■ Wings of the Navy
ジェリー・ハリングトンは兄のカスが教官をしている海軍航空訓練所に入った。ジェリーはカスの恋人のアイリーン・デイルが好きになった。
厳しい訓練の経て卒業。配属された基地でカスも設計に参加した新しい機体のテストが行われた。テストパイロットは死亡した。
機体が改良された。ジェリーはテストパイロットに立候補した。


製作:1939年、脚本:マイケル・フェシア、監督:ロイド・ベーコン


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 カス・ハリングトン(ジョージ・ブレント)
 ジェリー・ハリングトン(ジョン・ペイン) カスの弟
 アイリーン・デイル(オリヴィア・デ・ハヴィランド) カスの恋人

アメリカも含め、当時の軍隊には空軍は存在せず、航空戦力は陸軍所属と海軍所属に別れていた。

本作には水上飛行機(胴体の下にフロート)や飛行艇(胴体自体がフロート)が多く登場し、これらの飛行シーンを見ることができる。
 


■ あらすじ

◆ 海軍航空訓練所

カス・ハリングトンはフロリダ、ベンサコラの海軍航空訓練所の教官で、アイリーン・デイルという女性と交際している。

カスの弟ジェリーは潜水艦乗組員だったが、海軍航空訓練所に入校した。入学式の時に。カスから特に校長に紹介された。

訓練は非常に厳しく大変であった。しかしそこで確かな友人ができた。訓練所は海に面しており、水上飛行機や飛行艇による訓練も行われた。

水上飛行機は着水した後、クレーンで釣り上げて陸上に上がる。飛行艇の場合は車輪がついているので、そのまま自力で陸に上がることができる。

ジェリーは水上飛行機で着水する時に、そのまま陸に乗り上げて、機体をつぶした。責任を取って訓練所を止めようとしたが、止められた。

いろいろな訓練が行われた。空中戦、艦艇からの射撃回避、爆撃、艦艇(地上)射撃など。

◆ カスは新飛行機の設計

カスは新しい機体の設計に関係している。デートをするときも図面を出している。

カスは忙しいので、ジェリーはアイリーンの相手をすることになる。恋人でないのでかえって気楽である。ダンス、ドライヴ、海岸。アイリーンも楽しそう。

二人でボートに乗っている時に、訓練機がそばをかすめたので、アイリーンはジェリーに抱き着いた。

二人の心には少しばかり痕跡が残った。いろいろなことで痕跡が少しずつ蓄積していく。

カスは設計の仕事でしばらくワシントンに行くことになった。ジェリーとアイリーンは「一緒に行け」「行かない」と口論した。結局アイリーンは残るという決定。

◆ カスが墜落

(ワシントンに行く前に)訓練生と一緒に乗っている。突然訓練生がカスを殴った。カスは気絶し、訓練生は機体を海に突っ込ませた。注、この理由は明らかにされない。が、この訓練生は、わりと頭がおかしい風に描かれている。

カスは入院した。ジェリーは見舞いに行き、医師から「カスはもう歩けるようにはならない」と聞かされた。

病室を出たところで、見舞いに来たアイリーンと会った。アイリーンにカスの状態を話して、なんとなくあいまいだった二人の関係を清算した。アイリーンも同意した。

カスは、退院した後も車イスの生活となった。注、しかしカスはその後に歩けるようになる。

ジェリーはさらなる訓練の後、卒業式を迎えた。カスは嬉しそうでもあり、さみしそうでもあった。カスのところには多くの卒業生が挨拶に来た。

ジェリーはカスとアイリーンに別れを告げて、カリフォルニア、サンディエゴの基地の新任務に就いた。

◆ テスト機が墜落

ここから場所はすべてサンディエゴ。

当地にカスが来た。杖をついている。アイリーンも一緒。

カスが関係した飛行機のテスト機が到着した。パイロットが搭乗してテストする。スティーヴ・コナーズ。

スティーヴは、機体をぐっと上昇させた。高度計は15。水平飛行に移行する。そして機体を急降下させた。注、説明がないが、高度計の単位は1000フィートと思われる。

そのままぐっと我慢する。高度計は6になった。

操縦桿を引いた。しかし機体が上向かない。高度は下がっていく。続けて一生懸命に引くが、それでもダメ。コナーズは失神した。機体は地上に激突した。ヴェテランパイロットであった。

カスは「スティーヴのようなヴェテランパイロットが他にいるのか?誰も死ぬ覚悟はない」。

◆ ジェリーがテストパイロット

新しいテスト機体がきた。ジェリーは立候補してテストパイロットをすることになった。

注、新しい機体は何が改善されたのか?前回は急降下から上昇に移行することができなかったので、この点を改善したはず。こんなテストは、簡単なものを順番にやるはずだが、そこは映画。

ジェリーはサラシで体をしっかりと絞めて飛行服を着た。カスとアイリーンが来た。

カスは「(搭乗を)やめろ」と言うが、ジェリーは「絶対やる」と言って激しく口論。アイリーンはハラハラしている。

注、カスは設計に関係していたので、心情としてはともかく論理としては反対するのはおかしい。

ジェリーは、そばにいた人に合図してカスを抑えてもらった。そのすきにテスト機に乗り込んだ。

離陸し、急上昇する。高度計は16を指している。そして急降下。

高度がぐんぐん下がっていく。ジェリーは大声を出して気合を入れる。アイリーンは目を閉じる。

高度計が6を指した。操縦桿を引く。機体が上向いた。高度を確保して再度急降下、また操縦桿を引く。

無事着陸した。みんなが駆け寄って握手した。

◆ ホノルル行

注、ホノルル行の話と機体テストは並行して話が進む。

ジェリーと他の二人が、司令官に呼ばれた。ホノルル赴任を命令された。三人は大喜び。

ジェリーはアイリーンを訪ねて、この件を報告した。アイリーンは反対する。ジェリーは譲らない。しかしアイリーンが反対するのはカスのことを心配しているからであって、自分とジェリーのことではない。

いよいよ出発の日。飛行艇が10機くらい。軍人を含めてたくさんの人が見送り。司令官が演説する。

飛行艇がいったん海に入って次々と飛び立つ。ジェリーは機長。離陸の指令を出す。

カスとアイリーンは見送った。飛行艇は隊形を整えた後、視界から消え去った。
 


■ 補足

◆ 偽レヴュー

本作の一つのレヴューに以下のような記述がある。

1.ジェリーは火薬船の事故を処理する。
2.カスは最後にアイリーンとの婚約を解消してアイリーンとジェリーの仲を認める。

このレヴューには他にも間違いはあるが、火薬船はまったく登場しないし、カスは婚約を解消しない。最後はジェリーの離陸をアイリーンと腕を組んで見送る。

本作をどのように見たら、このようになるのか不思議である。おそらくは本作を一度見て、記憶に残らなかった部分は創作したのだろう。創作する方が大変なような気がするが。

◆ ジェリーとアイリーン

最初に会った時、ジェリーは「双子の姉妹はいないの?」と聞く。つまりアイリーンに惹かれたらしい。

二人は、お互い惹かれあう。しかし二人ともはっきりとは表現しない。

アイリーンはストレートに言えば「二人とも好き」という雰囲気。カスが入院した時に、二人は感情を断ち切る。

◆ その他

本作はクライマックスに向かって力を入れて盛り上がっていくタイプの映画ではなく、わりと淡々と展開していく。

オリヴィアの水着姿が見ることができる。ジョンとオリヴィアの共演は本作のみ。
 


■ 出演作

◆ ジョージ・ブレント
「らせん階段/The Spiral Staircase(1946)」

◆ ジョン・ペイン
「センチメンタル・ジャーニー/Sentimental Journey (1946)」
「剃刀の刃/The Razor's Edge (1946)」
「三十四丁目の奇蹟/Miracle on 34th Street (1947)」
「大城塞/Tripoli (1950)」
「カリブの海賊/Caribbean (1952)」
「アリバイなき男/Kansas City Confidential (1952)」
「対決の一瞬/Tennessee's Partner (1955)」
「海の荒鷲/太平洋の翼/Wings of the Navy(1939)」
「七つの海の狼/Pirates of the Seven Seas(1953)」
「剃刀の刃/The Razor's Edge(1946)」

オリヴィア・デ・ハヴィランド
(1935)海賊ブラッド/Captain Blood
(1936)進め龍騎兵/The Charge of the Light Brigade
(1937)恋愛合戦/It's Love I'm After
(1938)ロビンフッドの冒険/The Adventures of Robin Hood
(1938)結婚スクラム/Four's a Crowd
(1938)黄金の罠/Gold Is Where You Find It
(1939)無法者の群/Dodge City
(1939)太平洋の翼/海の荒鷲/Wings of the Navy
(1939)女王エリザベス/The Private Lives of Elizabeth and Essex
(1939)風と共に去りぬ/Gone with the Wind
(1940)カンザス騎兵隊/Santa Fe Trail
(1941)いちごブロンド/The Strawberry Blonde
(1941)壮烈第七騎兵隊/They Died with Their Boots On
(1943)カナリヤ姫/Princess O'Rourke
(1946)遥かなる我が子/To Each His Own
(1946)暗い鏡/The Dark Mirror
(1948)蛇の穴/The Snake Pit
(1949)女相続人/The Heiress
(1952)謎の佳人レイチェル/My Cousin Rachel
(1958)誇り高き反逆者/The Proud Rebel
(1964)不意打ち/Lady in a Cage
ふるえて眠れ/Hush… Hush, Sweet Charlotte(1964)
(1977)エアポート'77/バミューダからの脱出/Airport '77