祝 アカデミー賞 ポン・ジュノ監督「パラサイトー半地下の家族」 | あなたの知らない韓国 ー歴史、文化、旅ー

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 ポン・ジュノ監督の「パラサイトー半地下の家族」(原題:寄生虫)がアカデミー賞で4冠を飾りました。アカデミー賞で韓国映画がいきなり本賞(作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞)を受賞したのは、アジアの人間として、実におめでたいことです。

 

 半地下の部屋で暮らす貧しいキム一家が、富裕家庭のパク一家に家庭教師、家政婦、運転手などそれぞれ他人を装いながら入りこみ、寄生し、生活の道を開いていこうとします。順長にこのまま過ごせると思ったものの、思わぬ事態の発生で、さらに転落していくという内容です。

 

 監督の演出はもちろん、ソンガンホなど俳優陣の演技も素晴らしい。そしてアカデミー賞受賞はさらに素晴らしいです。

 

 この映画は2回観ました。1回目はテンポの速さ、展開の意外さに驚き圧倒されるばかりでしたが、2回見ることで作品をより理解できたように思います。

 

 映画の中で一番大きな問題は富裕層と貧困層との生活実態や意識の違いだと思いました。

 

 

 

 

 

貧困層の家族と半地下住居

 

 映画の主人公キム一家(父、母、長男、長女)はソウルの片隅の半地下住居に住んでおり、4人とも失職中で、宅配ピザの箱の組み立ての内職が大事な収入源だと言う有り様。

 

 私も良く知りませんでしたが、韓国で半地下式の住居に住んでいる人は多いようですね。映画の中でも、パクの家族より、キムからは嫌な匂いがすると指摘されたりします。半地下の生活環境ならば日当たりも通気も悪いし、独特のカビ臭い匂いがしても不思議ではありません。本来は冷戦時代に防空壕として利用されていた部分を、住居に改装したのがきっかけだということを聞きます。パク一家の家では、トイレの水も流れにくいし、便所こおろぎが徘徊するなかなかな室内の状況です。

 

 その上、2階から漏れる電波をちょい借りしていたWIFIが入らなくなり、カカオに接続できないと嘆く始末。劣悪で貧困な居住環境を絵に描いたような存在ですね。韓国でも若者の就職状況は厳しいことで有名ですが、こういう貧困層はさらに就職も厳しい傾向があるようです。ある意味、主人公一家は韓国の庶民層を代表する存在として描かれているようです。

 

 

 

富裕層の家族と豪邸

 

 一方、富裕層パク一家(父、母、長男)の生活は半地下の生活とは対照的です。有名建築がつくった輝くような豪邸でベンツを複数台所有し、庭はひろびろとしており、住み込みの家政婦に運転手、それに息子のために家庭教師が2名もつくという贅沢さ。酒や嗜好品もないものがないくらいそろっており、主人公のキム一家とは全く違う生活環境です。その上、韓国人の大好きなチャジャン麺をつくるのに、サーロインステーキをぶつ切りにして入れるという夢のような生活。まるでこの世は全く自分の思い通りになるのだと言うような優雅な暮らしをしながら、庶民層をどこかで馬鹿にしています。経済界を財閥が握っていて、庶民は生活苦に喘ぐ社会状況をそのまま反映させているようです。

 

        ○

 

 映画で主人公キム一家は富裕層パク一家に寄生することで生きようとしますが、彼らのもくろみは思わぬ出来事から崩壊することとなります。映画自体が非常にテンポ良く、予想しない展開もあり、上映時間2時間が短く感じられます。

 

 でもこの映画で描かれている現実を韓国だけの構図だと思ってはいけないと思います。日本でも非正規雇用が増え、路上生活者増加など、まともに生活できない層が増えており、他人事ではありません。

 

 なによりもアジアなど関係ないように思われていたアメリカでアカデミー賞を受賞した意義は大きいと思います。アメリカやヨーロッパでも格差問題は深刻化しており、他人事ではなくなっていることも原因のひとつと思われます。この映画と軌を一にするように、アメリカ大統領選挙で民主社会主義者を自称するバーニー・サンダース氏が支持を集めています。反貧困に関する世界的流れを受けているように思えてなりません。

 

 みなさんはどう思われますか。まだご覧になっていない方には是非おすすめしたい骨太の映画です。

 

 

 

 

 

 

 

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