西表島の自然と秘められた歴史 黄インイク監督「緑の牢獄」 | あなたの知らない韓国 ー歴史、文化、旅ー

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 大阪市淀川区の第七芸術劇場で公開されているドキュメンタリー映画 黄インイク監督「緑の牢獄」(2021年 日・台・仏合作)をご紹介します。

 

 

 

 台湾出身の黄インイク監督は、現在沖縄を中心にして活動しています。黄監督が7年もの歳月をかけて完成させたドキュメンタリーが「緑の牢獄」です。

 

 

 

 この映画の舞台は西表島。西表島は沖縄本島からも遠く離れ、200km西には台湾本島が控える秘境の島。熱帯林に覆われ、美しい自然が広がり、本土からも癒やしを求めて、あるいはダイビングなどで訪れることの多い島です。この島には知られざる歴史が潜んでいました。戦前に炭鉱があり、その炭鉱では日本人だけではなく、台湾人や朝鮮人など多様な人が労働させられていました。

 

 そしてそこには炭鉱を見つめるかのように暮らす90歳の老女が住んでいました。彼女は10歳の時に台湾から父に連れられて移住し、その後、彼女以外には誰もいなくなった家を一人まもっているのでした。

 

 彼女の語りから、本土に行ったまま音信不通になった息子、一家と炭鉱との関わり、炭鉱を巡る凄惨な歴史など、彼女以外には語れない島の歴史が浮かび上がるのでした。

 

 映画で移される島の自然は本当に美しく、風景にみとれているだけでも2時間近くが過ぎていきます。でも何故彼女はこの島から離れないのか、歴史から置き去りにされた一人の女性の生き方に耳を傾け、秘められた南島の歴史に思いを寄せると、今まで見えなかった日本の一面が見えるように思います。

 

 映画は一部台湾語が混じる以外は、ほとんど日本語です。静かな映画ながら、語りかけてくるものが多い映画です。