今年の最高作 ユン・ゲサン、ユ・ヘジン共演「マルモイ」 | あなたの知らない韓国 ー歴史、文化、旅ー

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歴史、文化、韓国語、日本語

 

 

 皆さん 映画はお好きでしょうか。お好きな方、映画館で観たい派でしょうか、ビデオやネット配信で観たい派でしょうか。

 

 私は圧倒的に映画館で観る方です。映画館の暗闇に身を沈めて、大きなスクリーンを見つめながら、他の観客と喜怒哀楽を共有する感覚が好きです。

 

 今回もみんなで喜怒哀楽を共有したい映画を紹介します。

 

 

 公開初日にシネマート心斎橋で見た話題の映画「マルモイ」です。これは「タクシー運転手 約束は海を越えて』で見事な脚本を担当したオム・ユナ氏が、はじめて監督と脚本も務めた映画です。

 

 

 素晴らしいの一言。ベテランの俳優陣と見事なストーリー。困難な状況の中で言葉を集めて、伝えようとした人々の熱い熱意と勇気ある行動に感動の涙が止まりません。

 

 時代は日本の植民地時代、1940年代の京城、現在のソウルです。皇民化教育が進められ、日本語が強要、公に朝鮮語を使うと罰せられるそんな時代。大変な状況の下でも「朝鮮語学会」のもとで、朝鮮各地の言葉を集め、標準語を定め、『朝鮮語辞典』をつくり、子孫に伝えようと努力する人々を描いた映画です。

 

 映画化の客の呼び込みなどで生計を立てていたパンス(ユ・ヘジン)は息子の学費の足しにしようとジョンファン(ユン・ゲサン)のカバンを盗みます。ジョンファンの父は中学校の校長を務める親日派でしたが、ジョンファン自身は滅びようとする朝鮮語を守るため、各地の方言を集めて辞書をつくろうとしていたのでした。

 

 一方のパンスは学校に通ったことがなく、字の読み書きもできない。でもカバンを盗んだことによりジョンファンと知り合い、自ら字を学ぶとともに、文字や言語の重要性を知り、辞書づくりに関わっていくのでした。

 

 まさに母国語がこの世から消されようとする時、言葉を伝え、その背後の文化や歴史を伝えようとした人がいた。その熱意だけでも大変なもので、感動に値します。ハンカチが必要な映画です。

 

 でも我々、日本人や韓国語や韓国に関心を持つ者は、感動したというだけで終わらせてはいけません。さらに考えなければならないことがあると思います。この映画で描かれているのは日本の植民地支配の過程で起きたことです。映画でも出てきたように「内鮮一致」などと言い、朝鮮でも天皇の赤子として「皇民化教育」を強制し、日本語を押し付け、彼らの母国語である朝鮮語を抹殺しようとした暗黒の歴史があります。

 

 言うまでもなく言語とは単に単語の羅列ではありません。その地域の文化や歴史を深く反映したものであり、そに言語を抹殺するということは、その民族を抹殺することに他なりません。こんなことは二度とあってはならないのはもちろんです

 

 相互理解の道具として相手の言語や文化を尊重し、自分の母語(私には日本語)もまた見直すことが大事だと思いました。