがある。しかし、これは子細なことだろう。またペラルタと会う約束をしていたのが、テリーでなくルースとなっているものがある。これは子細とは言えないが、一応許せる。

他にもいろいろあるが、一つだけ重要なものを上げておく。最後の場面において、テリーがスコットをハサミで襲うとなっているものがある。映画を見れば、このようなことがないのは明らかである。少なくとも私が所有しているDVDとは異なっている。

どこで間違えたのか?想像ではあるが、本作には原作があるようである。私は読んだことはないが、原作と映画を取り違えて書いているのではないだろうか?

映画のレヴューなので、間違えても実害が発生することはないが、一度でも映画を見て書いていれば、このような間違いはしない。
 


■ あらすじ

◆ 殺人事件発生

医師のフランク・ペラルタが自宅アパートで殺害された。発見者は部屋の掃除係の女性。朝の掃除をするために部屋に入ってきて発見した。心臓を一突きにされている。

殺害の瞬間は見ていないものの、幸い目撃者がいた。目撃者1。昨夜ペラルタが女性と一緒にいるのを目撃。目撃者2。夜10時半頃にドスンと言う音がした。ドアを開けると女性が出ていく姿が見えた。両方とも顔は憶えているそうである。

さらにペラルタの助手の女性によれば、テリー・コリンスと会う予定だったとのこと。テリーの職場は医療ビルの売店だそうである。

目撃者を売店につれていくと、当該の女性に間違いはないとの証言。ここまで分かれば、わざわざ映画にするような事件ではなさそうである。

◆ 双子姉妹

しかしスティーヴンソンが事情聴取すると「昨夜は11:30頃まで公園にいた。知っている人にも会った」と主張する。裏を取ると、確かに彼女に会っていたそうである。しかも一人ではなく複数の証人がいる。

スティーヴンソンは被疑者の家に行く。「あなたのアリバイは崩して見せる」。話しているうちに奥の部屋からもう一人の女性が現れた。なんと瓜二つである。一卵性双生児とのこと。

あらためて事件時の所在を聞くと「一人は公園、もう一人は部屋にいた」と答える。「どちらが公園で、どちらが部屋に?」と聞くが、二人とも、全く同じ答えを繰り返す。「一人は公園、もう一人は部屋にいた」。

現場からは指紋は検出されず、また目撃者も二人の区別はつかない。注、一卵性双生児でも指紋は、少しだが違うそうである。

容疑者として起訴するためには、人物を特定しなければならず、本件は暗礁に乗り上げた。裁判には持ち込めない。

◆ 心理テスト

スティーヴンソンは職務ではなく個人的に捜査を続けることにした。精神分析医のスコットを訪ねた。「双子でも人格は違う、それを見極めれば」とのことであったが、なんとなく確信がなさそうでもある。しかし他にあてもないので、スコットに頼ることにした。

スコットは「双子の研究をしている」と二人に近づいた。それぞれ週に三回研究室に出かけることになった。

ロールシャッハ―テストや単語の連想テストなどを続けていく。別々に訪問するのだが、二人は帰って状況を共有している。どのようなテストをして、どのようになったか?

さてスコットは、とても魅力的な男性である。若い女性が次第に惹かれていくのも無理はない。二人はスコットのことも何かと話している。二人は牽制し合うようになる。

一人が「鏡⇒死」という連想をしたことをもう一人が「私のことを(犯人として)疑っているからよ」と批判。もう一人は「死⇒鏡」という連想をする。

スコットは、次第に二人の区別がつくようになってくる。そして一人は「どうも精神状態がおかしい」。だがしかし本当のところを言えば、見かけは同じなので、入れ替わっていても分からない(かも)。

◆ 二人の攻防

スコットも一人の女性、すなわちルースに好意を持つようになった。ルースは「二人で会いたい」とデートの約束。デートして送ってもらってくる。ここでキスをする。それをテリーが窓から見ている。憎しみに満ちた顔である。

二人の攻防が次第に激しくなってくる。「夢を見てたようね」「彼が好きなのね」「彼とデートの予定を入れてたのに断られた。相手はあなたでしょ」。

そしてテリーが、ルースが寝ている時に明かりを照らして消す。ルースはびっくりして飛び起きる。「光が..」「何もなかったわ」「私は気が変になり始めてるの?」。またルースに「うわごとを言ってたわ、憶えてないの?」などとも言う。ルースは次第に怖くなってくる。

注、ここからはルース/テリーがしっかり見ていないと分かりにくくなる。

スコットがルースに「テリーに内緒で会いたい」と電話する。本当はテリー。ルースを装って会う時刻を打ち合わせる。注、ブラウスに「TERRY」の文字がある。

しかし、予定時刻の前にルースがスコットを訪ねてくる。セリフでは明示されないが、スコットは先ほどの相手がテリーであることに気がつく。

ルースは自分の幻覚(光のことなど)のことを相談する。ルースが戻った後スコットはスティーヴンソンに何らかの連絡を入れる。注、ここでルースとスコットが話す内容で、現れたのがルースであり、「スコットが前に電話に出たのがテリーであることを認識した」ことが、我々にも分かる。

テリーは部屋でイライラしている。ルースが戻ってくる。テリーはルースがどこに行っていたのか追及するが「スコットとは会っていない」という。(スコットとの約束なので)今度はテリーが出かける。

◆ ルース(?)が死亡

テリーがスコットを訪れる。スコットは、これがテリーであることはわかっているが、「ルース」として対応する。

そしてスコットは、(相手はテリーだとの認識なのだが、ルースであると認識していると思わせて)「テリーは病気だ。人格がゆがんでいる。すぐに治療が必要た」と言う。そして「ペラルタが(テリーに)殺されたのはルースを好きだったから」と言う。

テリーは「私はどちらかしら?」。

テリーは机の上のハサミを見つめる。我々にはハサミを持って切りかかる雰囲気に見える。しかしここでスティーヴンソンから電話が入る。受話器を置いたスコットは「ルースが死んだ」。注、ここは(本当はテリーだと思っているのだが)ルースを相手に話していることになっているのでセリフがおかしい。

二人は急いで帰る。テリーは「(テリーが死んだのは)罪悪感です。テリーは病んでいたんです。テリーが殺したんです」。スコットは「あなたはテリー」と言うが「私はルース」。

そして奥の部屋からもう一人が現れる。これがルース。テリーはルースに小さなモノ(たぶん灰皿)を投げて頭を抱えて狂ってしまう。
 


■ 最後の場面でスコットはテリー/ルースの区別ができていたのかっ?

最後はスコットがルース(本当はテリー)に電話をかけて会う約束をする。しかし予定よりも早く(ルースが)現れて(、さらにテリーが予定時刻にも表れるので)、最初に電話に出たのはルースではなくテリーであると分かるというストーリーになっている。

しかしスコットは本当に区別できていたのか?

我々には最初がルースで次がテリーであるという証拠が提示される。

最初がルースである証拠。ルースはスコットに自分の幻覚のことを話す。この幻覚については、これまでスコットに話したことはないが、我々にはテリーとルースが話してことが明確に示されている。この時にテリー/ルースの区別ははっきりと分かっている。

次がテリーである証拠。ルースが戻ってくる。そしてもう一人(=テリー)が出かける。注、ここでテリーはルースには分からないように、引き出しを開けて、何かを取り出してバッグに入れる。これは何か明示されないが、後でルースのコンパクト(Rのイニシヤル)であると推測できる。

上記を考えれば、スコットにはルース⇒テリーの順番で現れたことが分からないと判断できる。さらに言えば、同一人物(テリーでもルースでもよい)が、(何らかの偽装のために)予定時刻の前に現れて、いったん退出して、もう一度予定時刻に現れてもスコットには分からないはずである。

ついでももう一押し。本作全般では、テリー/ルースが服装なとで区別がつくように作ってある。例えば同じジャケットを着ていてもR(T)とブローチがついていたり、シャツにはRuth(Terry)と刺繍がしてあったりする。

最後に二人が続いてスコットを訪ねる場面。ルースはジャケットにRとある。しかしテリーは何もない。ここが重要。

そしてスコットは「訪問してきたのはテリー」との一応の認識なのだが、相手のバッグを強引に開けて、コンパクトを取り出す。そしてR(ルース)の文字を確認する。スコットのこの動作は、スコットがルース/テリーの区別に確信がなかったことを示している。注、ここで、なぜ「R」なのかはテリーが外出する時を見るとわかる。テリーはルースに見えないように引き出しを開けて取り出している。


■ 感想

内容を理解できなくても結構楽しめるが、きちんと理解しようとすると、わりとハードルが高い。

テリー/ルース以外の特にスコットがわりと地味ではあるが、スコットが派手に活躍すると、この映画の味がなくなるだろう。これでオーケー。

二役なので、オリヴィアが二倍見れるという素晴らしい映画。
 


■ 蛇足

テリーはしょっちゅうタバコを吸う。ルースが吸うのは一度だけ(連想テストの時)。全般にテリーは態度がでかいが、ルースはなんとなく自信がなさそう。

スコットはルース/テリーの両方にデートの約束をする。おいおい。

テリーは医療ビルの売店で働いているが、ルースがどこで働いているかは明示されない。時々入れ替わっているとのこと。

スコットがルースに「テリーに内緒で会いたい」と電話するが、当然どちらが出るのかは予測できず、ルースにつながると思っているのは、とても変。上記で示したように、テリーが電話に出る。

とぢらが犯人なのかは、(テリーとは示唆はされるが、)明示的には示されない。

最後に灰皿を投げる時は左手で投げている。オリヴィアは左利き?テリーにスティーヴンが「左利き?」と聞く場面もある。

当時のハリウッド映画にはありがちだが、女性がソファに脚を折り曲げて座る姿勢。テリーがロールシャッハテストの時にやっている。しかも靴を履いたまま。

オリヴィア・デ・ハヴィランドはWikiPediaが正しく更新されているとすれば、現在(2020/01)、103歳でまだ生存している。イギリス人だが東京生まれ。

追記、2020/7/25死去。104歳。合掌。

トーマス・ミッチェル。脇役ではあるが、ずいぶんと多く出演している。まずは1939年のこの三作。「駅馬車/Stagecoach(1939)」ジョン・ウェイン、クレア・トレヴァー。「コンドル/Only Angels Have Wings(1939)」ケーリー・グラント、ジーン・アーサー、リタ・ヘイワース。「風と共に去りぬ/Gone with the Wind(1939)」ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲーブル、オリヴィア・デ・ハヴィランド、バーバラ・オニール。それと「真昼の決闘/High Noon(1952)」ゲイリー・クーパー、グレイス・ケリー。このくらいは必須。
 

オリヴィア・デ・ハヴィランド
海賊ブラッド/Captain Blood(1935)
進め龍騎兵/The Charge of the Light Brigade(1936)
恋愛合戦/It's Love I'm After(1937)
(1938)ロビンフッドの冒険/The Adventures of Robin Hood
結婚スクラム/Four's a Crowd(1938)
(1938)黄金の罠/Gold Is Where You Find It
(1939)無法者の群/Dodge City
(1939)太平洋の翼/海の荒鷲/Wings of the Navy
女王エリザベス/The Private Lives of Elizabeth and Essex(1939)
風と共に去りぬ/Gone with the Wind(1939)
(1940)カンザス騎兵隊/Santa Fe Trail
いちごブロンド/The Strawberry Blonde(1941)
壮烈第七騎兵隊/They Died with Their Boots On(1941)
カナリヤ姫/Princess O'Rourke(1943)
遥かなる我が子/To Each His Own(1946)
(1946)暗い鏡/The Dark Mirror
蛇の穴/The Snake Pit(1948)
女相続人/The Heiress(1949)
謎の佳人レイチェル/My Cousin Rachel(1952)
(1958)誇り高き反逆者/The Proud Rebel
(1964)不意打ち/Lady in a Cage
ふるえて眠れ/Hush… Hush, Sweet Charlotte(1964)
(1977)エアポート'77/バミューダからの脱出/Airport '77