ミャンマーと日本の間で 「僕の帰る場所」(藤元明緒監督) | あなたの知らない韓国 ー歴史、文化、旅ー

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 今回、ミャンマーからの難民を主題にしたドキュメンタリー風の映画をご紹介します。ご存知の通りミャンマーは今年2月に起こった軍事クーデターで大変なことになっています。強圧的な軍部独裁に反対する市民が武力で弾圧され、死者が出ている状況です。

 

 

 

 

 藤元明緒監督「僕の帰る場所」という映画は、東京で暮らす在日ミャンマー人家族をめぐる実話をもとにした映画です。都内に母のケインと住む幼い兄弟。夫は入国管理局に拘留されており、女手一つで子供を育てていました。二人の子供は日本で生まれ育ったので、母国語であるミャンマーの言葉が話せません。母はまだ慣れていない日本語で子供に愛情を注ぎますが、子供たちは父に会えないストレスを溜めていきます。

 

 

 

 

 移民は世界的な問題ですが、ミャンマーでの民主化の流れや、彼らを取り巻く日本社会の状況を描いていきます。実話を元にしたフィクションですが、映画では実際の俳優ではない素人ミャンマー人を多數起用し、フィクションながらまるでドキュメンタリーのような映像が展開します。

 

 今後どうなるかわからない不安と期待、貧しいながら肩寄せ合うミャンマー人親子、入国管理局の冷淡な扱いなど、考えさせる問題が満載で、子供たちがなかなか会えない父親に対する思いは切ないものがあります。

 

 日本もコロナウイルスの流行と、それにとも経済的苦境で日本も大変な状況にあります。現在、難民というと、日本が受け入れる側でありますが、将来的には日本もどうなるか分からない不安感があります。難民に対して考えるべき時が来ているように思います。

 

 また母国語や母語というものについて示唆するものがあります。母国語とは祖国の公用語で、母語とは日常生活を営むうえで基本となる言語です。日本に住む日本人の場合、普通は母国語も母語も日本語です。でもこの映画の幼い兄弟の場合は母国語はビルマ語ですが、ビルマ語はほぼ話せず、日本語が日常語で母語と母国語が乖離しています。その上、日本語や日本文化に馴染んでおり、民族や文化とは何かを考えさせる材料にもなっています。

 

 我々もあまりに知らないことが多いですね。ミャンマーや東南アジアの問題も含めて視野を広げたいと思います。

 

 

              

 

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