最近、韓国では女性監督の活躍がめざましいですね。キム・ボラ監督『はちどり』、キム・チョヒ監督『チャンシルさんには福が多いね』、キム・ドヨン監督『82年生キム・ジヨン』など、静かな余韻のある映画が多いです。
今回は、大阪九条のシネヌーヴォーで見たユン・ダンビ監督の『夏時間』(原題:남매의 여름밤 2019年)をご紹介します。幼い姉と弟の一夏の経験を主題にした繊細な映画です。
(内容)
ある夏休みのこと。10代の少女オクジュは父に連れられ弟ドンジュとともに、祖父の住む広い家に引っ越します。離婚したのか母の姿はなく、父は事業に失敗したのか靴の行商をしています。さらに夫と離婚を考えている叔母までがやってきて、不思議な生活が続きます。新しい生活にも慣れた頃、おじいちゃんが倒れてしまいます。
それぞれの人に夏休みの思い出はあるかと思います。人によって楽しい思い出もあれば、苦い思い出もあるでしょう。でもそれらの思い出は人が生きていくうちに、貴重なこやしになっていることは間違いなく、やがてかけがえのない記憶になるのです。そんな懐かしい夏休みの思い出を呼び起こしてくれます。
この映画はオクジュから見た一夏の日常を描いた映画で、すごい大冒険があるわけではありませんが、多少の波風はあるものの平凡な日常を描いています。登場人物を優しく見守るように描く視線はまるで小津安二郎の東京物語を思い起こさせます。
また劇中で食事をする場面が出てきます。素朴な家庭料理ばかりですが、どれもなかなかおいしそうです。その中で面白かったのはコンククスを食べる場面です。コンククスとは豆乳みたいなスープに、うどんみたいな麺を入れたさわやかな料理です。私も食べたことがあり好きですが、劇中でこれに砂糖を入れて食べているのは面白かったです。一度やってみたい気になりました。
またおじいちゃんの家は都市の片隅にあるのですが、塀で囲まれた敷地の中に家庭菜園があり、唐辛子やトマトなどが身近にふんだんにあるのはうらやましかったです。毎日新鮮な野菜を食べたいですね。
コロナで厳しい状況が続きますが、温かい気分にさせてくれるいい映画です。皆様もいかがでしょうか。