先週、大阪市西区九条のシネヌーヴォという劇場で公開された藤元明緒監督の「僕の帰る場所」という映画を紹介しました。ミャンマー人難民親子を描いた映画でしたが、今回紹介するのは藤本監督のその次作「海辺の彼女たち」という映画です。劣悪な労働条件で社会問題になったベトナム人技能実習生をめぐるお話です。お前は日本人としてどういう立場で望むのかと正面から問われているような気がする映画でした。
今回の映画は実際に監督が技能実習生から受け取ったSOSのメールから着想して製作されたとのことです。国境を越えてわざわざベトナムから日本にやってきた3人の女性アン・ニュー・ホン。彼女たちの思いと日本での過酷な生活実態が赤裸々に描かれます。
彼女たちは技能実習生としてしばらくある企業で働いていましたが、低賃金の上に毎日15時間に上る労働という典型的ブラック職場。彼女たちは逃げ出し、ブローカーに頼って見つけた新しい職場は東北の雪深い港町です。この港町の撮影舞台は青森県津軽半島の先端外ヶ浜町。大雪の降る厳しい寒さながらも、なんとか見つけた新しい職場です。少し安心したのもつかの間、ホンが体の調子をくずし倒れてしまいます。彼女たちはいったいどうするのでしょうか。
「僕の帰る場所」に続き、この映画を見て非常に思うところが大きかったです。おそらくは日本にあこがれを持って来たかもしれない人たち。にもかかわらず劣悪な環境で酷使され、とんでもないところ追い込まれます。技能実習生という名目で低賃金で酷使するだけのひどい状況です。また難民としてやむにやまれず日本に来ても、まともに難民認定さえされないひどい入管の有様。その上、コロナ感染症の蔓延で病気になっても庶民は見殺し状態。なんでこんな冷酷な社会になったのでしょうか。
オーディションの審査で3人には全く異存がなく、総意で選ばれたそうですが、リアルさは圧巻です。なんとか生き延びていこうとする意欲と、時には過酷な現実に折れそうになる微妙な心境を見事に演じています。日本のあり方を考えるためにも見るべき映画だと思います。
私はシネヌーヴォでの公開初日に行きました。定員70名程度の小さな劇場でしたが満席。上映後はオンラインでの舞台挨拶があり、制作の裏話などもありました。会場は終始熱気に包まれ、いい映画を上映してくれるミニシアターの意義を再認識しました。素晴らしい映画館と映画作品に出会えて幸せな時間でした。
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