舞台は日本 韓国発ドキュメンタリー 「狼を探して」  | あなたの知らない韓国 ー歴史、文化、旅ー

あなたの知らない韓国 ー歴史、文化、旅ー

歴史や文化などを中心に、日本・韓国や東アジアに
またがる話題を掘り下げながら提供したいと思います。

歴史、文化、韓国語、日本語

 

 

 大阪市西区九条にシネヌーヴォーというミニシアターがあります。このシネヌーヴォーはレアなドキュメンタリー映画などを中心に上映する映画館として知られています。

 

 

 

 今回見た映画は韓国のキム・ミレという女性監督が日本を舞台に撮ったドキュメンタリー。題材は驚くなかれ、日本の「東アジア反日武装戦線」という組織をめぐるドキュメンタリー映画なのです。「東アジア反日武装戦線」と言っても最近の若い人は知らないかもしれませんが。

 

 この組織は1970年代前半に日本で非常に話題になりました。彼らが行ったのは三菱重工本社ビル爆破(1974年)など、大企業を相手にした爆破テロでした。三菱重工ビル爆破事件では8名が死亡し、380名が負傷するなど、日本中を驚愕させた事件であり、今もテレビのニュース映像は忘れられません。

 

 

 彼らは「東アジア反日武装戦線 狼」と名乗り、その後、「大地の牙」や「さそり」そ名乗る者たちが表れ、次から次に大企業の爆破事件を起こします。彼らは事件後逮捕され、死刑判決を受けた者、獄死した者や出所した者等などいろいろです。彼らが事件を仕掛けた企業は戦前にアジア侵略の先兵となった企業ばかりですが、大勢の犠牲者が出る戦術は明らかに間違っています。

 

 でも監督がこの話題を扱うきっかけになったのは意外なところにありました。彼女は労働問題に深い関心があり、韓国でも日雇い労働者の問題に取り組んでいました。その関係で大阪の釜ヶ崎で取材・撮影を続ける内に、「東アジア反日武装戦線」の存在を知りました。内容に衝撃を受け、メンバーや家族、生き残った関係者に取材を続けながら、彼らの実像に迫ろうとしたものです。

 

 見る人によって思うことはさまざまかも知れません。小生も幼き頃、テレビのニュースで見て、大変なことが起きたと衝撃を受けた記憶があります。数多くの犠牲者が出たという事実は消せず、見ていて多少の違和感はありましたが、日本の戦後の発展の基礎には何があったのか、もう一度見つめ直す必要があるように思えます。

 

 それに日本側からではなく韓国側からの視点を確認するためにも興味深いです。同じ物事でも立場によって見方が違うということが分かります。