久しぶりに大阪市内のシネコンに行きました。普段はシネマート心斎橋や十三のシアターセブン、第七芸術劇場などで映画を見ることが多いのですが、先週は久しぶりのTOHOシネマズ梅田へ。お目当てはアカデミー賞受賞の期待が大きいミナリ。韓国からアメリカへ移住した家族たちの生き方を描いたミナリ(미나리)とは韓国で植物のセリという意味です。2020年リー・アイザック・チョン監督。
アメリカはレーガン大統領の時代、1980年代が舞台。韓国からアメリカに移住したジェイコブは、大都会での生活に疲れ、農業での成功を目指し、アーカンソーの高原に家族とともに移住します。そこで待っていたのは、荒れ果てた土地とぼろぼろのトレーラーハウス。妻のモニカは不安を感じますが、しっかり者の長女アンと心臓が弱い弟のデビッドは新しい土地に馴染もうとします。やがて妻のモニカの母もトレーラーハウスの生活に加わり、葛藤がありながらも、家族の一員として賑やかな日々を過ごします。
だがせっかく引いた井戸が干上がり、作物は売れず、未来に黒い雲がかかりははじめた頃、予想もしない思いもかけない事態が発生します。
セリフは8割くらいが韓国語で、2割くらいが英語です。ここにと登場する韓国系俳優たちはみんな芸達者で、コリアン・アメリカンのような風格を漂わせています。いりいろな葛藤を抱えながら、家族として結束していく姿はやはり韓国映画を思わせます。みんな素晴らしいのですが、一番光っているのは、祖母のスンジャを演じている名女優ユン・ヨジョンでしょう。韓国映画でおばあちゃんと言えばこの人が出て来るくらいの存在ですが、ここでも人生の哀感を漂わせる重要な役目をしています。
この映画の題名にもなっているミナリですが、劇中でも川辺に芹を植える場面が出てくるくらい象徴的です。雑草のようにどこでも育つものの、貴重な食料にもなる、彼らがミナリのように挫けず、逞しく生きて行くことの象徴なのでしょう。それにアメリカが舞台ながら、家庭にハンバーガーやステーキ、ピザなどのアメリカ式の食べ物は登場しません。出て来るのはキムチやチゲ、チャプチェやパジョンなど素朴な韓国家庭料理ばかりです。コロナの流行でどこにも行けない日々が続いていますが、無性に韓国料理が食べたくなりました。早く自由に外国に行けるようになってほしいものです。